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他には、そうですね。
水を桶に張れば少しは。
けれど髪を直すにはそれでは不便そうですし…。
[無かった時の事を考えて答える]
ええ、素足の侭では少々。
そういえばラッセル様は素足でいらっしゃいましたか。
…お寒くはあられませんか。
[布越しでも廊下の冷たさは伝わってくる。
少年を見ながら小首を傾げた]
[ギルバートの「ネズミさん」には咀嚼に忙しい口の代わりに片手を挙げて答え、用を終えたナイフを服で拭く。ケースに戻し酒瓶の入ってない方のポケットにねじ込む。やってきたキャロルの相手はクインジーに任せチーズの一部と干し肉を確保して立ち上がった]
腹も満たされたし、ここにゃもう用はねえ。
じゃあな。
[肴の包みと瓶を片手にふらつく足でキッチンを後にし外へ出る]
私も、探しに出て参ります。
[男ばかりが顔を揃えたその場所に一礼をし]
[キッチンを出て、スケッチブックの主を探す]
[けれどそれは検討違いの方向へ]
[リィン]
[鈴の音は、一組の男女へと近付いた]
御二方にお尋ねしたい事があったのですが。
お邪魔でしたでしょうか。
[くれないを横に引き、女は尋ねる]
料理は、ええ、まぁ。
お菓子の類がほとんどだけれど。
ええと……ナットって?
[流石に愛称で人物を直結することは出来ず。名前を反芻して訊ね返す。また自分に対する呼び方が変わっていることにも小首を傾げた]
シャロって呼ばれ方も何か懐かしいな…。
もしかして元々そう呼ばれてたのかしら、私。
そうですか。
[あちこちに行くのはわたしの目的もありましたし、別に構いませんでしたが。
それでも断られたなら、それ以上共に行く理由はありません。]
では、気をつけて。
[そう言って、灯を進む先に向けて翳します。
杖をつき、また歩みを再開しました。]
下を向きながらじゃ纏めにくいものね。
[水を張っての代用には頷きながらそう返して。向かう先は同じと言うネリーの言葉にもう一度頷いた]
そうなるかしら。
作りながら探すことも出来るだろうし。
[数歩進んだ時でしょうか。
響いた鈴の音には、聞き覚えがありました。
振り返れば、思った通りの色彩。]
いいえ。
[かぶりを振って、一歩、元のほうへ戻りました。]
それで、何か?
おおっと、だいぶ回ってきたな。ちっと夜風に当たるか。
[廊下を蛇行して城の外へ繋がる扉を開ける。冷たい夜風と視界一面の緋に渋面になるが足を前に動かした]
寒くなくはないけれど、慣れたかな。
裾長いから、そんなに地面には触れないし。
[軽く足を上げ、首を捻って足裏を見た。
その所為で、乾いた土が残ってはいたが]
探し物、していたの?
[足を戻して二人を見やる。
会話からは目的が何か、読み取り難い]
[片手に灯。逆にはスケッチブック]
[離れかけた二人の両方に、緋を纏う女は問いを投げる]
ラッセル殿を探しているのです。
御見かけなさいませんでしたでしょうか?
ああ、ナサニエルのこと。
薬――いや、酒だっけ。
それ飲んで、少しはよくなったみたいだけれど。
[二者の同意らしきものを得て
向きを変えかけたが、次いだ声に止まる]
んん、だって。
ロッティ、が変わってるっていうから。
懐かしい?
それなら、そのほうがいいのかな。
ラッセルを?
いや……俺は、見ていないが。
[キャロルの問いに返すのは、短い言葉。
実際、これ以外に答えようはないのだが]
……気をつけて、ってのは、むしろそっちに言うべき言葉の気もするがな。
ま、心しておくさ。
[ニーナにはこんな言葉を投げておく。
実際のところ、杖に頼る歩みは危なっかしく見えて仕方ないのだが]
[ラッセルの歩き方に、良く転ばないな、と思ったが口には出ず。探し物を訊ねる様子には]
鏡。
無いとちょっと不便で。
広間や客室には無かったから、どこかに無いか探してたの。
[愛称の謎が解けると、ああ、と声を漏らし]
ナサニエルのことね。
…って、お酒で良くなった?
あんなの酔っ払うだけじゃないの。
逆に具合悪くなってそうな気がするわ…。
私の呼び方はどちらでも良いわよ?
変わってるからと言って嫌いなわけでも無いし。
うん、懐かしくは、あるんだ…。
良く分らないけれど。
[紅紫が僅か瞼に隠れた。しかし直ぐに視線を戻し]
それじゃキッチン行こうか。
ナサニエルが食べるってことは、消化に良いものの方が良いかしらねぇ。
はい。
それでも見つからなければ作り終えてからまた探すということで。
[頷きを返して少年の方に向き直る]
それならばよろしいのですが。
布越しでも冷たさは感じておりましたので。
はい、シャーロット様が鏡をお探しで。
お借りできる部屋も見たのですが、見つかりませんでした。
[最初に探していたのが隣の女性ではないとは知らず]
ナサニエル様。
具合は落ち着かれたのですね。
[フゥと小さく息を吐いた]
ラッセル?
[わたしの中ではその名前は未だ、赤い色や少年の声とは結び付きません。
だから首を傾げましたが、]
広間を出てからは、まだこちらの…ハーヴェイとしか、会っていませんけれど。
[ただそれだけは事実だったので、そう答えました。]
へえ、なかなかじゃねえか。
月が二つありゃ酒も旨くならあ。
花の色はいただけねえがな。どうせなら野性味のある…
[泉の傍に胡坐をかき、瓶の蓋を開けて深い色の液体を呷る。濡れた顎を袖で拭い満足げに細めた目が水面を見て凍りつく。焦茶色が映すのは満月ではなく天啓めいた理解と焦燥]
っざけんな、チクショウ!
[苛立ちに任せ三分の一以上残る瓶を水面に叩き込むが、水面の月を砕くことはない。荒い息を吐き肩を揺らして戻っていく満月を憎憎しげに睨む]
鏡――ああ、ないんだ。
お風呂場とかにも、ない?
[酒に対する評価には大きく頷いて]
うん。あんな変な臭いするのにね。
「命の水」っていうことなのかな。
[内心で首を捻りつつも前を向いて歩み出す]
それでも、キッチンまで歩いてきたみたいではあったから。
多少はよくなった、んじゃないかな。
見ていませんか。
残念ですが、ありがとうございます。
[青年の短い答えにも頭を垂れ]
[す、と女の眼差しは、青年の腕へと向けられた]
あの後に、叱られぬ様処置はなさいましたか。
必要があるならば、水場の近くにある布を裂くとよろしいかと。
いずれ、あかが乾いて黒に変わってしまう前に。
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