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[――帰り道。
すっかりと夜の帳が下り、人の行き交いも疎らな路を歩む。
祭りの日は、この時間も賑わうのだろうとぼんやり思う。
家に帰り着き、消えたランプに火を点す。
今は魔法の灯りも多いが、彼女の使うのは旧式だった]
全く。
脅し文句も、意味ないじゃない。
[一人分作るのって、面倒なんだけど。
呟いてすぐ、作り置きすれば良いかと思い直して支度をする。湯気が立ちのぼり、食欲をそそる匂いが漂った。]
―広場→宿―
カヤ君も目端は利くか。
でもそのレベルじゃ到底無理だろうな。
[思ったより熱の入っている口調に笑いは苦笑へと変わる]
頼むから、本気で実行したりするなよ?
揉め事は御免だからな。
[宿に着いて扉を開く][中は既に喧騒に包まれていた]
[見知った顔、見知らぬ顔]
[食事も好評だからか宿泊客以外も随分といるようだ]
ベッティ、席を確保しておいてくれないか。
ああ、先に食べ始めていていいから。
[言ってベッティの抱えている荷物に手を伸ばす]
[二人分になっても苦労する様子はなく]
[同業者や馴染みの顔に挨拶しながら借りた部屋へと*向かった*]
―市場―
[彼の身長は然程高くない。160cmより少し上といったところだろうか。
何にせよ、目の前の少女を見下ろせることに変わりはないが]
ゴミも勿論だが。
[林檎の芯の飛んで行った辺りに一度眼をやった]
先程露店のほうで盗難があったと聞いてね。
そこできみを見たという話を…って、ちょっと待…!
[話を繋げながら少女に視線を戻し、だが既に駆け出していた彼女に遅れて伸ばした手は当然ながら届かなかった]
…まあ、明日でいいか。
[暗い中ではどうせ追いつけないと息を吐く。
それにしても怪しい反応が気にはなるものの、今更進路を変えることは*なかった*]
― →宿屋 ―
はーい、わかってまーす。
……もっと確実な方法を思いつかないと。
[ぶつぶつと呟きながら宿の扉をくぐる。部屋へ向かう師匠を見送り、食堂に空いている席を確保した後、メニューとにらめっこ]
あっちも美味しそうよねー。
あ、こっち、こっちー。
[師匠の姿が見えれば、大きく手を振って*呼び寄せたろう*]
─宿屋─
[姉の思いは知らず。
やって来た宿屋で、カウンター席にひょい、と陣取る。
その場所は、いつからか定位置となっていた]
や、おっちゃん。
さすがに祭り時期、人が多いねぇ。
あ、今日のお勧めなに?
[軽い口調で主人に声をかけ、食事を頼む。
知った顔がやって来るのを目に止めたなら、やっほー、と軽く言いつつ手を振って]
……とっころで、さぁ、おっちゃん。
ちょっと、聞きたい事があるんだけど……。
祭りに出る予定だった、人形遣いさんのこと、知ってる?
[食事の合間、主人の手隙のタイミングを計って小声で呼びかける。
問われた主人は訝るように顔を顰めつつ、それがどうした? と問い返してきた]
ん、いやあ、ちょっと、ね。
……最近、姿見ない、って噂を聞いたから、『本番』大丈夫なのかなー、って。
[何気ない風を装って言葉を続ける。蒼の瞳はどこか、窺うよに主人を見つめ]
「……いらん事に首突っ込むな。姉さんに、余計な心配かけるもんじゃない」
[しばしの沈黙を経て、主人が吐き出したのはため息混じりの一言。
その言葉に、蒼は一瞬鋭さを増して]
……そーも、いかねぇよ。
もし……『同じ』だってんなら。
今度こそ、黙っちゃいらんない。
[呟きはごくごく小さく。
その様子に、主人は大袈裟なため息を一つ、ついた]
「……泊まってくんなら、後で片付け手伝えよ」
[続いた言葉は、一見するとそれまでのやり取りとは無縁のもの。
それに、得たり、とばかりににやりと笑って]
おっけーおっけー、それは了解。
……あ、そーいえばさー。
今年もやんの? 誰が『春の乙女』に選ばれるかの賭け。
[口調を一転、お気楽なものへと変えて。問いかけるのは、祭り毎に行われる催し物に絡む賭け事の事。
街の若い女性たちの中から一人を選び、祭りの祭事を締めくくってもらう、というものなのだが。
誰が選ばれるのか、を賭けるのは、街では毎度の事となっているとかいないとか]
[食事の後、しばし食堂で時間を潰す。
広場での出来事を目撃された相手にからかわれたりなんだりしながら、ではあるが。
それらが一段落した所で、先に請われた『片付けの手伝い』のために厨房へ]
んで?
やっぱ、なんか聞こえてきてんの?
[指示された通り、皿の片づけをしながらの問いかけ。
主人は忙しく皿を洗いつつ、ああ、と頷いて。
確信はなく、正確な所はわからないものの。
件の人形遣いが行方不明になった事、その消え方がかなり唐突だった事などの話は聞けた]
……そっ、か。
爺様の方でも、なんか掴んでるかなぁ……聞きに行ってみるか、な。
[小さく呟くと、物言いたげな視線が投げられて。
軽く、肩を竦めた]
だーいじょうぶ、危ない事はする気はないって。
でも、さ。やっぱ気になるし、ほっとけるような事でもないんだし。
……できる事があるなら、やりたいし、ね。
[そんだけだよ、と。
笑う様子に、主人は思いっきり、物言いたげな視線を向けていたとかいないとか]
[イカ焼き6本。串団子15本。焼きそば3パック。リンゴ飴3本。焼き鳥10本。豚串10本。大とかげの丸焼き2本。たこ焼き8パック。焼き魚5本。コロッケ30個。ふかしイモ7個。アイスクリーム5本。焼き銀杏12本。かやくご飯5パック。
―――これが、今日の戦利品である]
いいねえ、お祭り。
うまいもんがここまで集まってる日もそうそうねえよな。
[そう言いながら口に咥えてるのは卵こんにゃくはんぺんの刺さったおでんの串]
最近、ビンボーなことも多かったけど、たまにはこういう日もあるもんだな。
[満足げな顔でぶ〜らぶら]
[その後は最後まで片付けを手伝ってから。
いつも借りている小さめの部屋へと引っ込む。
窓の向こうの街はまだまだ賑やかに見えて]
……ったく。
なんか色々、忙しなさそ。
『本番』にまで、出るハメになっちまうしなぁ……。
[大袈裟なため息と共にこんな呟きを落として。
さすがに一日の疲れが出たか、眠るのは早く。
明けて、翌日。
食堂で食事を済ませた後]
……さぁて……どうするかなあ。
[何となく、練習所に行きたくない天邪鬼精神から、ぼーっとしていたり]
[話を聞いた後は宿屋へと戻り]
[その日は何事もなく就寝する]
[予め同僚にも連絡は入れておいたため]
[夜中に叩き起されることは無かった]
─次の日─
[目覚めた後は直ぐに簡素な食事を腹に収め]
[調査を開始すべく表へと出ようとする]
[けれど宿屋の中で聞こえた言葉に足を止めた]
……おい。
その話は本当か?
[話をしていた二人組の旅人と宿屋の主人に声をかける]
[内容は旅人が一人行方不明になったと言うこと]
[旅人二人と宿屋の主人が「気をつけねぇとなぁ」などと話している横で]
[手巻きタバコを咥えていない口元を右手で覆い、考え込むような仕草]
…その旅人が取っていた宿がどこかとか、連れが居るのかとかは分かるか?
[続けられた問いに返ってきたのは否定の言葉]
そうか、なら良い。
邪魔したな。
[彼らにそう言葉を向けると宿屋の扉を押し開けた]
噂が広まってるってことは…。
あのオッサンの耳にも入ってるな。
あっちに聞いた方が早そうだ。
[問題は今どこに居るかと言うこと]
[ひとまず大通りに出て詰所へ向かってみることにした]
─宿屋→大通り─
お。
あそこの露店はまだ行ってなかったな。
どれどれ、どんなもんか……ん?
[新たな食べ物を求めて移動を開始しようと思った矢先、自分のズボンのすそを引っ張られた感触がした。
ぐるりと首を回し、そちらを眺めると、小さい女の子がレナーテのズボンを握ってる姿]
ありゃ?
どうしたんだ、お前?
親御さんは?
[言いながら周りを見渡すが、該当するような人物もおらず、当の子供も、小さく首を振るばかり]
あっちゃー。迷子か。
[困ったように、頭をかいた]
―大通り―
さぁて、と。
[本来ならば練習所に行く時間。
長い髪も垂らしたままに道を歩くエリザベートの表情には、やや厭気が表れていた]
……なんで私に任せるかな。
[代わりを探す。その役目を命じられたのが、本来の担当者ではなく、自分であったこと。それが不満の理由だった。
しかし、文句を言っても始まらない。
溜息を大きく吐き出して、頬に落ちてきた髪を掻き上げた]
[その様子に子供はちょっと悲しそうな顔で見上げたが、すぐにレナーテはかがみこんで、笑いながら子供の頭を撫でると]
よっしゃ。
アタイが一緒に探してやるよ。
なんつったって、アタイは何でも屋だからね。どんな依頼でもそれに見合った報酬しだいで解決さ。
アタイの名前はレナーテ。
アンタは?
『……ベアトリーチェ。
でも、私、お金無い……』
見合った報酬しだいつったろ?
今回は、ベアトリーチェの心からの笑顔ってやつがその見合った報酬ってやつさ。
さ。行こうぜ。
[そう言いながら立ち上がり、レナーテがベアトリーチェの名前を大声で叫びながら、歩き始めた]
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