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[しっかり者の妹をホラントはとても信頼しています]
[だからって好き勝手ふらふらする兄もどうかというものですが]
[離れた場所でアナが家に向かうのを見送った後]
[ホラントは村を魔法のランタンで照らして回るのでした]
[もちろん、*噂話も忘れずに*]
[この狼は、狼の中でも賢い狼。
食べた人が何者なのか、
その記憶の断片を知ることができるのです。
狼は旅人に気づかれないよう、ぺろりと舌を出しました]
次の獲物はどうしよう。
この旅人も美味そうだ。
あの木こりも食べでがありそう。
羊飼いには羊たちがもれなくついて来るな。
[狼はご飯のことを考えて、よだれを垂らしそうになります]
ああ、そうだ。
あのホラントとかいう男にしようか。
いろいろと嗅ぎ回られるのは、厄介だ。
おかしな噂を広められては、たまらない。
/*
よし、出なかったオイラ正解だ。
せっかく続いてるなら回想よりいいからなあ。
オイラはまた夕方に来るさ。
どうせならゼルマさんに怒られてえし。
[森の中を歩いて行くと、目に入ったのはゆれる灯り。]
あら、ホラントさん。
……また、新しいお話ですか?
[灯りはホラントのランタンでした。
勿体ぶりながら語られるお話。
ほんの少し、首を傾げて聞くのです。]
……本当に、どこから聞いてくるのかしら。
狼と、それを探せる占い師……なんて。
もう。
[ホラントが行ってしまうと、小さなため息がもれました。]
……御伽話は、御伽話のままがよいと思いますのに。
[小さく呟くと、少しだけ考える素振りをして。
森の奥へと向かいます。]
[やがてたどり着いたのは、森の中の花畑。
不思議なひかりに包まれたそこには、釣り鐘型の花が咲き、蛍のような光がいくつも舞っています。]
……使う必要なんて、ないといいのですけれど。
[小さく小さく呟いて、薄紫の花を一歩、手折りました。
きら、きら。
光の粉がこぼれて消えます。]
いけない、遅くなってしまうわ。
アナちゃんとの約束もあるし、蛍を見に行きましょ。
[別れ際の約束を思い返すと、小川の方へと向かいます。
そこに牧師様がいらっしゃるなんて、思ってもみませんけれど。**]
いいや、見ていないが。
[メルセデスにたずねられたことに、旅人は首を横に振りました。]
村人なら迷うことはないだろうし、きっとどこか寄り道でもしているのでは。
もしくは・・・おや。
[旅人は続けて何か言いかけたのですが、ちょうどその時足音が聞こえてきました。
そちらのほうを目をこらして見ますと、どうやら探し人が来たらしいのでした。]
うわさをすれば、だ。
[その後すぐに、旅人は小さくくしゃみをしました。
マントの前を合わせながら立ち上がります。]
少し冷えて来たな。
ボクは宿に戻るとするよ。
[旅人はそう言って、小川を*立ち去って行きました。*]
そうですか。
単なる寄り道ならば良いのですが。
[旅人の「もしくは」との言葉に、牧師の眉間に皺が寄ります。
旅人の視線が逸らされると、牧師もそちらを見やりました。
普段と変わらぬドロテアの姿に、牧師はほっと胸をなでおろしました]
ドロテアさん、遅かったですね。
一人で出歩いては危ないですよ。
[宿へと戻る旅人に、牧師は気をつけてと告げます。
しばらく蛍を眺めた後、ドロテアと共に教会へと*戻っていったのでしょう*]
〜 ホラントとアナの家 〜
〔夜が明けて、朝になる。
知らん顔で昇った太陽の光は、地上に目覚めをもたらす。
眠い目をこすって起きたアナのすることは、朝ごはんの支度。ちいさくたって、よく教わっているから、これぐらいはそれこそ当たり前だ。
パンに苺のジャム、ハムとチーズ、それからミルク。
コーヒーを淹れる準備をして、兄を起こしに部屋へ行く。〕
お兄ちゃん、おはよう。
お寝坊さんは闇に目を食べられちゃうよ。
〔しぃん。
中から返事はない。
何度ノックをして、何度声をかけても同じ事。
それも近ごろはよくあることだったから、疲れているんだろうと決めつけたアナは、さっさとごはんを食べて、お手伝いとお勉強のために出かけてしまった。〕
[それは、昨夜のお話。
やって来た小川には、先客がいらっしゃいました。]
あらら?
ルイさんに、牧師様。お二人も、蛍を見に?
[なんて、呑気に尋ねます。
そうして無事を安堵されてようやく、心配をかけた事に気づくのでした。]
あら、あらら。
申し訳ありません、わたくしったら……。
[少し慌てて謝って。
ルイを見送った後、蛍の舞を眺めてから、教会へと戻ったのでした。]
[そうして、次の日。
いつものように、ご飯の支度から始まって、お掃除、お洗濯、と仕事は続きます。]
さて、後はお買い物ね。
[呟きながら手に取る買い物籠の持ち手には、薄紫の花が一輪、挿されていました。]
[翌朝、ドミニクは頭の痛みで目を覚ましました。]
ぐうう、飲みすぎた……。
つまみも酒の話も旨かったもんなあ。
[老人二人のせいにして、億劫そうに起き出します。
二日酔いの頭にゼルマのお小言はたまらないからです。]
[真夜中、おじいさんのベッドに潜った狼は、不思議な遠吠えを聞きました。
それはきっと、彼のお仲間の声でしょう]
ホラントか、それは良い考えじゃ。
最初に人狼の話を始めたのはあいつじゃよ。
何やら感付いておるかもしれぬ。
[しかし、そんなことよりも。
狼の頭の中は、今晩の素敵なご馳走のことでいっぱいなのでした]
――ベリエスのおうち――
ふああ、良く寝たのう。
[おじいさんが目を覚ましたのは、まだ夜が明けて間もない頃のことです。
どこかの木こりさんとは違い、おじいさんは頭も体もしゃっきりとして、ベッドを抜け出すなり朝の体操を始めました]
まだまだ、若いもんには負けられんからのう。
[そんな口癖をつぶやくと、おじいさんはかまどに薪をくべて、朝ごはんのパンを焼く準備を始めました]
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