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[向けられる笑みに、傍目にもそれとわかる、安堵が浮かぶ]
よかった。
倒れた、ってしか聞いてなかったから、心配したんよ。
ん、ゆっくりしてるから、大丈夫だと思う。
[カヤの事を問われ、こう返すものの。
直後に、微かな陰りが浮かぶ]
……でも。
やっぱり、無理にでも止めた方がよかったんかな、あの時。
[そんな余裕なんてなかったのだけれど。
こうなってしまうとやはり、そこは気にかかってしまって、小さな声で呟いた]
― 港の浜辺 ―
おや、まぁ、真珠貝に影響がなければ良いですけれどね。
[無表情で落とされた言葉は、どこか人事のように、砂浜に落ちた。
嵐の後の港の様子は、流石に1日やそこらで片付けれるものでなく、未だ荒々しくうねる波が、砂浜に流木などを打ち寄せている。]
占い師…――
霊能者…――
守護者…――
結社…――
狂人…――
[学者は日課のフィールドワークをこなしながら、
お伽噺に出てくる言葉を、寄せて返す波に乗せるように呟く。
時折海を見つめる碧は、
どこか此処にあらずといったように見えるだろうか。]
――…人狼
[そして最後に呟かれる言葉。動きを止める足。
海を見ていた碧は、島の中心、森へと向けられる。
眼を閉じれば、残像で海の青と森の緑が混じって、
脳裏に瞬く碧の光。
海と森の中間の色を持つ眸を瞼で遮った学者の、
黒い短い髪が、湿った嵐の余波の風を受けて激しく揺れた。
しかしながら、それに頓着した様子なく。
暫くの間、考え込むようにその場に立ちつくして…――。]
[フーゴーが出かけた後も、カレースプーンを片手にラム酒を飲んでいた。
ライヒアルトがリディを残して出て行くのを眺めた後、声が聞こえたような気がして奥の客室の方へと視線を向ける。]
………ふむ。
[女性同士の語らいに割り込む気もないので。
もぐもぐとカレーを食べて、小首を傾げて。とりあえず、リッキーにラム酒のお代わりを頼んだ。]
ん、心配かけた、ごめん。
もう大丈夫だから。
[安堵を浮かべるクロエの肩を軽く叩く。]
……クロエのせいじゃないと思う。
カヤはしたいことしかしないと思うし。
[聞こえた言葉の詳細は解らないけど、いろんなことを気にする性質なのは知ってるから、ぽんぽんと肩を叩いておいた。]
人狼がどうとかって話しのせいもあるかもしれないし。
[不機嫌なコエを聞いたのなら]
[それはそれは愉しそうな表情を浮かべた]
おやおや、人間がお嫌いなのかな?
[或いは彼の親族にあたる人物のみの話か]
そうだよ?
ゴースト、と呼んだのは、最初は正体不明の比喩だったけれど。
[名前については肯定し、由来についても、また]
まぁね。貴族なんて、常にそんなモノだよ。
僕がこんな格好をしているのだって、ねぇ?
身内に殺されないためだしね。
[男の身形を許されるようになった今でもこの侭なのは]
[慣れてしまったからか]
[これまでの事に対する抵抗のつもりなのか]
でも、僕は人間が好きだよ?
[さらり告げる口振りは真剣なものに捉えられるか否か]
僕も彼女…ヘルムートもね。
意識を共有しているのだから、当然ではあるけれど。
[饒舌に語る様子に、僅かばかり首を傾けて]
[ああ、それでもと言葉を続ける]
自分が可愛いのも当然とは思ってるけれどね?
[ささやかな笑み声に、不思議そうな表情を浮かべ]
[その後で、肩を竦めた]
別段バラしたことに後悔はないさ。
君が裏切るかもしれないスリルも生まれたしね?
[愉しい事を望むのだとコエが告げ]
[意外な言葉を聞いたとばかり]
――……。
それならば、ヒースクリフとでも呼ぼうか。
[その名に篭めた意味を語ることは無い]
[片割れの零す結論には、短い同意を示して]
[ぽんぽん、と肩を叩かれ、また、小さく息を吐いた。
ほんの少し下がった眉は、多少なりとも気が緩んだ事を示して]
ん……ウチが気にしちゃうと、カヤも余計に気にしちゃう、かなぁ。
それだと、よくないよね、うん。
[ゲルダに答える、というよりは、自分自身に言い聞かせるように、言葉を紡ぐ]
人狼……かぁ。
そだね。
調子悪い時に、あんな話、いきなり聞かされたら……おかしくもなる、よね。
[アーベルの感想をきいたのなら、きゃっきゃとはしゃぎ]
やぁん、そういうことはきちんと言って。
もぅいっかい。目を見て言ってぇ?
[ハイテンションのまま、おねだりをしつつ。
食事にありつき、小休止]
それにしても、覚悟を決めたとして…何したらいいのかしら?
[とんとん、とひとさしゆびで机をたたく]
うん、きっと気にすると思う。
だから無茶したことだけ叱ってやったらいいんじゃないかな。
[うんうんと頷き。
クロエこそ大丈夫かと言うような視線を向ける。]
嘘だって思いたいのに、なんか皆信じてるし……
おっちゃんも、なんかみょうに真剣だったし……
やだねえ……
[眉をしかめて呟いた。]
─フーゴーの宿屋─
いや…俺は。
…その、すまない。
[自分の事を買い被っている様子のルーミィに、何といえば良いか逡巡するも、調子が狂う、と言われれば申し訳なく思い謝る。
ライが出ていくのを見れば、視線を向けて気をつけろとだけ伝え。
フーゴーが営業時間中に席を外すのは珍しいと思いながら、そのまま見送った。]
ヒースクリフ…――ですか。
[このままゴーストと呼ぶのかと思っていた相手に、
セザーリオが新たな名の提案をすれば、
小説家らしいな、と念話には乗せず思う。]
復讐したい相手でも居られるのでしょうか。
[きちんと把握したわけでないが、
ヒースクリフと呼ばれた相手の事情をその名に思うか。
深く尋ねるでもない言葉を紡ぎ、復讐という言葉に、
膝より降ろした少女の存在を、刹那思い出した。
そして、思い出した刹那の間。
1mmほど、眉が中央に寄るのだった。]
[一服を終え。
部屋の隅に置かれた箱に近付く。
長らく――ここに来てからは一度も――開けられることの無かった箱の、錆び付いた止め金を外し、蓋を開く。
中に入っていたのは――]
……二度と使わねぇと思ってたんだが。
[――黒い鉄の塊]
人狼とやらに通用するかは分からんが。
[両手に掛かる重みは、忘れていた感触を思い起こさせ]
……そう易々と、ヤられてたまるかってんだ。
[懐に忍ばせる刹那、目にはかつてのような暗い光が灯る]
ん、そだね。
そのためにも、早く身体、治してもらわんと。
[頷くゲルダの言葉に、明るめの声を上げる。
大丈夫か、と。問うような視線には、少しだけ、首を傾げた]
ウチは、大丈夫、だよ?
このくらいで、どうにかなるほど、ヤワくないモン。
[笑いながらの言葉は、明らかな虚勢含み。
他者ならまだしも、付き合いの長い相手を誤魔化せるほどではなく]
ん……旦那は特に、そうだね。あんなに真剣なのって、あんまり見ない気がする。
……ホントに……なんかの間違いなら、いいん、だけど。
―宿屋―
だって、なぁ。
[背中に投げられた従妹の声も聞こえてはいたが反応は見せず。
酒場に戻ってくるとウトウトしているらしいツィンを膝に抱いた]
認識しておかないと…。
ああ、ごめん。
[苦い溜息。何かを振り払うように首を振る。
膝も揺れたか、にゃぅとの抗議に小さく笑って謝った]
えっ、あ。
そういうルーミィさんは、可愛い。
[ハイテンションなおねだりにも応えようとはした。
視線がちょっと揺れ気味だったのはご愛嬌だと思ってもらえば]
[リッキーがフーゴーの代わりにカウンターに入るのを見ると、ゲルダに今誰もついていないことに気づく。
それにカヤについているだろうクロエのことも気に係り。]
リッキー、簡単な食事と湯冷ましを用意してもらえるか。
あぁ、食事の皿は二つに分けてもらえるか。
[言外に、クロエとゲルダの食事だということを伝えると、リッキーは承知して食べやすい大きさのサンドイッチをいくつかとその取り皿、湯冷ましの入った水差しの乗ったトレイを渡してくれ。
それを持ったままダーヴィッドの方を向き声をかける。]
すまない。俺は、しばらくここを離れないつもりだ。
あんたは、好きに戻ってくれ。
[それだけ言うと、まずカヤの部屋をノックするが返事はなく。
クロエは寝ているのだろうか、と思うが覗くわけにもいかないのでひとまずゲルダの部屋へと向かい。]
…ゲルダ、起きているか?
[ノックと共に、まだ臥せっていることも考え控えめに声をかけた。]
うんうん、そうだよね。
[明るい声を上げる相手を、それでも心配そうに見やり。
虚勢をはるその頭を軽く叩いておいた。]
倒れたあたしがいうことじゃないけど、倒れてからじゃ遅いんだよ。
きっと何かの間違いだよ。村の人がそんな化け物のはずないし。
[安心させるようににこりと笑む。]
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