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―中央公園入口―
だって事実だよ。
[感情を出すのは苦手だが言うことは言う。
史人のネタも、笑わないのに「面白かった」「イマイチかな」と評してしまうようなところがあった。
先に歩いてしまうのもよくあること。
けれどそうして公園に近づけば、嫌でも異変が見えてくる]
桜…?
[風に乗って届く花弁。そこで足が止まった]
「…………疎マシイカ。」
…………えっ!?
「疎マシイカ? 汝ヲ好奇ノ目デ見ルにんげんガ。」
「妬マシイカ? 汝ヲ縛ル肉体ノ制約ガ。」
そ……れ、は。
「汝ガ望ムノデアレバ、我ハ汝ニ力ヲ与エヨウ。」
「ソノ肉ノ鎖カラ汝ノ身体ヲ解キ放ッテヤロウ。」
俺、は……………ああ、そうだ。もうたくさんだ。
こんな、太陽に焼かれる体はもうたくさんだ。
おい、コエ。お前が悪魔か何かは知らない。
いや…………そうか。お前が桜の怪異の一因か。
だが、そんなことはもうどうだっていい。毒を喰らわば皿まで、だ。
いいぜ、のってやるよ。もう好奇の目は飽き飽きだ。
[そう言うと同時、そのコエはにたりと笑みを浮かべる。
ぞくり、背骨に氷柱を突っ込まれるような感覚が走った。]
「イイダロウ。ココニ契約ハナサレタ。我ハ、汝ニ力ヲ与エヨウ。」
─中央公園─
[吟ずるような言葉を残して消える童女。
は、と零れ落ちるのは、ため息]
……なんだかねぇ……。
[吐き捨てるように呟いて。
それから、視線は童女が消えた辺りを睨む紅の女性へと向く]
……なあ、あんた。
あんたもアレ知ってるって言うか……。
あれに会うのも、こういう状況も。
初めて、ってわけじゃ、ないんだろ?
伽矢くんがそう言うなら…。
[返す言葉にもまだ心配げな様子で千恵の手を引きながらベンチに一緒に向かう]
そういえば百華さんどこだろう?
[ベンチに向かいながら当初の目的の人物の姿を探す]
[問いかけに、向けられるのは鋭さを残した──けれど、どことなく問うような視線。
それに、軽く肩を竦めて]
いや、なんていうか。
桜に近づくなって警告してたり、さっきの様子といい。
事情知ってるとしか思えんし。
……少なくとも、ここにいる中では一番事情、詳しいと思うんだけど。
俺も、仕事で色々調べたのと……あと。
『実体験』で、多少は知ってるが。
詳しい事は、ほとんどわからないんで、ね。
だいじょうぶ?
[伽矢を引っ張っていこうにも、そんな力も背もあるはずなく。
近くをちょろちょろ、瑞穂の手を握りながら心配そうに。
うさぎもちょろっと揺れている。
瑞穂に言われ、はっとして。
百華の姿を探してきょとりと。]
ももおばちゃ、帰っちゃったかなぁ…。
[途中桜が目に止まる。
童女はどこかに消えていた。]
あれ。おうか。いなくなっちゃった。
[残念そうに呟いた。]
[軽く頭を押さえていたが、せったんという呼ばれ方にじろりと目を向け、]
……せったんと呼ぶなと言ってるだろうが。
俺もお前も、もうそんな呼び合いする歳じゃねぇんだし。
…………って壁? んなもん、どこにも……
[首をかしげつつ、そう言って手を伸ばし、]
……なん、だと。ってか、何だよコレ。
[手に感じるのは確かに壁。向こうは見えるのに押してもびくともしない。]
― 少し前 ―
[響く歌に聞き入っていると、僅か、背筋に寒気が走った。
風邪でも引いたのかと、羽織っていた上着の前を閉じた。
そして、私は目を擦った。
こんな季節に桜が。桜の花が咲いている。
そして桜の枝の上には、一人の少女]
危ないじゃない、そんなとこ……!
[ベンチから立ち上がると、少女の傍――桜の傍へ*駆け寄った*]
[ベンチへ辿り着くと、背凭れに体重を預け座り込む。
その状態で一度深呼吸をした]
……始まる、か……。
[小さな呟きは二人に届いただろうか。
母親や童女の話題が聞こえると、背凭れから身体を起こした]
…お袋、仕事のために戻ったかなぁ…。
[碌に周囲を確認していなかったが、そんなことをオレは呟いた]
― →中央広場入口―
さいですか。
[軽く肩を竦めた。
面白いなら笑って頂きたいと常日頃思っているのはさて置き。
やはりその足は広場の前まで来て止まった]
……。
[軽く目は見開かれるが、驚きの言葉はなく。
満開の桜を瞳に映した]
おうか?
[千恵の言葉に疑問の声を返しながら視線を桜の樹の方へ向ける。
童女の姿はもう見えなく代わりに百華の姿が見えた]
あっ、百華さんだ。
[千恵もそれに気づくだろうか]
えー?
だって、せったんはせったんだし。
なんかこー、愛着湧くじゃん?
嫌なら、せっちょんって呼ぶよ?
[言いながら、雪夜が壁を感じられたことには少しため息]
あー。
やっぱ私だけじゃないんだ。
んー。あの、よく私が言ってるような霊能現象の一つみたいなもんじゃないかな?
こんな感じに他の人まで感じられるタイプも珍しいとは思うけど。
[潜めて告げられた単語に、女はやや、驚いたようだったが。
それにはただ、苦笑のみを返す]
……んで?
結局のとこ、どうなんだよ。
[表情を引き締め、問いを重ねたなら。
女は深く、息を吐いて、一つ、頷いた]
「……けれど、始まってしまったからには。
もう、止める事はできない。
貴方も……『見た』というなら、わかるはず。
全ては、力の玉響……『憑魔』と『司』の求める先が定めるもの」
……『憑魔』と『司』……ね。
―中央広場入口―
[はらり。
ひとひら舞い降りてきた花弁に手を伸ばす。
ダメなの、と唇だけが動く]
桜花…って、史兄さん?
[声になったのは叔父へと問いかける部分から]
『憑魔』と『司』。
……珠樹と、龍先輩……。
また、起きるのか?
あんな事が……。
[思いが飛ぶのは、過去。
以前、巻き込まれた『事件』と、それで亡くしたものたち]
はじまる?何がはじまるの?
[伽矢の呟きを拾い、そう返すものの。
瑞穂に言われ百華を見つけ、そっちの方に向かってゆく。]
あ、おばちゃ!
[駆け寄り足元に飛びついて。]
ももおばちゃ、おばちゃもさくら、見にきたの?
[すりっと頬をよせ見上げ。
返事にはそうなんだと返しながら。]
ももおばちゃ、あのね。
おみくじ引いてきたの。おばちゃにも、はい。
[握っていた左手の中にあったおみくじを見せ、それを渡した。]
……何が始まるのかは、良くわかんねぇ。
けどああやって言うってことは、何かが始まるんだと、思う。
[そうでなくばこの状態の説明がつかない。
時季外れの桜。
怪異と言える光景。
答えの全てを聞いたかは判らないが、従妹は母親を見つけてそちらへと駆けて行く。
オレは動く気もしなくて、ただその様子を見遣るだけだった]
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