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私は平気。姿は見られていないわ。
でもあのヒト、谷に落とせなかった。
[食事をした後は、谷に落として野の獣達へ後を任せるのが常だったので、
それが出来なかったという事を伝えれば、何があったかいくらかは知れるだろうか。
出る前に前に高揚していた心は、
期せずして工房に篭る前と同じように、沈んでいた。]
今日はお店、御願いね
仕入れとか買い付けは殆ど終わってるからさ
[しゅる、何時も髪を覆っていた麻布と白いエプロンを解く。
カウンター脇に置き、出かけ際祖母の方を向くと、]
僕に用事がある人には出かけてるって伝えておいて
じゃあ、お願いね
[ぱたぱたと娘は玄関を出ていくと
先ずは昨夜の大きな音を探るために外を飛び出した]
雑貨屋 ゲルダが「時間を進める」を選択しました。
―修道院前―
[地面は昨夜の雨でぬかるんでいる。
吊り橋の方へと目を遣るのは其方に向かおうと思っていたから。
歩き出そうとしたその時、不意に声が掛かった]
――…嗚呼、自衛団の。
如何されました?
私は……、昨日言った件が気になったので
様子を見に行こうかと……
[そんな事を言えば吊り橋が壊れた事を知らされる]
吊り橋が……?
其処まで酷いものだったんですね。
いや、確かに凄い音がしたので心配でしたが……
それなら、復旧には時間が掛かりそうですね。
この時期に、か。困りましたね。
[柳眉を寄せて思案気な様子を見せた]
―昨夜・厩舎―
落ち着け。落ち着けって。
崖は崩れてたけど谷の方に落ちてってたから。
すぐにどうこうはないはずなんだ。
[低く嘶く相方の身体を撫でながら繰り返す。
現場には近づく前に自衛団員に阻止されてしまった。
宿に戻れと怒鳴られて、裏口から入ってタオルを借りた。
風呂は断り、まだ宴会の名残があった酒場でも足を止めず、着替えと毛布一枚掴んで厩舎にやってきたのだった]
大丈夫かなあ。
雑貨屋までちゃんと伝えてくれただろうか。
[不安の通りに忘れられてたと分かるのは翌朝の事。
結局ベッドの上でなく相棒の横で一晩を明かした]
―翌朝・宿屋厩舎―
あっふぁぁ。
雨止んだのか。おはよ、ナーセル。
[身体を揺すられて目を覚まし、腕を伸ばして大欠伸。
もう随分と明るい。ちょっと寝過ごしたようだ]
っくしゅ。
俺も何か食べてくるよ。
[彼の朝支度を終わらせてから、毛布を小脇に食堂へ]
見られてねぇなら問題ないさ。
自衛団が騒ぐかも知れねぇが……
[同胞の返事>>*41に安堵の息を吐きながら
さて、どうすべきか、と思考をめぐらす]
ま、何も知らねぇフリで通すしかねぇか。
[警戒が強くなるだろう事は予想出来たが
食事の邪魔をした者をこれから消しに行く訳にはいかず
慎重に様子を見るべきだという結論に達した]
―宿屋食堂―
おはようベッティちゃん。
おお、ありがと。
[温かいスープはとても嬉しい。
近くのテーブルに座ると早速いただいた]
んー、あったまるな。美味しい。
大丈夫大丈夫。身体が丈夫でないと出来ない稼業だからね。
[さっきくしゃみしたけど]
まさか橋がやられちゃうとはね。
道途中で困ってる人もいそうだ。
─村の入り口付近─
……ったぁ……こりゃまた……。
[通りを進みそちらに近づいたなら、その様子は嫌でも目に入った。
崩れた土砂と、壊れた橋と。
復旧が容易でないのは、はっきりと見て取れる]
これって、かなり厳しくね、状況。
麓とは、連絡取れてんのか……?
[呟きながら、もう少し近くで見よう、と歩みを進めるものの、ある程度進んだ所で、自衛団員に強引に阻まれた]
……って、な、なんだよ。
ん、ああ、危険なのはわかってる、けど……。
[それだけにしては、空気が張り詰めているような、そんな感覚に。
す、と蒼が細められた]
―修道院前―
[自衛団員は厳しい表情で青年に宿に来いと言う]
……は?
宿に怪我人や病人でも居るんですか?
[呼び出される理由など其れくらいしか浮かばない]
それなら準備を……
え、……そうじゃない?
なら、如何して私が宿に?
[準備の為に戻ろうとすれば引き止められた]
嗚呼、でも宿に行くなら持って行きたいものがあるので。
少しだけ待って呉れますか?
[言い置いて青年は一度中に姿を消した]
―宿屋―
客を厩舎にとめたとかなるから、こういうのは今回っきりにしてくれよ?
[言いながらも、ユリアンの気持ちもわからなくはなかったので、その件は軽く言うだけにとどめた。
橋の話になれば]
そうだな、親父も復旧までは帰ってこれそうにないな。
客が増えることもないから、まぁ大丈夫だろうけどな。
[窓の外のほうを見ながら]
復旧、どれくらいかかるんだろうな?
……んー。
[こてり、と首を傾げる。口元には、薄い笑み]
なんか、隠してる?
[問いかけは、他の村人のざわめきに紛れるよな小声で紡がれる]
……いや、別に、疑ってるわけじゃあないけどさぁ……。
こういう状況での隠し事って、隠されてる方にはストレスになるよねぇ?
あんまり、隠しすぎるのもどーかと思うんだよなあ、俺。
[実際に何か隠されているかは知らないが。
何気ない口調で、仮定の話を積み上げる。
話している自衛団員の表情が、僅かに引きつった]
─工房『Horai』昨晩から今朝早くにかけて─
[結局、不安は晴れないまま、朝方近くまでギュンターからの依頼の品
銀の守り刀を作る事に専念していた。
装飾は殆ど必要ないからという注文だったため、
雛形に手を加えることはあまりせず。
ただ夫に意見されたとおり、その柄の根の中央に、丸い瑠璃を一つ埋め込み
蔦のような文様を絡ませた。
工房に入ったっきりだったのは、流石に夫に気づかれただろう。
こちらを伺うような気配に気づけば、
ひと段落着いた頃、作品を台の上に置き、手袋を脱いでそちらへ顔を向けた。]
ゼル。
[小さく名を呼べば、夫は心配そうにこちらの様子を伺いに中へと入ってきて。
誰の人目も無い場所だからこそ、座ったままこちらから、手を回して腰の辺りを抱きしめ、すりと、甘えるように頬をよせた。]
カルメンさんとミハエル君、どうしたの?
[来客らはどうなったのか尋ねれば、空き部屋に二人が泊まったことを知る。]
そう……うん、その方がいいわね。
雨、止みそうになかったから。
[昨晩、篭る前の事を思い出せば、知らず手には力が込められた。]
[殆ど眠らなかった事を、咎められるよりは心配されただろうか。
少しは眠った方がと言われれば、ふるりと首を振った。]
大丈夫、仮眠は少し取ったから。
それよりもう日が昇り始めてるし、朝の支度しないと……。
[そう言ったものの、今度は夫が譲らなかっただろう。
子の為といわれれば、反論は出来ずに
大人しく一度寝室へと連れられて、少しの間だけでも横になり眠る事にした。]
─自宅・自室─
[作業を終えると後回しにしていた事も細々と終わらせて。
現在机の上にはライヒアルトから貰ったクッキーと、カルメンから貰ったカエルのパペットが乗っていた]
………これは仕舞っておこう。
[手に取ったのはパペット。
一度手に嵌めてカエルの口を動かしてから、机の引き出しの中へと仕舞った。
鍵もしっかりとかけておく。
次いで紙包みの中のクッキーを一つ取り出し、一口齧ってみる。
口に広がる甘さに思わず顔が綻んだ]
ライヒアルトが作ったのかな。
美味しい。
[背伸びをしていても、味覚はやはり子供のもの。
甘い物は好物の一つだった]
[いくつかクッキーを口に運んで、紅茶が飲みたいなと思い執事を呼びつけようとした時。
先んじるように扉をノックする音が響いた]
何だ。
[入室の許可を出すと、執事が姿を現す]
……自衛団が?
僕に何用か。
[用件を聞けば、先程自衛団員がやって来てミハエルに宿屋まで来るように、との言伝を受けた、と。
その言葉に訝しげな表情が浮かぶ]
何故宿屋へ行かねばならないのかは聞いていないのか?
……そうか、仕方が無いな。
[理由は教えてもらえず、足早に立ち去られたと聞いて短く息を吐いた。
机の上に置いてあったクッキーの紙包みを卓上の小瓶へと仕舞い。
身なりを整えて執事と共に自室を出る]
ついて来ずとも良いぞ。
一人で行く。
[伴おうとした執事を制し、一人自宅を出て行った]
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