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そうか。
宜しく、べス。
[考え込んだ後に続く名前。後で表札でも確認しておこうかと思いながら、油をひいて。]
嗚呼、お皿は其処に。
[テーブルを示す。]
─書斎前─
さて……。
ここにいても、仕方ねぇ、か。
[しばし、どうしたものかと考えていたものの、結局、達した結論はそれで。
取りあえず、広間に行くか、と思い、歩き出す]
─…→広間へ─
――屋敷内 広間への扉――
[どこをどう歩いたのか記憶はなくとも、不思議なものであれほど時間をかけて歩いてきた道程を、一気に駆け戻った。
金色の髪、人形のように愛らしい顔、だけどもそれは生首で、振り払おうとしても頭の中をぐるぐる回る。
色を失った顔に、震える手。
走り続けて、息のきれる声を整えようともせずに。
拳を叩きつけるようにして開いた広間の扉の向こう、先刻見た物が見間違いであることを望んで、ユリアンは一人の少女を探す。
ソファで横になっていた可愛い少女。
プレートで見た名前は確か――]
べ、ベアトリーチェ…
ベアトリーチェだ!
ベアトリーチェとかいう、女の子は!?
[少女の姿は広間には無く、彼女の持ってきた人形の手駕籠が置き忘れられたまま。
中には老人や銀の髪の少女、青い髪の男や髭の男、
バンダナの少年も入っている。]
─広間─
[ふらりとやって来た広間、そこで耳に飛び込んできた声に、僅か、眉を寄せる]
……見たのか。
[小さく呟いて、中へと入り]
……どーした、ユリアン?
[かける声は、やや、厳しさを帯びて]
有難う。
[べスと名乗った少女が食器を割らなかったことに安堵する。案外しっかりした子なのかもしれない。]
ん。今はハンバーグを作ってるんだ。
好きかな?
[見上げる瞳に微笑む。]
[歌い終えてぼんやりと天井を仰ぐ]
[金色の模様が、光の加減で昨日『視た』少女の首の面影に重なって、ぞくり]
…あ…れ?
[ころりと転がった首。その瞳の色は、確か翠…!?]
[ユリアンはそれに気が付くと青褪めて、少女の手遊びに相応しい、置き去りにされた人形の手駕籠に駆け寄った。
背後からアーベルの声。動揺に揺れる目で振り向く]
あ、アーベルさん……俺見たんだ!
裏庭に!
壁……穴の開いた、壁の向こう…っ
居たろ、この屋敷に?
ベアトリーチェっていう、まだ小さな女の子だ。
ほんの、ほんの小さな女の子…
ああ…か、可哀想に……あの、あの子が首だけになって…
[本当は思い出したくも無い。
それなのに目の前に浮かぶ生首に声を詰まらせ、激しく首を振る]
首だけになって転がってた…こっちを見た……ああ!
……ベアトリーチェが?
まさか?!
[咄嗟に否定する]
不吉な事を言わないで下さい!
彼女は…っ
[即座に広間を振り返る。その姿を探して]
良かった。
[少女に言われれば笑顔を向ける。
皿に野菜を盛って、焼けたハンバーグを載せ。]
ええと、広間に運ぶのを手伝って貰ってもいいかな?
まだ熱いから気をつけて。
……ああ……やっぱり、それか。
[一つ、息を吐く]
俺も、それは見た。
……一昨日の夜に、な。
[言いつつ、動揺する肩に手を置いて]
落ち着け。
少なくとも、あそこで死んでいたのは、俺たちがここで会った子じゃない。
俺はその首を見た、次の夜に、あの子と話した。
少なくとも……別人……のはずだ。
[それはまるで、自分自身に言い聞かせるかのように]
[駆け込んだ広間で、ユリアンの悲鳴が聞こえる]
そんな…そんな…。
夢だと思いたかったのに。あの恐ろしい様は。
[ふらり、壁にもたれかかる]
[アーベルの声は聞こえるけれど、気休めと受け取って、首を大きく横に振る]
別人?そんなばかな。
あたしが見たのは確かにあの子の顔だった。ベアトリーチェの金髪と翠の瞳!
[どうしたんですかと尋ねる声がして、怪訝そうな顔でこちらを見るミハエルの顔を見た]
…ミハエル!
[今の自分はどんな顔をしているかとか、普段ならばあまり良い態度を取ろうともしないその少年に見せるにはあまりに醜態だとか、そういったことを気にする余裕が今は無い]
気をつけろ、気をつけろよお前も…っ
おかしいんだ!きっとここは、やっぱり変な所なんだよ。
ああ…神様の下さった幸福な時間だなんて、そんな甘い話があるはずなかった。俺なんかがそんなものに与れるものか!
誰かが、誰かは知らないがどうせどこかの酔狂な金持ちが…
俺らをここに集めて最後に良い時間を味あわせた後で、生首にして楽しむ気なのさ!
エルザ!
[慌ててその傍らへと駆け寄った。
昨日のこともその一瞬だけは忘れて]
[アーベルの言葉とエルザの台詞に目を見開く]
どういうことですか、それは?
何が起こっているんですか?
[エルザを支えようと手を差し出しながら、アーベルへと疑問を投げかけた]
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