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[窓から見えるのは、春の日差しに照らされて咲き誇る、大きな桜の木。
その姿に目を細めつつ、吸殻の残りを手の上で焼き消す。
ひらりと花びらのように、舞い落ちる燃え残りの灰。
焔の力は、人並み程度に抑えられて安定。
身支度を整えて、階下へ降りる。]
[千花は定位置で、カウンター席のアマンダとは反対を向いていた。
その視線の先にあるのは、桜の樹。
やがて、結実するであろうサクランボを思っているのかもしれない]
「チッ?」
[階段を降りる足音に気付いたのか、千花は小さな声で鳴いて、円らな目でそちらを見上げた]
─Kirschbaum喫茶室─
…あぁ、おはよう。
[降りてきて、アマンダの姿を見つけ、やや気まずそうに挨拶を。]
腕のほうは、大丈夫か?
[手首を握ったときの違和感をふと思い出し、声をかける。]
―西通り・Kirschbaum近辺―
[何故か結局毎日足を運んでいる喫茶店は、商店部分とは別に、二階と三階を有しており、上階部分には窓が並んでいる。この店を宿屋として利用しては居ないが、ここへ宿を取らなくて良かったと思う。他の宿泊客がアレすぎる。]
[この店の周りには桜の、春の香りが風に満ちている。
窓を見上げた。]
[その中に一筋、嗅ぎ慣れ無い香りが漂う]
−朝/中央部・教会−
[祈りを捧げる少女は、ステンドグラス越しの陽光に照らされる。
その姿を見る者には、恰も神の像の如く儼然として、或いは天の露のように儚くも映った事だろうか。
少女は人としての生の煌めきを有している筈なのに、それは何処か空虚だった]
[ベアトリーチェ曰く「挨拶」を終えて立ち上がると、振り向いたそこには黒猫の姿。彼女に言われた事を思い出して、少女はそちらへと近付き声を掛ける]
クレメンスは居るだろうか。渡したいものがあるんだ。
[案内をするのならば彼に直接、使い魔に受け取らせようとすれば黒の猫に、少女が首に提げていた指環を渡すのだろう。次のような言葉と共に]
その指環は、とても力の強いものなのだそうだ。
クレメンスのしようとしていることの手助けになるかもしれないと。
――そう、フィロメーラは云っていたよ。
[少女は微笑って、自らが彼女に付けた、仮初めの名前を紡ぐ事だろう]
[アマンダと別れて町中の街灯に油を足し終え、警備兵に言われた事を思い出して遺跡へと足を向けて歩き出した。]
…桜。
[ふわりと、風が桜の花びらを運んできたのが目に留まった。]
/中/
指環に関しては元は天聖界に在った指環辺りの設定しかないから、適当に扱って貰って構わないよ。彫られているのは古代文字とも違うようで、読めない事にでも。進めるうちに決めていけばいいかなと。
[こどもは常にいきあたりばったりです。]
ずっと持っていても、『鍵の書』を入手したら返却する事にしても、好きなように。
ただ、協力を決意した証として、渡しておきたかったんだ。
[吹き千切られた桜の花弁だろうか。
白い欠片が、風に舞う。]
[舞い落ちてきたものが頭へ乗る前に手を伸ばし、そっと掴む。桜の花と思ったものは手の中で雪片のように崩れた。
手を開いて見るとそこに在ったのは花弁でも雪片でも無く灰。そこから滲む、火焔の力の残滓。砕けた灰は直ぐに風へ吹かれて消えたが、ミハエルの掌には不快感に近い違和感が残った。]
[千花の声に振り向けば、待ち人の姿。
アマンダは、彼の声に含まれる気まずそうな響きも気にせず笑う]
やあ、おはよう。待たせたね。
…ああ、大丈夫だよ?
[上機嫌で袖口から包帯の覗く手を振り、曖昧に首を傾げた。
そんなことより、アマンダには、とても大切な用事がある]
ほら、直ったよ。
気に入らなければ、この子の御代は返す。
私の所に、還しておくれ?
[飴色の布を解けば中央で、青い稲妻と加え蘇った玉が煌いた]
[アマンダの手の中の、玉に目を見張る。
失礼、と手にとって…光にかざせば真紅の中に煌く金と、それを貫いて輝く青い稲妻。
暫く言葉を失って、それを見つめていただろうか。]
…きれいだ。
[素直に唇からこぼれる呟き。]
-遺跡-
[前に来たときよりも、たくさん人がいる気がした。
自警団長のギュンターが、忙しそうにうろうろして指示をしているのが見える。
彼女は無言で油瓶を持ったまま、街灯に油を足す。]
…かぎのしょ。
[遺跡に眠ると噂されているモノ、言葉に出していってみた。]
[素直な賞賛の言葉に、嬉しそうに笑う]
…よかった。
紅と青で、迷ったけど。
・・・
君なら、こちらだと思ったんだ
[青い稲妻に見えるだろう鋼玉。紅玉の対の、青。
意味を知る者ならば、高温の焔にも逆鱗にも見えるだろうか]
―西通り―
[もう一度、頭上を見上げた。
特に何か大きな乱れを感じる訳ではない。きっと、朝になる頃には自力で此処へ戻ったのだろうと判断し、その場をあとにする事にした。近寄りたくない、と思わせるのは炎の気配。そもそも親和出来るものでは無いのだからと己に言い聞かせる。]
[何人かの自警団員が、通りを駆け抜けていった。彼らの会話では、どうやら遺跡へ向かうようだ。
何か事件でも起こったものだろうか。
興味を惹かれて、彼ら自警団員の後から遺跡へ向かった。平和を求めて来た訳ではないのに、此処へ来てからあまりにそれが過ぎたと思う。]
[その言葉に、ぴき。と固まって。
…炎のくせに凍り付いたかも知れず。]
…え、えぇと…その…御内密に……。
[明らかに動揺しまくり。]
[一攫千金を夢見た冒険者達は、実に生き生きとしていて見ていて飽きない。
墓場の方が好みではあるが、命を感じる事は確かであった。]
…でも一番好きなのは、戦場。
あそこほど生きる事を望む事はない。
生きる事を望むことは、私が望まれているようで、とても気持ちが良い…
戦場を望むなんて、たくさんの人の死を望む事に他ならないから、いけないことではあるけれど。
[遺跡で街灯に油を足し終わり、帰ろうとした所でギュンターに呼び止められた。]
「お疲れさん、お茶でもどうぞ」
[素直に受け取り、入り口近くにあった大きめの石に腰掛けて飲み始めた。
暖かい。
人の行き来を見ていたが、ふと喧騒と暖かい風の中、一瞬つめたい風を感じてそちらを向いた。]
[アマンダはダーヴィッドの動揺なんて、気にしない。
どうして内密にしないといけないのかもわからない]
どうして? きれいなのに。
…触ってみたい、な?
[眠りの刻が多いアマンダでも、竜の逆鱗に触ったら怒られるくらいは知っている。
だからダメで元々と、笑って軽く口にしただけ。
脅迫してるつもりなんて、欠片もない]
―回想・広場―
[夜半にかけられた言葉など、半ば虚無と化した彼に届く事はなく。
ただ、刻まれる時の旋律を貪る事に、その夜は費やされた]
―遺跡―
[遺跡の入り口へ着くと、自警団員がせわしなく動き回っていた。
視線に振り返る。]
何か?…嗚呼、お前はたしかKirschbaumへ居た。
や、ダメっ!それだけは絶対ダメっ!!
[胸元押さえて数歩あとずさる。]
…触られたら、何をしでかすか判らん。
[制御が利かなくなれば、この街一帯を火の海にするくらいしてしまいそうな気もする。]
[やってきた金髪の少年に声をかけられ、こくりと頷いた。]
…急に、寒く。
[彼がこちらに近寄るにつれ感じた感想を、素直に口から零した。]
[それでも時を告げる鐘の音が響く前には、虚無は意識を取り戻し。
気だるさを引きずりつつも体を起こす。
乱れた髪が絡み付くのをややうるさそうにおいやりつつ。
嘆息]
だから、疲れるんだと……。
[次いで吐き出された言葉に、白梟が呆れたような目を向けた]
…。
[目を見開いて、イレーネを見た。
人として暮らしていたつもりが、ここ数日の平和な生活に気でも緩んだろうか。指先を口元へあてた。]
春とはいえ、まだ冷えることもあるだろう。
嗚呼、違うのか…お前は。
さて……これ以上、ここでくたばってはいられんな……。
宿に、戻るか……。
[立ち上がりながら、呟く。
足元がややおぼつかないものの、歩いた方が消耗は少ないとわかっていたから。
一歩ずつ、確かめるような足取りで宿へとむかう]
[アマンダは大げさに叫ぶダーヴィッドに、茶色の目を丸くする。
断られるだろうとは思っていたけれど、これ程までとは思わない]
そっか、うん。仕方ないな。
だけど。
昼間から、大胆だね?
[アマンダは見解が少し(かなり)ずれてるなんて気にしない。
グラスを干して立ち上がり、包帯の手を振って笑う]
玉の修理代は、この御代でいいよ。
連れてきてくれて、嬉しかったから。
では、ね。
[返る言葉を待つことなく、扉をくぐる。
ドアベルが店主の笑い声のように*響いた*]
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