人狼物語 ─幻夢─

72 天より落つる月の囁き


研究生 エーリッヒ

―どこぞの次男坊の残念な回想―

[時折、玉の輿に乗った兄の友人が、子供とともに里帰りに来ていた。
本物の貴族の血を引いた者にあうのは、それが初めてだった。
いろんな人が仕事したのがよくわかる服に、洗練された造作。ああ、生まれながらに人の上に立つ者にはそれなりの理由があるのかと、子供ながらに"彼"を初めて見た時から悟った。
 これが誤りなのは、大学に入ってから否応に知ることになるのだが、それは別の話である。

 遠目から眺めることもあれば、遊びにいかないか、と他の村の子と誘いに行くこともあった。どれでも、つかず離れずの距離で、それでも自然と目は追ってしまっている。

(243) 2012/01/14(Sat) 23:00:34

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