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どうしたの?
何かあった?
[視線がキリルに向いていることに気付いて、そう尋ねる。
何を見たのか、と、不思議そうに。
それから、彼女の言葉に、笑って頷いた。]
それならちょうど良かったのね。
レイスに聞いた?
[いたずらっぽく笑ってキリルに問いかける]
そうしないと、ただ、いなくなっただけになってしまう。
一緒にいるのじゃなくて、ただ消えてしまう。
…そんな気がするから。
大好きだから、失くすくらいならボクは食べるよ。
[揺らぐ、揺らぐ。
これが人狼の本性なのか人としての情なのか。
既に旅人の命奪った人狼に、その区別はひどく分かち難い]
ううん。ボクは違うよ。
ちょっと…、その…。躓いただけ。
[歯切れ悪く返して首を振る。
マクシームに向けても重ねて、同じく首を振って返した]
[キリルへと向かう視線は、微笑ましいというよう。
表情に出ているのは、きっと誰からも明らかで]
キリルは素直ね。可愛らしいわ。
うん。
わかった、そういうことにしてあげる。
[大丈夫わかってるのよ、みたいな視線。
でもそれについてからかいの言葉は投げない。
差し出された枝を見て、微笑む]
ありがとう。
大切に飾らせてもらうわ。きっとあの人も喜ぶでしょう。
[夫も好きだったのは、レイスは知っていよう。
嬉しそうに、大切に枝を受け取った]
…一寸。
[イライダの問いに、少しだけ眉を顰めて肩を竦める。
それから、イライダとレイスの話しは知らないから、
彼女たち2人の会話を、いつもの顔で見上げる。
マクシームが抑えて居た丸太の手を離してしまい、
ゴロゴロと転がるのを見て]
…ぁ、
[声をあげた]
[転がる丸太を追いかけるマクシームの背が、
やけに、ふんわりしているように見えて、一度目を瞑る。
聞こえる囁きは、ひどく揺れて感じられたから、
逆に、冷静さを増す――烏色に光は無い]
…そう。
――じゃあ、本当は、一緒に居たいんだ。
[失くすくらいなら、なら、失くしたくない。
そう聞こえたから、囁き落とす声は低くなる。
言葉はまるで、自身の内の本能が理性に語りかけるにも似て]
―― 昨夜・広場 ――
[人も少なくなりお開きかと腰を上げた頃合に
イライダがやってくるのがみえた。
篝火をぼんやり眺めていれば
マクシームが妹を連れて帰ると言う。
火の始末を請け負って帰る者を見送った。
片付けが済んだ広場。
火の番をするかのように夜が更け空が白むまで其処にいた。
夜が明ける前に篝火の台はそのままに土を掛けて
一旦火の始末をすれば一人で住まうには少し広い家に帰ってゆく]
―― 朝・自宅 ――
[寝台に腰掛けた男が片手にすっぽり納まるほどの水晶を眺める。
長い指先が手遊ぶ其れに澄んだ光が注がれ煌いている]
――…ただの噂だ。
[マクシームに同意するように呟く。
もう一人の幼馴染は如何思っているだろう。
男の意識は、其方へと移ろいゆく]
二日酔いじゃないなら良いけど。
でも、そうしたら足元気をつけなくちゃね。
怪我をしたら、治るまで大変よ。
[キリルの答えには、苦笑がちにそう言って。
ロランの様子には心配そうな視線を向けなおした。]
レイスに二日酔いに効くお薬をもらいに行くところ?
あんまり飲みすぎちゃだめ……あ。
[ごろごろ丸太が転がるのにこちらも思わず声をあげた]
あっ!
あああ…もー。
マクシーム兄さん、大丈夫?ボクも手伝うよ。
え?力?だいじょーぶだって、ほら…!
[ごろごろと丸太が転がったのに、思わず駆け寄る。
端っこを押さえて声を掛けた。二人で直せば、早いだろう]
[キリルの様子は初々しくてかわいらしいもの。
赤くなってゆくのは、小さく笑って]
キリルはすごく可愛らしいわ。
もっと自信、お持ちなさい。
[にこにこと笑い。
そして転げていった丸太に駆け寄る姿に、良い子ね、なんて思わず呟いた]
ね、キリルは可愛いわよね。
[自分は丸太には駆け寄らず。その場でロランに問いかけて]
ボクは頑丈だから、大丈夫。
ほら…、ね?
[次は、さっきよりもまともに言えた。
丸太組むのを手伝って、幾分得意げにイライダを見返す。
そうして、視線流すは車椅子の幼馴染へ]
ん 二日酔い位大丈夫。
昼には無くなってる、筈。
[イライダの心配そうな視線には、思わず、目を逸らす。
いつもの事だから、不愉快な訳では無いと伝わるだろう。
ただ、心配げに見られる事に、居心地の悪さを感じるだけ。
キィ、と高い音を立てて車椅子を押そうと手に力を籠めたけれど、
いつものように自分より先にキリルが手伝いに駆け寄る。
その背を見て、車椅子の背凭れに体重をかけなおす]
…え。
[投げられた問いに、思わず顔をイライダへと向け]
…なに、
[烏色は深く、深く闇そのものように暗い。
光失った深淵のような双眸を、ボクは見返す。
喉がこくりと鳴った。あの赤い月のように思えた]
一緒にいたいよ。ずっと。
[丸太組立を手伝いながらの言葉に、小さく笑って]
うん。でも、心配かけるからね。
怪我はしないように気をつけること。
[誰に、とは言わなかったけれど、はっきりとそう言う。
ロランが目をそらすのは小さく笑って。
答えを聞けば、苦笑めいた色が混じった]
素直じゃない答えね。
可愛いって言っちゃえば良いのに。
――…ロランくんも可愛らしいわよ
[笑顔を向けた。子供扱いなことは否めない]
はあい…。
[幾分間延びした返事を大人しく返す。
反論出来ない。出来るはずがない。
完敗の様相で丸太を手にしていたら、マクシーム兄さんに笑われた。
もう!と睨んだら、更に笑われてしまった。
えいやと丸太を組み上げる]
これでいいんじゃないかな。
マクシーム兄さんもお疲れさま。少し休も?
[幸いにロランの声はここまで届いていない。
だからボクは、への字口を披露せずに済んだみたいだった]
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