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─ 露天風呂 ─
[パシャパシャと、乳白色が広がる湯船でいくつかの飛沫を飛ばす]
小さい頃は母さん達と一緒に来たよなー。
………あっ、さっき一緒に入ろうって連行すれば良かった。
[ふと思いついたことを口にして、ち、と短く舌打ちした。
尤も、撫でるのですら避けようとするのだから、連行はもっと難しいのだろうが]
……あれ?
さっきより色濃くなってる…?
[湯面に浮かぶそれなりの大きさの山の上。
拭っても取れなかった黄色は先程よりも色味を濃くしていて。
円形を示す形がはっきりとしてきたように思う]
なーんだろ、これ。
……花っぽい?
[ただの円形ではなく、花弁のような形をしているようにも見え、ゆるく首を傾げた。
ただ、肌色に黄色が浮かび上がっているため、注視しないと分かり難いかも知れないが]
/*
ううむ、姉弟で共鳴だったりするんかしらコレ。
待宵草って黄色だったよな。
メリルの方は蒲公英かもしらんけど。
エトとユーリは何だろう…何でも有り得そうな気配。
……花の印……?
[手首のそれを見て取って、浮かんだ思考はそのまま声として、響く。
とはいえ、その事に意識を回す余裕は、失われていた]
― 洞窟奥地・苔の広場 ―
転寝かよ…余計性質悪ィなお前。
[やれやれ、と言わんばかりに息を吐いて]
成程、お前も仕事は仕事だったんだな。
…何だよ、鎮めなきゃならん事でもあったん?
[に、と楽しげに笑むのは大体理由の予測がついているから。
彼の姉がわざわざ大声を張り上げるのは以前耳にした事もある]
…二人して妙なところで頑丈だから性質悪ィんだよなあ。
つか、一体何冊抱えてんだよ。終わんのどれくらいになりそ?
[首を傾げつ、ついでに仕事状況を確認して]
[けれど、視線を落とし、目を見開き、固まるまでを認めれば
一体何事だとこちらも瞬いてその場所へと視線を落とす]
…なんだぁ?珍しいな、お前が色を乗せてるとか。
─ 露天風呂 ─
ま、いっか。
[考えても分からなかったため、深く気にせず放っておくことにした。
もうしばらく湯に浸かり、のんびりした後に湯船から上がり身体に付いた水滴を布で拭く。
新しい着替えを籠から取り出し身に纏い、以前着ていた物を籠に詰めると、さっぱりした様子で温泉から出て行った。
以前と同じく肩と胸元を晒した服。
左胸には細長い花弁がいくつも連なったものが半円を描いていた]
母、は。
……ちょっと前、亡くなったよ。
[薬師によくお世話になっていた母親が亡くなったのは、コレットが引退した少し後の事]
身体、強くないのに、無理しちゃって。
天使だから地上におりた代償に
光を奪われてしまったのかもなぁ。
[突っ込みが入らぬままあれば
トーンの違う独り言じみた声が響く。
口伝を繋ぐ役目をもつテレーズに抱く感情は憧れに近い。
理想の具現とも思える少し年下のいとこ。
一人きりの店内でゆると首を振る。]
考える前の感じたまま。
それをそのまま表現するのも悪くないと思うよ。
ま、クレイグの紡ぐもののを知ってるからさぁ
生(き)のままに興味があるってのもあるんだけど。
[得だろ、と笑いながら答えを向けて
『本屋』の心が綻ぶ事を淡く期待する。]
─ 白花亭 ─
[食事を済ませ、父と祖父母は片付けと次の仕込みの為に厨房へと入る。
自分はといえば、食事中に話していた通り食材数の確認]
ん〜…やっぱりちょっと心もとないわね〜。
[蜥蜴肉が少ないのは、今は繁殖期で仕入れた量自体少ない為に仕方ない。
が、他にもサラダに欠かせない緑色の独特な歯応えの茸などの在庫が寂しいことになっていて]
…うん、次の仕入れ待ってられないわ〜。
買いたいものもあるし、今からちょっと行ってくるわね〜?
[厨房に声をかけ、店の外へと出ていった]
─ →都市の通り ─
――…あ、と。
[戸棚の整理をしていた道具屋は不意に声をあげた。
棚から滑り落ちた布に手を延ばす。
床に落ちるすんでのところで指が届いた。
掬いあげて、漸く安堵の息を漏らす。]
折角の織りが台無しになる所だった。
[汚れがないか確かめて元の場所に戻した。]
─ 都市の通り ─
まずは〜…どこから行こうかしら〜。
[ぎ、と空の台車を引いて歩きながらほんわりと考える。
腕にかけた籠も、今はまだ中身は無く]
茸はまず美人髪は絶対として〜、あと{6}種類位は欲しいわよね〜。
お肉も仕入れられそうなら仕入れておきたいし〜。
あ、あとランプの明かりと〜、インクも買わないとだったわ〜。
…まずはエっくんの所から、かしら〜。
[行く先が決まると、そちらへと向かい歩き始めた]
─ →道具屋 ─
[奥へと向かう道すがら。
独り言めいた言葉には、やっぱり突っ込みをどうするか悩んでいた。
語り部と筆記者、共に後の世に伝えるを務めとするもの同士としての敬意が先に立つ上に、生来の残念気質の青年には、手放しの賞賛は大げさじゃ、と思うことも少なくはない。
近い血を引くものを慈しむ気持ち自体は、理解できるけれど]
……生のまま、なぁ……。
[抱えているものは、言ってしまえば、単純なことだけれど。
示すに踏み切るには、この時にはまだ要素が足りなくて。
そこを考えている内にまどろみに囚われる事となっていた。*]
― 自宅 ―
[真新しい写本のページを捲る。
内容は古い時代の香草茶のレシピで、今でも一般的に飲まれているものもあれば、何らかの理由で廃れてしまったか見覚えのないレシピもあった。
苦味や渋味が強い香草をどうにか利用するべく、苦心したような内容もあり、つい口の端が緩む。
必要な部分には栞を挟んだりもしたが、このまま読み込めば何時間でも経ってしまいそうだった]
先に、頼まれた仕事を済ませましょうか。
[試作品作りも始めれば没頭してしまいそうだから、ひとまずは終わりの目途が立つ配達の方をと。
立ち上がり、緩くなりかけた髪紐を縛り直す。
常は背中側に垂らす髪先を、左肩から前へ流れるようアレンジして]
[ゆっくり丁寧なミケルの拭き掃除が終わるころ、コレットの右手は包帯できっちりと巻かれていたが]
……ごめん、あんまり、上手くいかなかった。
[本人的にはあまり納得のいかない出来だったらしい。
几帳面さはちょっと前に亡くなった母親とよく似る部分でもあった]
今日はこんくらいにしとくか。
[数多い品を見やすく見栄えするように陳列し
満足気に額の汗を拭う仕草をする。
実際の所、汗なんてかいてないわけだが
格好だけ、というのは時折あること。]
…………ん。
[捲った袖を元に戻そうと肩に手を掛ければ
細い左腕、肩の付け根に薄っすら咲く徴。]
なんだ、これ。
─ 道具屋 ─
こんにちは〜。
エっくん、今いいかしら〜?
いつものを買いにきたんだけど、ある〜?
[店の中を伺い、呼びかけて。
店主が居るのを見てから、中に入る。
首を傾げて問う顔には、少しバツの悪そうな笑顔。
レシピを書く為に必要な明かり用の光苔とインク購入頻度を知られている彼には、自分がクレイグやメリル達の事を言えないような睡眠サイクルだとばれているだろう]
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