[朱に染まる、闇の中、か細い遠吠えが響く]
美味しい…、
とても、美味しい、よ……
[誘う声も、泣くように]
[やがて、エルナも、共に朱の花を味わったろう。彼女はやはり獣の姿のままだったか。花の痣のある左腕は残らず、そして心臓と内臓も余さずに…残ったのはほぼ、右半身だけのような骸]
…これは、ここに置いていきましょう。今夜はきっと、皆、神経が昂っている…動かせばそれだけ見られる危険が増します。
[もしかすると、少年がギュンタ=を尋ねた所を見られたかもしれないけれど、それは懸念の内には入れずに、エルナには、そう告げた。
涙の跡を頬に残しながら、その声は冷静で…少年の中で、確かに何かが変わりつつあるのを示しているようだった]