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(そう)
[今さっきの瞬間で、エリスが誰かを殺したとも思えない。
そして、今までに、誰かが殺されたのか、という話は一つしか聞いていない。
すなわち。
―――もう一人の人狼が、あそこで死んでいるのだということだろう。
それに気づいたシャロンが、誰にも気づかれないように、小さく冷笑した]
(使えない・・・駒だったわね)
やぁ、いらっしゃい♪
ただ、次からは、もうちょっと優しいノックをしてくれると嬉しいかもだよー?
にゃははははは。
[唇に乾いた血の跡、腕の中にはぐったりとしたリディア]
…誤解しないでね?
まったくね。
賢しいほどに。
…人間みたい、か。
実はそうなのかもしれないわね。
[思い出す]
[喋っているように見えたあの時]
[扉が開くか開かないかのうちに中に滑り込む。
外から判っていた気配は2つ。
ノブと、そして何故かリディア。
車輪のついた奇妙な椅子に座るノブ。
抱きかかえられるようにして、彼の膝の上で目を閉じるリディア。
暢気に喋るノブに向けて、グルル、と警戒の唸り声を発した。]
ノブに…リディア?
これ…どういう…。
[目の前に広がる光景に目を丸くし。しばしの逡巡の後に部屋の中へと足を踏み入れる。2人に近付き、ノブの腕の中でぐったりしているリディアに声をかける]
…リディア?
ねぇ、リディア大丈夫?
何か心当たりでもあるのかしら、エリス?
あるなら、早めに確かめた方がいいかもね。
足元を掬われる前に。
殺しておいてまで、本当にただの犬、なんて話になったら、笑い話でもすまないしね?
─浴室─
[軽く湯を浴びて、絡みつくような汗の感触を拭い去る。
華奢な左の肩には、歪に引き裂かれたような痕が浮かび、そこだけ異様な様相を織り成すだろうか]
……落ち着かない……。
[ぽつり、呟く。
身体はさっぱりとしたものの、何か、引っかかるような心地がして。
でも、それが何か、確かめるのは怖いような気がしていた]
確かめる手段があればね。
必要以上に賢しいのよ。
[肩を竦め]
あの犬、多分喋れるはずよ。
貴女はそれを確認できて?
可能ならば頼みたいわ。
[唇の端を上げる]
[ディーノの声に]
[目を瞬かせて]
リディちゃんが、どうかしたの?
そこはノブの部屋でしょ。
[ノブの声は]
[部屋の外にまで届いた]
……え?
……なんなんだろ……さっきの目眩と、関係あるの……かな?
[呟いて、用意してきた着替えに身を包む。
髪は濡れたままだけど、仕方ないか、と呟いて、浴室から出て]
……? なに?
[廊下に出て、ふと感じたのは、どこか張り詰めたような空気]
死ん、で…。
ううん、殺したって、何でそんなこと…!
[顔が驚愕の表情に歪む。しゃがんだ状態、ノブを見上げる形で問い詰めるように]
……今……なんて?
[微かに聞こえたのは、誰の声か。
そして何を言っているのか。
その意味を、確かめたいような、確かめたくないような。
そんな思いに揺れながら、ゆっくりと、そちらへ足を向ける]
……ぅ……。
[微かにまた、目眩を感じるものの、それは押さえ込んで]
〔宿のベッドは清潔で気持ちよかった。そのおかげか、目が覚めたのは外が暑くなり始める手前だった〕
〔宿屋の主人に鍵を返す〕
ありがとよ。
…はは、心配いらねぇよ。俺みたいなおっさん襲ってもしょうがねえだろうから。
じゃ、また夕飯食いにくるから残しておいてくれよな。
〔広場を通り、雑貨屋の前を通る。大繁盛で忙しそうにしているフランの姿に安心する〕
〔俺も俺のなすべきことをしよう、そう思い、自分の工房に向かった〕
へえ。
喋る犬の登場ってわけ。
いよいよもって、御伽噺じみてきたわね。
―――犬が喋るかどうかを確かめることが出来るのかなんて、優秀な人狼様に言われるなんて・・・なんて楽しい笑い話かしら。うふふ。
答えは、単純に聞けばいいんじゃないかしら?
その犬が喋るのを確かに聞いたのだと。
それを、パトラッシュに聞くか、よくそばにいるディーノに聞くかはまかせるわ。
きっと、貴方達人狼の方が、どちらがゆらぎ、情報を引き出せそうか分かっているでしょうからね。うふふ。
リディアが人狼…?
理由としては、正当かも知れないけど、その証拠は…?
[眉間に皺を寄せ、ノブを見つめる]
彼女が人狼だって証拠は、どこに?
……え?
[目眩を堪えつつ、たどり着いた部屋の前。
そこから聞こえてきた言葉。
それは、困惑を呼び起こすに十分なもので]
リディア……が?
[掠れた呟きが、零れ落ちる]
[ノブが、リディアを、殺した。
ああそうだ、実に簡単明白な事実だ。
問題は。どちらが敵で、どちらが味方か?
ニンマリ顔のノブの視線を真正面から受け止め。
唸り声は止めず。]
別に?
できないならできないでいいわよ。
期待して悪かったわ。
[薄く笑う]
揺らいでいるのはディーノでしょうね。
慣れない力も使っているみたいだし。
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