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〔ディーノのことはパトラッシュに任せ、一階に降りた。カルロスと目が合い、もう心配いらないことを告げる。フランがシャロンに話しかけている声を聞き、そっちへ向かう〕
フラン、俺が運ぼう。
…どうやら、彼女にも時間と休息が必要らしい。
うふふ・・・うふ・・・
大好き・・・大好きよ・・・クローディア・・・
[うわ言は、一番最初に戻る。
言葉は何も聞こえなくて。
それでも、誰かに引っ張られると、まるで赤子のようについていった]
うふ・・・そうね・・・そうよ・・・嫌いよ・・・うふふ・・・
[ランディの声に頷いて]
2階の逆の端の部屋が空いてるって。
[マスターに聞いた空き部屋を]
[ランディに教えて]
一緒に行くよ。
シャロンも女性なんだしさ。
[声は届いていないようだが]
[促せば大人しく動くシャロンに]
[溜息をつきながら答えた]
[ランディの言葉に頷く。
シャロンの方も任せておいて大丈夫だろう。
さて、次にやるべきことは──
そう思ったところで自警団が駆け込んできた。
レッグに労いの言葉をかけると、
自警団について2階へと上がっていった。]
「……デ……ィ………ディ、起きて……」
[深い深い闇の中。自分を呼ぶ声が頭に響く]
…ディ…?
どこに居るの?
僕はここだよ?
[闇が広がるその空間を、手で探るように進んでいく]
「ディ、君は一人じゃないよ。
僕はいつでも傍に居る」
どこなのディ?
見えないよ、僕には何も見えないよ!
「僕はもう目では見えない…。
でもね、見えなくても君の傍に居るんだ。
大丈夫。一人なんかじゃない」
見えなくても、傍に?
「そう、すぐ傍に。
それを忘れないで──」
[その言葉を最後に、頭に響く声は消えた。瞬間、目の前の暗闇に光が差し込み眩しいくらいに辺りを包み──]
[ふるりと瞼が振るえ、閉じられていた瞳が開く。
ここは?
ぼんやりとした意識で今の自分の状況を理解しようと、ゆっくりと首を巡らす。
何故僕はここに? 何故ベッドに寝ている?
確か皆で話をしていて、シャロンが2階から転がってきて、それから──]
…っ! ぅ、あ…!
[僅かに声を漏らして頭を押さえる。記憶を辿り、あの光景を思い出してしまったらしい]
ああ、すまんな。
どうも俺はそういう配慮が足らないようだ。
〔フランの言葉に恐縮しつつ、空き部屋へとシャロンを導き、そっとベッドに座らせる。そして、フランに顔を向けた〕
じゃ、すまんが、後のことは頼む。
〔そう言って、部屋から出て行った〕
[静かに、誰も気づかないまま。
シャロンの目に狂気の光が燈り始める。
論理はどこにもなく。
ただ、どこまでも憎悪。
何が正しいのか。
何が悪いのか。
そんな判断はシャロンの頭からは消えていた]
[聞こえてきた『声』に]
[艶然と微笑んだ]
そう、彼女を殺させた。
人間達に復讐すればいいのよ…。
[歌うように誘うように]
[優しく囁いて]
[部屋の外で行き交う足音を聞きながら窓の外の月をぼんやり眺めていると、背後で呻き声がした。
はっと振り向くとディーノが頭を押さえているのが目に入った。]
ディーノ? 起きたのか?
[声をかけ、ベッドの横に駆け寄る。]
うん、まかせて。
[ランディに頷いて]
[とりあえず彼女の元の部屋へ]
[隣の部屋の前にいた自警団の男達が話をさせろと言うが]
今は無理。
質問に答えられるような状態じゃないの。
考えてもみてよ。
身内のような人が亡くなったのよ?
しかもその姿を…。
[声を途切れさせる]
[浮かびかけた情景]
[首を振ってそれを振り払い]
[また瞳の焦点が合わなくなり、錯乱しかけた時]
…パトラッシュ…。
[かけられた声により意識はそちらへと向かう]
僕……倒れたんだね…。
[さっきまでの出来事は鮮明では無いにしろ記憶には残っていて。過去の記憶が甦っていたことも漠然と理解していた]
っ、とにかく!
落ち着いてからにしてあげて。
そもそも声に反応しないわよ、まだ。
[息を吐いてそう言うと]
[シャロンの荷物らしきものを抱え]
[新しい部屋に戻った]
うふふ・・・うふふ・・・うふふ・・・
クローディア・・・クローディア・・・クローディ・・・
[いつ終わることの無いと思われたうわ言は突然中断した。
ベッドに座り込み、1秒ほども立つと、いきなり倒れこんだのだ。
―――ややして聞こえてくるのは規則正しい寝息。
2日以上寝ずに看病した疲れがやっとシャロンを襲った。
笑みを浮かべたまま、シャロンは眠る。
悪夢から、悪夢へ。そして、醒めない悪夢へ]
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