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[すでに、捜査は終わっているのか、部屋の中は閑散としていた。
一日前と変わったことといえば、
シーツが新しくなったことと、
クローディアがここにはもういないのだということだけ]
・・・。
[フラフラと、部屋の中に入り込むと、机の上に宝石が散らばっているのが見えた。
それは、自分が持ってきた宝石。
それから、クローディアが大きな力を持っているのだと話してくれた大きなトパーズ。
それらが、まるで血にくすんで、鈍い光を放つように鎮座していた]
・・・こんなものさえ見つからなければ・・・貴女は・・・。
[フラリと。
まるで導かれるように、主のいなくなった宝石を手に]
[その途端、先ほどまで沈静化していた頭痛が、さらに激しくシャロンを襲った]
・・・これ・・・は・・・!
[意識の全てが開放される感覚。
何かが、シャロンの中で目覚めた]
・・・分かる・・・うん・・・分かるよ・・・クローディア。
これが・・・占いの力なのね・・・!
うふふ・・・うふ・・・
ありがとう、クローディア・・・。
貴女の力―――確かに私が受け継ぎました!
[ギュッと、力強く大きなトパーズを握り締める。
絶対に、手放さないように、強く]
[アンジュにせがまれ占いを披露して。やはり先日のように集まる人が多かった。しかし先日とは違い、皆切羽詰ったような雰囲気を感じる。崖崩れの復旧がなかなか進まないせいなのか。それともクローディアの話が広まったせいなのか]
ああ、もうこんな時間。
暗くなってきたしお開きにしよう。
[集まってた人達に告げて店じまいする。アンジュも最後まで残っていたが、迎えに来た母親と共に帰って行く。その姿を少し懐かしそうに、羨ましそうに眺め。荷物を持って宿屋へと歩みを進めた]
─宿屋・2階─
……っ!
[不意に、訪れる目覚め。
見ていた夢は、鋭いものに切り裂かれるように、途絶え。
文字通り跳ね起きたベッドの上で、荒く、息を吐く]
……ゆめ……?
[呆然と呟くその様子に、黒猫が不安げな声を上げた]
[宿屋に足を踏み入れると静かなもので。ああ、他の人が居ないのか、と一人ごちる]
マスター、パンとサラダとスープ、お願いね。
[カウンターの席に座り、主人に注文する。昨日の今日、愛飲しているワインや肉料理を食べる気はしなかった]
それにしても……また、あの、夢……。
ずっと、見なかったのに……どして……?
[額に滲んだ汗を拭いつつ独りごちる]
……うわ……汗だらけ……お湯、使わせてもらった方が、いいかな……。
[治療道具を持ち込んだ時、泊まる可能性も考えて着替えも持ち込んでいたのは、良かったのか悪かったのか。
そんな、どうでもいいような事を考えつつ、ふらつく足取りで、下へと下りて行く。
その後ろをついて行く黒猫は、どこか心配そうに少女を見つめていた]
業務連絡です。
バファリン発生により、時間進行をどうしようか考案中です。
村立ての日記へのコメントか、メモにて反応をお願いします。
[階下に下りれば、どこかがらんとした1階に、主人と、食事をするディーノの姿があり]
こんばんは……。
マスター、お湯、使わせて……。
[お湯使わせてくれる? と、問おうとした矢先に。
昨日も感じた目眩が襲って]
……あ……あれ?
[惚けた声を上げつつ、その場に座り込む]
[もぐ、とサラダを口に入れたところで声が聞こえ。飲み込んでからそちらを振り向く]
あ、エリカこんば……って、大丈夫!?
[様子がおかしく、座り込んでしまうエリカを見て慌てて立ち上がり、傍に駆け寄る]
あ……うん、大丈夫、平気。
今まで寝てて、十分休んだつもりなんだけど……まだ、疲れてるのかなあ?
[駆け寄って来たディーノに、いつもと変わらぬ風を装ってこう返す。
黒猫は物言いたげに、じっとその様子を見つめているが]
何だか顔色悪いよ?
あまり無理に動かない方が…。
[立てる?と手を差し伸べて。相手が立てそうならば支えながら近くの椅子へと座らせようと]
[顔色が悪い、と言われれば、不思議そうに瞬いて]
そう……かな?
[夢見のせいかなあ、とぽつり、呟き。
ありがと、と言いつつ差し伸べられた手を借りて立ち上がり、椅子に落ち着いた]
[エリカが椅子に座るのを確認すると、主人に頼んで水をもらい、エリカへと渡す]
うん、何かいつもよりね。
…昨日の事件のせい…?
[あれは見ていて気持ちの良いものではない。自分もそうだった。フラッシュバックを起こして、倒れて。そのせいかと思い、遠慮がちにではあるが訊ねてみた]
[受け取った水を一口、含んで。その冷たさに、ほっと息を吐く]
……昨日の……。
[それから、問われた言葉に、ふと目を伏せて]
そう……かも、知れない。
あの様子を見て……何か、思い出しかけてるのは、確かだから。
思い出しかけて…。
あれを見て、思い出しかけてるってことは…もしかして、エリカも過去に似たような経験を?
[そう言えば彼女はこの村で保護されたと言っていたか。彼女から自分と似た境遇を感じつつあった]
[一つ頷き、水をもう一口飲んで]
ボク、小さい頃に、この村の入り口に倒れてたんだって。
酷い怪我して……息があったのは、奇跡だった、って御師様は言ってた。
[小さく呟き、視線を左肩に]
それで、その怪我は……何かの、爪で裂かれたみたいだったって……。
今でも……痕、残ってる。
何があったのかは、全然覚えてないんだけど。
恐らく……。
[続く言葉は濁されたものの。その言わんとするところは、概ね伝わるだろうか。
過去に、人狼に襲われた経験があるのかも知れない……と]
爪で裂かれたような、痕……。
[それを想像、いや思い出して上体が僅かに揺れる。左手を側頭部当てて、意識だけは失わないように]
そ、っか…。
思い出しかけてるのは、それなのかもしれないね…。
思い出さない方が、良いのかもしれないけど…。
[自分は忘れられなかった。そのせいで今苦しんでいる。彼女もそれを味わってしまうのか。自然、眉間に皺が寄った]
再び業務連絡。
狼サイドから48時間進行希望が出ましたので、本日は48時間、明日以降24時間進行のままで行くことします。
お騒がせ致しました。
……どっちがいいのかは……わかんない。
でも……。
[向き合わなきゃいけないのかもしれない、と。小さく呟いて。
それから、ディーノの表情に気づいてあ、と短く声をあげ]
あ……ごめんなさい……。
[辛い事を思い出せてしまったかも、と気がついて早口に誤り。
それから、ふと思い出して、ポーチを開ける。
中に入っているのは、ハーブと蜂蜜で作った飴玉。気を鎮めたい時に口にする物。それをいくつか差し出して]
えと、これ、どうぞ。
イライラしてる時とか、落ち着きますから。
あ、ありがと…。
[差し出された飴玉を受け取り礼を言って。その礼もどこかまだぎこちなく]
ごめん、そっちも大変なのに気を使わせて…。
[瞳を伏せて自分も近くの椅子に座り込む。側頭部に当てていた左手を額に回し、貰った飴玉を一つ口に運ぶ]
……美味しい。
[その甘さが口に心地よい。若干表情は和らいだだろうか]
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