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〔小指へと紅を移して面なき坊主に与えしは、
円き眼と弧描く口、女にどこか似た笑みの貌。
次には巾着の内から取り出しは小さき瓶、
中身を法師の頭より振りかければ酒精漂う。
朱唇が緩く動きて零れし言の葉は感謝を紡ぐ。
坊は顔を貰ひ受け酒を飲めば機嫌も好かろうか。〕
〔辺りを取り囲みし川を流れるならば、
回り廻れどゆくもかへるも出来るまじ。
しかして姿は清流の内に消え失せて、
後に残されしはせせらぎばかりなり。
これもまた神隠しにでも遭うたがゆえか、
それとも天命を全うして彼岸へ向いしか。
何方にしても真を知る者は居らざりけり。〕
[戻りし琥珀に会釈を返し、常よりゆるりと箸を繰る]
さあて、何処におるやらおらぬやら―
[やはり誰ともなしに呟き返し、髪を払いて粥を啜る]
こわいとおもうかは心次第。
悪しを想像するならこわかろう、
好きを想像するならこわくはなかろう。
何をおもうているかは知らぬけれども、
後に悔やまぬ選択をと願おうか。
[粥を一口二口食うて、かりりと音立て漬物齧る。
呟き返れば琥珀を上げて、象牙の髪が払われるを見やり。]
何処へもゆくもかえるも出来ぬ。
なればいずれは戻ろうか。
…されどいつまでこの地にて、我を留めるつもりやら。
[吐息を零し、撫子色に清水寄せ、]
…そなたはどうじゃ、雅詠殿。
ゆくかかえるか、はたまた何かを望まれるや?
[こくり白き喉を清水が通りゆく。]
俺は―
[箸を下ろして思案顔、果たして己が望みしは―]
―俺は、ゆくもかえるもどうでもよい。ただ―ひとつ、確かめたい事がある。
[ゆくもかえるもどちらでも、二度と会えはしないだろう、ならばここにいるうちに―]
―烏の兄さんにな。
自警団員 ガウェインは、雑貨屋 フラン を投票先に選びました。
[思案する様子を見つつ、三日月に欠けた漬物口に放る。
返る言の葉噛み砕くよに、かりりと音を立てようか。]
確かめる…烏殿に?
[その名を聞けば、琥珀は驚いたよに見開かれ、]
――何を、
…否、よい。
我が…聞くべきではなかろうて……すまぬ。
[問い詰めかけるを飲み込んで、琥珀逸らして小さな謝罪。]
皆の前で、たやすく聞けるであれば訊いておろう。
…ほんに我は気がきかぬ。
天狗も何を思いて我を留めるのやら…
[吐息零して、一人ごつ]
[唇濡らして湯飲み置き、躊躇いがちに眼差し向けて、]
…そなたこそ、謝らずともよいのじゃ。
我が先に問うたのじゃから。
[ふるり頭を横に振る。]
そのようなこと申されるな。
そなたが気にかけるであらば、つまらなくなど――
[眼に浮かぶ光を見れば、言の葉途切れ口噤む。]
[席を立つその背を見送って、何言うでなく湯飲みを傾ける。
やがて膳を下げられれば、立ち上がりて縁側へ。]
…そなたもこなたも、迷い惑っておるのじゃろか。
なあ天狗よ、何を考え我らを呼んだ…?
[梁に背預け座り込み、*青空見上げ呟いた*]
[ぼんやりと思い更ける合間、現れた白の舞手に蜜色をかすかにゆらす。
伸ばされた手には貸すかな戸惑いも見せたけれど、かといってその手を払い除けるわけでもなく、ただその指先が髪を調える様子をまるで猫のように機嫌良さげにされるにまかせよう]
[礼を音にしようとした唇はわずかに揺れるのみ。
音にはならずただ幽かに空気を揺らし、そして行く背を見送るのみ]
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