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んー。
大丈夫だよ、リュウ。
[麦茶ばかりで腹が膨れそうになった頃、止めて。
きゅぅん、と小さく鳴く仔犬を抱き上げると、
給湯室を後にして、廊下を歩んでいく]
………腹が減っては戦は出来ぬー、だよな。
[冗談めかした独り言。
静寂の中に、虚しく響いた。
食事を求めているのか、
人の気配を捜しているのかは定かでなく。
ただ、食堂の前に辿り着くと、また、吐息を零した]
えへ。
……何となく、で気付かない事にして、ゴメ…
(謝る位ならしなければいいのに…。)
直ぐに悟っても、どうかなぁとかちょっと思ったんだ。中が。
……ダメだったらゴメン…(だから謝る位なら
そうー。
[にこっと笑って]
バトン、多分部屋に忘れてきちゃって。
とってきたら、桜のところにいこうかなーって。
誰がやったのかって聞きに。
………………………強制する気はない。
だが、このままだと、全員が「何だか判らないもの」が隣にいるのかもしれない、と怯え続けなければならないのは事実だな。
[淡々と言う]
変わったこと、ですか?
特に何もありませんね。
[サラリと答えれば、そのままサヤカに近付いて]
ねえ、キリュウせんぱい。
先輩には欲しいものがありますか?
[覗き込むようにその顔を見る]
[淡々と告げられる言葉に、また、一つ息を吐いて]
……そうなりますよね。
それに……それだと、俺はただ、逃げるだけになる。
[現実からも、コトネの事からも、と。
その呟きは心の奥深くに零れるのみ]
ただ……俺自身も、ちゃんと『理解』が追いついてないところもあるんです。
そも、自分がなんでこんな事知ってるのか……とか。
それが、わからない訳ですし……。
[それでも構いませんか、と。
確かめるような声は、微かに震えを帯びていたか]
ん…そっか……。
事態が動いてないのは良いことなのかしらね?
欲しい、もの……?
[唐突な問いに、幾度かの瞬きを繰り返し。]
とりあえず今は、ここから出る為の力が欲しいかな?
……貴女は?
バトン?
[それを何かに使うのだろうか。そう思ったけれど、]
桜に、誰が。
[幹を殴り付けていた少女の姿を思い出す。]
……誰かが。殺した。
…それを、聞きに?
[少女の姿をしたモノのうたを。]
出るためのちから。
うん、ほしいですね。
わたしもちからがほしいです。
――だから、せんぱいの、ください?
[ニッコリと笑って手を伸ばす]
………………………逃げるのも、一つの選択だ。
だが…俺自身、いつまで無事でいられるのか判らない状況だからな。
どんなことでも、聞いておきたい、というのが本音だ。
[マコトに告げる声にも表情にも、相変わらず動揺の色は無かった]
ふーん、剣道か。
[凄いな、と。
相手の言葉に、適当にも取れる返事を返して。
直後ヒサタカの問いと、マコトの返事に緩く瞬くと、
近くの机に、座るような形で凭れ掛った。
会話に口を出すこと無く、ぼんやりと会話を聞きながら
マコトの『理解』している物言いを統合して、漸く。
先ほど感じた感覚の正体を理解する。]
あー…。
[小さく、一人納得するように声を上げた。]
うん、バトンですよ。
[にこっと笑う。疑問には答えずに]
そうです。
ゆめってはかないものじゃないですか
だったら、はかなくなれば、ゆめになるかもしれませんし。
[それは普段の様子であるのに、
どこか壊れてはいて]
ううん、ただ……ゆるせないだけですね
だって、ぜんぶ壊したんですよ
[せんぱいは?と尋ねる]
私の、力……?
[にっこり微笑むその表情は、なぜか遠いモノに思えて。伸ばされた手を避けるように彼女は立ち上がる、ヨウコを見据えたままで。]
それは……どういう、意味?
『…何の話、だろ』
[桜の少女の語る話を耳にしてはおらず、
フユの端的な説明しか聞いていないショウには、
(先程のマイコの話もまたそうではあったが)
中で交わされている話の内容は理解し難い。
今まで、漠然としかわかっていなかったのだ。
それがゆえに、考えるのを避けていたとも言えるが。
なんとなく扉を開くのが躊躇われて、
耳をそばだてたまま、息を殺す。]
[揺らいだ様子のないヒサタカの様子に、ふと、末姉の評価が頭の片隅を掠め、笑みが零れた]
……七恵姉さんが言ってたけど……ほんと、落ち着いてる人……ですね。
[その言葉は、どこか冗談めいて。
それでも、一度目を閉じ、開いた時には、瞳も表情も真剣なもの]
皆の……ケンや……他の人たちの命を奪ったのは……確かに、人であって人でない、もの、です。
……でも、その根源は……人の、感情。
何かをなしたい、何かを手にしたい……そんな思いが、高じて生じる……『憑魔』と、呼ばれるものたち。
だって、このままじゃ出ることもできないんです。
司が邪魔をするから。
それにわたしは音色にちかづきたいから。
そのためにも力がひつようなんです。
おなかがすいたら力もでないでしょう?
だから、ほしいの、あまいの。
[どこか幼い口調となって]
そこに、あるの!
[その手を心臓に向けて伸ばす]
[少女が何を言っているのかは多分半分も理解できていない。
ただ、]
…そっか。
そうだったね。
[瞳の奥で、何かが動いた。]
……あのさ、
[少女の問いには答えず。]
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