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……知ってたら、なんで、なんて言うかよ。
[コエは相変わらず、憮然としたように]
気にするな、って、ここまで言っといて……。
[無理言うな、と、言うより早くコエは途絶え。
感じた銀の気配に、こちらもコトバを途切れさせていた]
[グリスを一瞥するようにして。][銀の意識は静かに。][表を見つめる。]
[ブリジットから窓は遠いが。][そこからは、満ちに近い銀色の月が見えた。]
[煌々と光る月に、心は静かに。][だが確実に高ぶる。]
[起きたらしいナターリエにも挨拶をした。数刻後、彼女が仲間に加わるだろうとは思ってもいまい。]
・・・どうかな。
[マテウスの対応は多分正しいと少女は思ったとか。]
[ポトフを前にいろいろと言っている様子の若者二人に笑いかけ]
お二人とも、人参やグリンピースに好かれているのかしら?
[そう言って]
[手を付けようとした途端に
鼻を刺激したその匂いに硬直する]
……この、匂いは………
[皿の中の妙に筋張った物体、は]
………天敵、ですわ。
[神に仕える身として不適切な言葉が思わず零れた]
おいおい、出掛ける気か?
[防寒着に着替えるエーリッヒを見咎めて、男は声をかけた]
もう日が落ちてる。狼どもも出て来る頃だ、あぶねえぞ。
[しょんぼりしているクレメンスが少し気の毒になったのが]
厚意だけは受け取っておくさ
[とはいっても自分がするのは変わりなく、皿にポトフを盛って、席に戻る]
……どうして、って言われても。
[説明しようとすると、できないもので。
ブリジットの素朴な疑問にどう答えるか、悩んでいると、頭に手が置かれた。
離れるハインリヒの言葉に、小さく息を吐いて]
……別に、いいよ。
もう……気にしても、仕方ないし。
……って、ガキじゃねぇんだから。
[ニンジン相手に真剣になっている時点で、十分子供と言えるが]
[マテウスの言葉にはふるふると首を振り。][頷き届いた返事には、じぃと見上げていたが。]
そうですか…それなら薬は必要ないでしょうけど。
慣れても痛いなら、慢性化しているだろうから。
…無理はしないで下さいね。
[何度言っただろうか。][誰かへ向けたのと同じ台詞を口にした。]
[肩を落としていて気付くのに遅れる]
[ハインリヒの声にエーリッヒを見た]
今からは危ないですし、それに明かりもほとんどないじゃないですよ?
一人は危険です。
や、ちょっと落し物がさ?
[出かけようとしたところを、探偵に止められて。]
どーも、昨夜ごたごたしてるうちに無くしたっぽいんだ。
…大事なもんだから。
……はい?
シスター、今……。
[気のせいでなければ、余りにも似つかわしくない言葉が聞こえたような。
ふと見れば、皿ではつつかれるセロリ]
…………ぁー。
[把握した]
[だがしかし天敵というわけのわからない言葉を耳に入れ]
シスター?
[不思議そうに彼女を見た]
[マテウスがどく]
…ひどいですねぇ。
そうそう危険なことにはしませんのに。
朝のコーンスープだって作ったんですよ?
[言いながら自分の皿にポトフをよそい]
[机に置いた]
[口を噤んだまま(見えないが)明るい意識は身振り手振りで(見えないが)]
[『旦那が居ない時にでも教えてあげますヨー』と訴えたが。][伝わったかどうかは定かではない。]
っとと、旦那。今日はやけに大人しいけど。何かするんですかぃ?
[大人しいのに何かする、は矛盾しているようだが。][満月に程近いこんな夜に。][あんなに赤い血を見た後に。][彼が何もしないで居られるはずは無い事は知っていたので。]
[エーリッヒの返答に、男は顔をしかめる]
探し物なら、余計に暗くなってちゃ見つからねえだろう。
どうしてもってんなら、明日の朝になってからにしちゃどうだ?
お前さん怪我もしてるんだしな。血の匂いに狼共が引き寄せられねえとも限らないぜ。
[最後の方が脅しに近いのは、多分わざとだ]
………神はこんな時にまでわたくしに試練をお与えになる。
[そう言って、皿の中のそれを除けつつスープを口にする]
[だけど、よく煮込まれたその香味は、スープにもしっかり溶け込んでいて]
………。
[ちょっとだけ涙目になったかもしれない]
だからね、グリンピースは一国を滅ぼした悪魔の野菜なんだよ。
[ブリジットには数日前にした嘘話を持ち出して見せたが。]
・・・・・大体気に入らないんだよ。
掴み辛いし、避けづらいし、食感もなんか嫌だし。
[本当の理由はこちららしい。
丁度耳に入った天敵、という言葉にシスターを見た。皿の中でつつかれるセロリ。]
あれ。
・・・・・もしかして、シスターさんが嫌いなのって。
[数日前の話を思い出して、ぽつり。]
だっておはようと同時にそんな声、聞こえたら。心配するよ?
[アベルに宥められれば少し拗ねたように。][でも苦しい事、を掘り返すつもりはないので。][結局の所口は噤まれて。]
神父 クレメンスは、陶芸家 アマンダ を投票先に選びました。
学生 リディは、未亡人 ノーラ を投票先に選びました。
…まぁ、そうだけど……
[流石にこの状態で襲われては、無事では済まないと自分でも思うわけで。
あきらめたように、ぽすりとソファーへ。]
んでも、大事なもんなのさね。
アレなくしちゃったらマズイ。すげーマズイ。
[視認できない身振り手振りは、さすがに伝わらないが、物言いたげな気配くらいは感じたろうか。
それに、それよりも、今は。
銀の気配の様子に意識が行って。
月の光に、獣が昂ぶるのを感じながら。
その様子を追う]
―一階・音楽室―
……や?
お礼言われることじゃないよ。僕の歌じゃないしね。
[鍵盤に目を落としていたから、流れ落ちる滴には、気づけなかった]
最善、ね。
人によって違うんじゃないかな。
[沈黙のあとの言葉。
踊るように、指先を鍵盤の上に跳ねさせる。場違いに、明るい音が零れた]
正義も悪も、人間の立場、
大多数の意見によって成り立っているものだから。
たとえば、人間を食らう狼は、人間にとっては悪だけれど、
狼にとっては生きるために必然の術なのかもしれない。
だったら、それは悪だと言えるのか。
……人間だって、他の生き物を食らっているのだから。
…そんなに大事なものなら、俺が探してきましょうか?
[ぱくり]
[パンをかじって、咀嚼して、一言]
[エーリッヒを見る]
どれくらいのものですか?
[天敵、と言う言葉が聞こえたのか、疑問符の付いた言葉が掛けられて]
……他の物は克服したのですけど、セロリだけはダメなんですよね。
[どこか諦めたようにぽつりと零して]
でも、お二人が食べたのですし、わたくしだけ避けるというわけにも行きませんよね……。
[でもやっぱりスプーンでつつくだけ]
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