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あ、
[差し出されたカップ。
その手の主の顔を見る。口を開きかける。
昨日の記憶は朧気だった。熱の所為か、――まさかその直前のピアノの所為、なんてことはないだろうが。
何があったかを聞こうか否か躊躇い、結局止めてしまった。]
・・・・ありがと。
[代わりに出たのは、置かれたカップへの礼と、曖昧な笑みだった。]
[側で眠ったままのイレーネを、そっと壁に凭れさせて。
不自然な姿勢でいたせいか身体は難くなっていたけれど、
それでもどうにか立ち上がる]
[広間に集まる人々に。
昨夜の事件の目撃者たちに
どう声を掛けて良いのかわからずに]
………皆さん…お怪我は大丈夫ですか?
[そんなことしか言えない自分がもどかしかった]
いや、確かに甘いものは疲れに効くけどさ……。
[だからこそ、見回りの際にはいつも飴玉を持ち歩いている。
もっとも、冬場はそれよりも酒で身体を温める事の方が多いのだけれど]
はいはい、食べますよ、食べますよ……。
[大げさなため息をついて]
なおしに……。
そっか。
[ブリジットの短い返事から、何かを察したのか、答えは短く。
空いている椅子に座り、カップに口をつける。
柔らかな甘味と温もりに、一つ、息を吐いて]
[外からブリジットが戻って来たのが見えた。階下にも、ざわめきが戻って来たのを感じる]
腹が減っては戦は出来ぬ、かね。
[男は立ち上がり、広間へと向かった]
―二階→広間―
[部屋の扉を開けようとした。
暗い廊下に慣れた目は一瞬、光に幻惑されて]
あ…!
[消えてゆくその部屋の中へ手を伸ばそうとして]
……ぁ。
[現実でも伸ばされたては、空を切った]
―…→現在・広間―
……はい?
手帳って?
[ぱたぱたと何か探すエーリッヒの様子に、ますますきょとり、と]
よくわかんないけど、大事なもの、落とした?
[その他は割と何でも食べるのに、あまり背が伸びなかったのはやはり緑の呪いだろうか。
ともあれ、置かれたホットミルク入りのカップを両手で包む。甘い香り。
カップに口を接けた。]
・・・・おいし。
[何処か懐かしい温かさがあった。]
[いつもと同じに見えて、けれどいつもとは確実に違う、そんな空気が漂う室内に男は姿を現した]
おはよ、と。飯あるか?
[口に上る言葉は端的だ]
[あの血の海がどうだったかなど、口にするつもりは無いので。][短いやり取りで済んだ事を安心しながら。]
[ふと、マテウスが変わった事はと尋ねたのが耳に届いたので。]
…村には帰れなくなった、みたいです。
[断片的に聞こえたままを、ぽつりと呟いた。]
[スープを再度温めて、自分用にホットミルクを作り足す。
誰が食べていないのかわからなかったから、パンは多めに取って、バスケットに入れることにした]
……他にもいるかなあ。
[卵が目に入った。
とは言え、オムレツは昨日作っていたのだし、と考えて]
[広間で怪我人を看ながら]
[やがてしばしの仮眠を取った]
[目を覚ましても空気は変わらずぴんと張られたまま]
[血の匂いの残る空気にむせる]
[新鮮な空気を吸おうと外へ向かう]
ああ、変わったことだが
[そこでユリアンの様子を見て、既に村のことは知っていたからというのもあるが少し考えて
]
っとその前に腹が減ったんで、食事はあるか?
[と、強引に変えた後、一礼するアーベルを見て気にするなとばかりに手をひらひらさせ]
ま、次も同じようなことになったら今度は手加減なしに殴ってやるよ
[別に、ニンジン食べられなくたって身長は伸びる、と主張したいかも知れない。
エーリッヒよりはほんの少し低いけれど。
それは置いといて]
[シスターの問いには、曖昧に頷いていた。
元々、怪我らしい怪我はしていないのだから。
入ってきたハインリヒにはども、と短く挨拶して]
なんか、あるみたい……ですよ。
俺はよく、わかんないけど。
[とはいえ、料理ができるような精神状態ではないのだが。
そこに聞こえてきたブリジットの声。
蒼の瞳は微か、険しさを帯びて]
―廊下―
[丁度広間からも影になるところか]
[何かを考えてただそこに]
[時間がたつと広間は騒がしい]
[ハンカチを取りに、まずは二階に向かった]
[振り返り、エーリッヒが何か慌てているらしいのが見える。そちらに声を掛けようとした筈だった。]
どうし・・・
・・・・・・え、なに?
[疑問は途中から、ブリジットの言葉へ向けられたものとなった。]
お待たせー…… って、増えてる。
[暢気な声をあげるも、空気は張り詰めていた。
眉を顰める。
食事が必要な面々に配膳を終えると、マグカップを手にして、*暖炉の前に腰を下ろした*]
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