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「そうだったんですか…五年…いえ、それ以上、帰らずにいるんですね…」
[妖精王が実力行使に出てくるのも、無理はないかもしれない、と少しだけ思う。それでも、譲れない願いはあるのだけれど]
「…ヴィントが、あなたが悩んでいたって言っていましたけれど、細工のことで?」
[衣服を脱いでいた手が引っかかって、ふと止まる。
胸元を見れば、小さな石の付いたペンダント。
…此れを外すか否か。
―――何事かをぽつりと呟くと、一つ頷いて
今度は、シャラリと小さな音を立てて首元から外した。]
[タオルに身を包めば、イレーネの後を追いかけて
一足先に浴室へと向かう]
[受付は、おそらく人の良さそうな、成年男子を選んで頼み込んでいるのだろう。
さすがに女性に混浴に回ってくれとは言いづらいとみえる。
現に、彼女なんて、先にさっさと混浴へと入ってしまったベアトリーチェを追いかけられずに立ちすくんでいたりする訳で。
嘆息しながらも、混浴へと回ってくれた青年二人に感謝しつつ、女湯へと向かった。
もちろん。イレーナの微妙な態度には気付かない。]
ん、まあ……短い時間じゃない、かな?
[その『時間』の長さについては、敢えて深く語らず。
続く問いには、え、と短く声を上げ]
まあ……それも、あるし……それ以外にも……色々と。
[ある意味、一番の悩みは祭りの花冠の事でもあるのだけれど。
それは言わずに、奥の方に押し込めて言葉を濁す]
[本当は入り口で待っていようと思ったのだけれど、少女は小さく吐息をつく。結構混雑している温泉で、ぼーっと立っているのは、いかにも迷惑そうだったし、ユリアンは混浴に入ってしまうし、少しすっきりしたい気持ちになっていた]
…いえ、ユリアンとは関係ないですけど…
[一体、誰に向かって言い訳しているのか?]
「色々、ですか?」
[そんなに悩みが色々あるとは、正直思わなかった]
「昨日も言いましたけど、私に話して少しでもすっきりできそうなら、いつでも言ってくださいね?」
[金属音と共に装具を外して行き、ついで赤い衣服を脱ぐ。
騎士という肩書き通りに鍛えられた体には幾筋かの傷跡。
当人はそれを気にした風もなくタオルを巻いて。
…さて、どうしよう]
[妙な諦観(?)を抱えつつ脱衣場に入り、着ている物をぱっぱと脱いで行く。
身体は割りあい、しっかりと鍛えられていて。
……肩口に傷らしきものがある辺り、当人の記憶にない、という過去がただ事ではなかった事が伺えた]
[脱衣所で、少女は、ちらりと光るものに目を囚われた]
まあ、綺麗…
[輝く石を、数刻見つめ、やがて、くす、と微笑む]
リディも女の子らしいとこがあるのねえ。
まあ、ガラじゃない、って言われそうだけどな。
[相変わらず、声には苦笑の響きを交えつつ、こんな事を言って。
それから、告げられた言葉に]
あ、うん……どーにもなんなくなったら、頼むかも。
[曖昧な返事に、ネズミが呆れたように嘆息したとかしないとか]
[男湯は、混浴よりもずっとマシだとは言え、その分人は多く、滅多に肌を晒す事の無い彼にとっては、矢張り抵抗はあって。なかなか身動き出来ずにいると、アーベルに早く入らないのかと声を掛けられ、]
……解っている。
[不機嫌そうに返事を一つ]
[さっさと服を脱いで浴場に行き、手早く身体を洗うと、すぐさま湯に浸かる。それはもう、どっぷりと――肩どころか鼻まで浸かる勢いで。あくまでも、隅っこの方に]
[ふと細工師である筈のユリアンの肩に傷跡が見え。
あれはどうしたのだろうと瞬く。
しかしそれを聞くのも何だろうと疑問は抑えて]
[諦観気味の溜息をひとつ。
そうして、混浴の扉を開いた]
[入る支度を整えた所で、何やら悩んでいるらしいダーヴィッドの様子に気づき]
……ま。男に回れって言ってるくらいだし、妙齢の婦女子はいないっしょ。
[こんな事を言って、すたすたと。
妙齢の婦女子はいない。確かにいない]
[慣れない…というか初めての温泉に戸惑っている内に、お母上と先輩はさくさく湯船へと移動してしまったようで。
慌てて衣服を脱いで、ぱた、ぱたた、と。
追いかけかけて、走ったらダメとイザベラに怒られたり。]
[子供はにこにこと、お湯につかっている。
ぱちゃぱちゃ、
飛び跳ねるお湯が楽しいらしい。
扉の開く音に顔だけ向けて、ぱたぱたと手を振った。]
あ、ダーヴィッドさんとユリアンさんだ。
「ガラじゃないなんて、そんなことありません。だって、ユリアンの創る細工は、あんなに繊細で綺麗なんですもの…」
[それは、あなたの心がそうだから、だ、と言外の意味は伝わったろうか?]
「私、いつでも、待っていますから」
[脱衣所に入り、コートの釦を外し。先に入って行く少女たちに若いわね等と少し笑って]
[脱ぎ終えると、同じ様にタオルに包まって]
…さて。
[ちらと横目にペンダントを捉えたが、特に何も思わずに扉を開けた]
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