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おいっ!
[水面に落ちかけたエリカの姿に、常に似ず、大きな声をあげ、駆け寄った。しかし、その身を支えるまでもなく、座り込んだ相手に大きく息をつく]
大丈夫か?怪我は?
[問いながら屈み込む。先に発した問いが彼女に届いていないと知れば]
話がしたい…アヤメの家でも、どこでも、君の望む場所、望む時でいい。
[承諾が得られても得られなくても、*そのまま送って帰ろうとするだろう*]
[大声に、意識が現に寄せられたのは、幸か不幸か。
大きく見開いた瞳が一度揺れてから、相手の眼へと、視線を合わせた]
……ない……
[ゆるりと一度、左右に首を振る]
……、…………落ちないところ。
[ぽつりと返すのは、ひどく曖昧な答え。
震えかける身体を、己が身を抱えるように腕を回して、*押さえつけた*]
― 回想 ―
[ リディアの家で夕食を馳走になるも、オーフェンは現れず。
心配となって、一番最後まで残ってはみる。
けれど、眠気も限界となったところで彼女の家を出る。
金色色の羽根を広げて、自宅へと。]
――――――…。
[ ベランダから部屋に入れば、眩暈が。
暗い部屋の中、羽根が輝いているように見えた。
慣れぬ歩きもあったためか、予想以上に疲れているようだった。
ベットに凭れかかるようにして、
姿勢を楽にすればそのまま意識は遠のいた。
吹き込む風が時に背中の羽根を揺らすが気付くことはなかった。]
[ 次に耳が捉えたのは母親の声だった。
何か口煩く言っているのが聞こえる。
けれど、ぼんやりとして働かぬ頭では認識もできず。]
嗚呼……申し訳ありませんでした。
[ そう言って全て一括りにして謝罪することにした。
左目を掌で抑えながら、身体を持ち上げる。
外を見れば、また明るく右目はその白を捉える。
そのことに酷く安堵の溜め息をついた。
母親がその溜め息を聞いて、また何か言葉を。
申し訳なさそうに母に向けて微笑むと、彼女は部屋を後にする。
明るい外を見た目には、暗い部屋の中が一層暗く感じた。]
― 回想終了 ―
[森のほうから、長い蔦をもってきて
島の端に近い岩に縛り付ける。そしてその先には、自分を結びつけて]
しゅっぱつしんこ〜〜。
[そして何の戸惑いも見せず、飛び降りる。
重力にしたがって落ちる体を蔦が支えて揺れる。島の側面にあたったが]
足りないや。ざらざらかた〜い、つめた〜い。あはは〜
[と、不満そうに陽気に言って、崖のほうを触ったりして、浮く体を堪能しつつ
飽きたらそのまま*昼寝をしてしまう*]
[水桶を提げて、家の扉を開ければ、話し声が聞こえた]
『お客さん。あんたの友達だってねえ』
……ああ、そうだよ。言わなかったっけ。広場で吐いていた子だ。
[老婆の問いにはそう答え。少年を見れば、昨日よりはずいぶんと、落ち着いた様子だった。林檎を差し出されれば、少し目が丸くなり]
わざわざ持ってきてくれたのか。……ありがとう。ああ、朝ごはん。食べていけばいいさ。
[そのまま共に朝食の席に着いた。朝という事もあって、お茶にパンとジャム、干し肉とサラダという簡素なもの。オーフェンが持ってきた、野性の林檎を向いて切ったものも、ともに並べる。
食事の終わりかけた頃、不意にオーファンが硬直した]
………どうした?
[声をかければ、オーフェンは近寄ってくる。ふわり。やわらかなましろの翼が目の前に広がる。
縦に細くなった瞳が、深緑の瞳に映った。
翼をたたみ、おまじないだと言うオーフェン。しばらくの間、紅の瞳を見つめていたが、何を思ったか手を伸ばし。
ぎゅむに
少年の頬を割りと強くつねった。理由を聞かれれば]
……顔つきが面白かった。
[真顔で言って、老婆にはたかれただろうか]
『ああ、行くのかい。さようなら。苦しい時には、きちんと来るんだよ。忘れちゃだめだ。あの婆さんがいなくなっても、あんたはまだ、大人に頼ってもいい、子供なんだからねえ』
[少しふらふらした様子のオーフェンを老薬師と見送り、施療院に戻る。客が来て機嫌の良い老薬師を見やりながら]
……変な子だ。
[床に落ちた、ましろの羽根を拾い上げる。*呟きが落ちた*]
[小さな呟き>>541と共に、その姿が近付く。
翼に――…、傷口に触れられれば、いつかの事が思い出され身体が強張った。
身動きも取れず、ただ堪えるように眼を伏せて、唇を噛み、]
―――……っぁ、…は。
[けれど、尖る感触に、悲鳴の様な押し殺した声。
訊ねる声が耳朶に響けども、癒しの力に圧倒される。
傷の痛みはすぐに引き、にも拘らず、ゆっくりと身体から力が抜けていく。
眠りを誘うようなその声に、視線を送ろうとして瞼が開かず、身体を預けるように膝を付いた。
意識を失う前に、縋りつくようケイジの服を握った指は、酷く*真白*の色をしていた]
― 結界樹・上 ―
[飛びながら結界樹に近づくにつれて、苦しかった体は少し楽になる。虚に敏感な体を怨めしく思いながら、樹の上へと降り立つ]
……婆様……も、こんな……苦しみに、晒されて、たの……?
虚に捕らわれる、くらい……に……
[枝に腰かけ、幹に体を凭れるようにすると次第に気は休まる。目を閉じて、施療院での老婆の言葉を思い返す]
婆様、のこと……見てた人、いた……
……婆様、独りじゃ、なかった……の、かな……ありがと……
また、会いに行こう……
[送りだされた時の言葉を思い返し。カレンに引っ張られた頬に、そっと触れた]
[大きな木の、太い枝の上。
ゆったり座りながら、開いた羽根を折り曲げて手前へ持って来て、不要な羽根を千切っては落とし、撫でつくろう。]
…はぁ。
[地道な作業に、溜息が出た。]
― 現在・自室ベランダ ―
[ 身支度を整え、髪を纏める。
リディアに届けてもらった本が途中だったことを思い出す。
いつものようにベランダに出る。]
――――――…。
こうして海を見ていてると、何も変わりがないようですね。
[ けれど、研ぎ澄まして気配を探ると―――――。
島の人々の何処か不安な気持ちが伝わってくるようだった。]
巫女姫殿をお救いする、ですか……。
[ 長老は今日にでも誰かを封じるつもりなのだろうか?
堕天尸として―――――――。]
[結界樹でひとしきり体を休めた後、ばさり、翼を羽ばたかせる。森の上を飛び、村の方へ]
……あれ
ラスさん……かな?
[木の上に見知った姿が見えれば、目を凝らした後、そちらに近づいていく]
[はらはらと落ちていく自身の羽根を見つめると、木の下に小さな影を見つけた。
ひょいと枝から体を乗り出し、垂直に降りる。]
よ、どうした?
[オーフェンに、笑いかけた]
[人違いでなくてほっとしている]
うん……ちょうど、見かけた、から。
ラスさん、何、してたの?
[木の下にある羽根を見て、首を傾げる]
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