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――屋敷内・廊下――
[広間から出て、皆と別れて。
とりあえず、手当たり次第、目の前にある部屋に入って
中を確認しては別の部屋へ、を繰り返していたが、
何個目かの部屋の扉を開けようとして――その動きが止まる]
そうか。――わかった。
[ぽつり、それだけを漏らし、手を引っ込めた]
[届くコエに愁いの成分は確かに混じっていたが、
先ほどより乱れはなくなっていて、一安心。でも、]
えーと。
とりあえずセレスくんとやらは、探しても居ないのはわかったけど。
「この空間」とか「元の空間」とか、わけわかめだよ!
一体何が起こってて、そしてどうすればいいのか
出来るだけ僕でもわかるように簡単に説明してほしいな。
[そうしてコエで何度もやりとりして、
ユリアンにも広間でオトフィリートが説明した程度の事は
なんとか飲み込んだだろう]
[もうセレスを探さなくてもいいとのことだったが、
そのまま広間に戻るのもなんなので、
少し屋敷内を探索することにした。]
[そして見つけた書庫に忍び込む。いろんな言語で書かれた
難しそうな本が並ぶ中、自分でも読めそうな本を一冊取り出し、
椅子に腰かけて開く]
また、付け焼刃だよ。うーん。
こういう時、日頃から、きちんと勉強しておけばよかったと
心の奥底から後悔するんだよね。
[麒麟についてかかれた本に目を通しながら、ぼやく]
[――が、30分後。
身体が既に活動限界を迎えていたせいか、
それとも慣れぬ読書をしたせいだろうか]
[読んでいた本を開いたまま枕にして*爆睡*]
[助けを求めたなれば、説明を求められるは当然の事。
ほんの少し前までセレスの座っていた椅子の傍らで目を伏せる]
えぇ、そうですの。
私にも詳しくはわかってはおらぬのですが…
[言い置いて、知る限りの事を音無きコエで伝えてゆく。
広間での応答でわかる事が増えたなれば、また、それも伝えて。
やがて、飲み込んだ様子に小さく一音啼き――コエを止める]
[それから、窓辺へと移動して。
セレスの元へ行くも連れ戻す事も出来ぬ、己が無力を悔やみつつ。
迷いのよに先の見通せぬ乳白色の霧を、ぼんやりと見つめていた]
[風の青年のぼやきは届いたか。獣耳は下を向きがちに、ぴるる]
[窓の向こうを眺めていた視線を、窓の硝子へと移ろわせれば、彼の魔が言う通り悲壮な表情を浮かべている己が映り。
涙の跡を消そうと手でこする。
身を休めた方がよいのはわかっていたなれど、眠れぬのもまたわかっていて。
心を読むが得意の魔から逃れるよに、獣の耳を髪の影に伏せた]
[己が歌に心慰めらるる事はなけれど、同じよに心痛めてるであろう者達が少しでも心穏やかになるように願いながら。
愛し仔を助ける手を持たぬ私が、ただ一つ出来る事を。
仄かに心の魔への*牽制も兼ねて*]
[広間に穏やかな旋律が広がると共に、私が天聖の力も広がる。
そはとてもささやかで、圧倒するようなものは欠片もなく。
全てに影響する特性を持って、心穏やかになるよう働きかけてゆく。
そは、心の魔であれど例外ではなく。
どうかこの眠りの時を壊さぬようにとの、*祈りを込めていた*]
これからの話だよ、クレメンス。
今までなにもしてなくても、ね。
疑われるのには、理由もあるのだから、赦して。
[そう言って、彼らと広間へ向かう。
暫く後に戻ったオトフリートから話を聞いて、クレメンスの提案に対する反応にくすくすと笑いを零した。]
[眠る者、おきている者、その様子を見ながら立ち上がる。]
ユリアンはいるのだっけ。
ちょっと、探してくるよ。
あんまり別々にいるより、まとまっていたほうが良いでしょう?
[だけれど、歌をうたう麒麟の方に、まずはそっと近付いて、]
思い出した。君はエーリッヒを知っている? 白い猫。
色々話してくれた中に、君の話があったよ。
今も幸せに暮らしてると思うって、言ってた。そういう顔をしていると、悲しむんじゃないかな。
無理をしてはいけないよ?
[白猫の居場所をいう事はなく、それだけ言うと、広間を出てゆく。
ユリアンの居場所を探しながら、幾つか扉を開いた後、]
……ユリアン
[思わずくすくすと笑ってしまった。良く眠っているようだ。]
ごめんね。
……謝らなきゃいけないのに、言いたくないんだ。
[そっと呟いて、起こさぬように手を伸ばす。
髪に触れ、頭を撫でる。]
悲しまないでほしいなんていうのは我侭だろうにね。
でも、君が元気そうで、良かった。
[前の苗床の感情なのか、それとも自分のものなのか。
リックにそれは判断できなかった。
そっと手を外し、書庫を眺めると、其処を出る。
向かう先は、矢張り森の方であった。*]
それ、時空王様とか楽しみそ…。
[クレメンスの言葉に小さく呟いて。
隣の人の気配がちょっと剣呑になったのでそれ以上は言いませんでしたけれど。いい加減その名前呼ぶことの危険性も覚えましょう]
中枢になった人?
…ええと、ここと同化しちゃった人、だっけ。
[フッと目を落とし、自分の手を見た。
それから顔を上げて視線を巡らし、対たる精霊の所で暫しそれを止めて。悩むような声が聞こえれば目を逸らした]
……ほら、やっぱり無茶してたぁ。
[意識を手放すようにして眠る時空竜に溜息一つ。麒麟の様子を窺う。時空竜は多分、本人もまだ大丈夫と考えた範囲内だろうけれど、それで心痛めるのは優しき麒麟だろうから]
無茶させないためには。
うーん、でも。分かんないよ。
[どうしよう、と最後に覘きこむは隣の氷精。不安そうにその服の端を掴んだ。自分の手は随分と熱くなっていたから。
やがて聞こえてくる麒麟の歌に瞼を伏せた。眠ってはいないのだけれど、傍から見ると寝てる*かのように*]
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