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成る程、ねえ。
エーリ兄が見つけたんだ。
……そりゃ、御愁傷様。
[空のグラスを放り投げ、受け取る]
流石に、皆で話し合いって雰囲気でもないね。
─騒動が起こる日の朝─
[起きて作業場に向かうと、そこには技師の姿は無かった。
何か用事を済ませに行ったのか、はたまた自警団に言われて避難したのか。
書置きらしきものは無かったために、どこへ行ったのかまでは分からなかった]
……作業しとけってか。
[自分の作業場の机には、前日仕入れたらしい原石の山。
仕事を与えておけばその場からしばらくは離れないユリアンの性格を利用しているのだろう。
その日一日かけなければならない量はある。
小さく息を吐いてから研磨に取り掛かった]
[ここまで呟き、ある可能性が頭に浮かぶ]
あやふやなもんが…現実になった…てことか?
もしそうなら…。
[上着を羽織り、とりあえず宿へと向かう。他の容疑者と呼ばれた者達が気になるのと、自分の想像が当たっているのか確かめる為に]
[陽が暮れるまで作業に没頭し。
その間技師が帰って来ることは無かった]
……まぁ、俺が居るんじゃ、な。
[”容疑者”として名が挙がっている以上、警戒されてもおかしくはない。
おそらくは別の場所に避難したのであろう。
流石にずっと作業していたために、腹の虫が鳴って。
仕方なしに工房を空け、飯を食いに行こうとする。
そんな時、工房の扉が荒々しく叩かれた。
開けると、そこには数人の自警団の姿]
…何。
………親方?
朝から居ないけど。
…俺はずっとここで作業してた。
証拠が見たけりゃ作業場の石見ろよ。
[向けられる視線はどこか探るようなもの。
技師の行方と、今まで何をしていたのかと。
様々聞かれその都度答えていく]
……だから。
親方がどこ行ったかなんてしらねーってば。
書置き一つねぇんだからよ。
大方アンタらに言われてここから避難したんじゃねぇの?
俺がここに居続けてるんだからな。
…ああ、俺が居るうちは別のところに居て、居ない時に戻って来る可能性はあるかもよ。
長期間工房空けたがる人じゃ無かったからな。
………もう行って良いか?
朝昼食わないで腹減ってんだ。
[自警団を押し退けて工房から出る。
彼らもまだ何も起きていないのだから、とそれ以上のことは言わず、その場を離れて行った。
それは騒ぎが起きる直前のこと]
[現場を確認した後。訪れた宿屋の一角に席を取り、暫しの間ぼんやりとしていた。腕を組み、机上に置いたノートなどの束と頼んだフルーツとに視線を向けているが、別段それを注視しているというようでもなく。人の出入りがあっても一瞥だけして挨拶はせずに]
……。
塔とは作ったからこそあるのだよ。
[それでもそのうちに呟いて、フルーツを積み上げ始め。一つ一つと、赤や黄や黄緑の塔が出来ていく]
[ご愁傷様、という言葉に、浮かべるのは苦笑]
……まったくだ。
ついてないったらありゃしない。
あれを見ちまったら、話し合いがどうの、って気にもならんよ、さすがに。
[歩みはゆらりとして遅く。
空腹に負けて数分もかからない道程を倍くらいの時間をかけて進んだ]
…あー、くそ。
休憩すら忘れる癖もどうにかしないとな。
[空腹の原因である自分の癖。
それに悪態をつきながら広場へと足を踏み入れる。
何故だか騒がしい。
先程工房を訪ねて来た自警団の面々も駆け回っていた]
……何だ……?
[流石に訝しみ、その歩みを止める]
[ユーディットに声をかけられたのは、カインに逃げられた直後あたりか。
白猫の背に、ごめんねと小さく呟いてから。]
あ、はい…
[一旦頷いて、ふと何か思い出したように首をふりなおす。]
…いえ、一旦戻ります。
ちょっと薬、取ってこないといけないし。
[ミリィに一つ渡してしまった分の補充と。
もうひとつ、取りに行きたい物があった。]
大丈夫、人の多い道を歩いていきますから。
[心配してくれているのか、それとも他の意図があるのか。
ユーディットの胸中はちらと思うだけに留めて、平気ですという風に微笑んでから娼館へと戻っていく。]
話し合う気にならない、だけなら未だしも、
物騒な方向に向かい兼ねないねえ。
自衛団の連中も、大分殺気だってたし。
……ま。
もしもの報復恐れて、早々手出しはしてこなさそうだけれど。
[カウンターにグラスを置いて、肩を竦めた]
ん。ってことは、ユーディットとはすれ違い?
[日は暮れて、夜の帳が落ち始める。]
……事情聴取ってこんなに時間がかかるものなの?
[広い家で独り待つ。いつものことなのに、不安が波のように押し寄せてくる。
耐えられなくなって、家を出た――
――ところで、近所の住民と鉢合わせた。
相手の表情が強張り、手に持っていた買い物袋が、とさり、と音をたてて落ちる。]
あ、っ、ええと。
[声をかける間もなく、相手の喉から、ひぃ、と悲鳴が漏れて。
まともに話しかけることもできないまま、一目散に逃げられてしまった。]
……背中見せて逃げたら、危ないですよ?
[ぽかんとそれを見送った後、出てきたのはそんな一言だった。]
……ああ、かなり殺気だってたな。
っとに、手は商売道具なんだと、何度説明した事か……。
[ため息と共に撫でる右の手首には薄らと浮かぶ、痣]
まあ、多少手荒な扱いは受けたが、さすがに一気に何かする気はないようだったな。
[切欠があればわからんが、とこちらも肩を竦め。
ユーディットの名に一つ、瞬く]
すれ違い……って?
あー……そう、なるのかも。
[歩きながら、ぽつぽつとつぶやく]
ユーディ姉ちゃんが言ってた。何もなくても、誰が狼なのか、考えることができる、と。
考えるには何が必要…誰が怪しいかとか、そういう情報がないと、考えられないなあ…
[現場でちらちら見た顔を思い出す]
…誰か、見なかった人居なかったっけ?
[数人の顔を思い出していれば、前にハインリヒが歩いているのが目にはいる]
ハインリヒのおっちゃん、そういやいなかったよな。
[子供なりの浅知恵ではあるが。気になって、こっそりと後をつけてみることにした]
[どれだけそうして見上げていたのか。
大きく深呼吸をした後、いつものリズムで扉を叩いた]
ミリィ、家に居ますか?
無事かどうかだけでも良いので確認させてください。
軽く脅してやれば引っ込むよ、ああいう手合いは。
まあ、程度を弁えとかないと、逆上するけどね。
[村の仲間相手とは思えない言葉を、平然と発する。最も、自衛団側の対応も手荒いのだから、対抗するには丁度いいとも言えるが]
そりゃ、心配してそうだねえ。
[ユーディットの事については、どうする?と言外に問いを投げる]
[その後も騒がしい村の中を歩いていく間に似たようなことが何度か起こったが、いちいち気にしてはいられない。
自衛団の詰め所に辿り着くと、どんどんどん、と乱暴にドアを
ノックする。出てきた団員(負の感情が多大に含まれた表情をしていたが、やっぱりそれも気にしないことにした)に、エーリッヒの所在を尋ねる。]
え、……とっくに帰った、んですか?
[かえってきた意外な返答を、オウム返しに口にした。]
えっ、じゃあどうして……
あの、エーリッヒ様、まだ家に戻ってないんです。
どこに行ったかわかりま……
[必死で団員を問い詰める、前に、自分で答えが判ってしまった。]
……した。
いえ、はい。……すみませんでした。
[はぁーっとため息をつく。
自衛団員に頭をひとつ下げると、一路、エーリッヒのいるであろう酒場へ向かった。]
[多少急ぎ足だったせいか、宿に着く頃には息が上がり。入り口付近にいた自警団が明らかに殺気だった目で睨みつけてくる。そのうちの一人が尋問めいた事をしてくるが、それに合わせて状況を確認する]
…死んだのは団長のじーさまかよ。
…どーりでなぁ。
[事情を聞きだしながらメモを取っていたペンで額をコツコツと叩く。その様が気に入らなかったのか、自警団の一人が詰め寄ってくるが]
っせえよ。馬鹿。
それより俺の家に投石してくる馬鹿と落書きした馬鹿がいるぞ。そーいうのも取り締まってはもらえねーのか?自警団さんよ。
お前らからすりゃ胡散臭え容疑者が何されよーが知ったこっちゃねーかもしれねえが。このままほっときゃパニックになるぞ。狼の野郎よりもそっちのがよっぽど厄介かもな?
[それから振り返り、己の思考に没頭しているようなブリジットを見る]
フレーゲ先生、
果物は食べてやらないと可哀想ですよ。
何か、お飲みになりますか。
[色取り取りの、何処か不安定な“塔”を見て、眼を眇めた]
-娼館-
[戻ると顔色の悪い女将が中に入れてくれた。御伽噺が現実になって、流石に女将も自分を見る目に翳りが出たように思えた。
視線を知らぬまま、気づかぬままにやりすごす。
女将からそれを感じるのは初めてだったけれど。
何時もの事だった。
二階の自室へと戻り、テーブルの隅に置かれた小箱をあけて、その中に置いていた痛み止めをいくつかをポケットに入れ。
そして古い小瓶を取り出した。
中には無色透明な液体。
それを確認してから、胸の合間にしまった。
落とさないように、必要な時にすぐに使えるように。
そうしてすぐに、外へでて宿の方へと向かっていった。]
[―――左手の鈍痛に耐えながらも、更に絵を描き続けると、またしてもノックの音]
およよ。
今日は、本当によく人が来る日だね。
[言いながらも、その顔は笑顔。
いつか聞いたノックのリズム。それはオトフリートが来たという合図の音だから。
玄関までつってけと歩き、扉を開く]
やっほ。せんせ。
元気してます?
まま、とりあえず、立ち話もなんだから、ずずいと中へどうぞ。
[言うが早いか、ミリィがオトフリートの手を引き、部屋に連れて行こうとする]
わかっちゃいるが、それも面倒でな。
下手につついて、状況悪化させるのも厄介だし。
[物騒な言葉には、さらり、と返して]
……まあ、そうだろう、な。
早めに、帰るのが吉、かな。
[心配、という言葉に苦笑しつつ、立ち上がる。
当人がこちらに向かっているとは、思いも寄らずに]
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