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[出来上がった二皿を盆に乗せ、女はキッチンを出る]
[部屋に戻るかも考えたが、結局は広間の方角へ緋の靴は向いた]
[リィン]
[鈴の音を鳴らし、女は広間へと踏み込んだ]
場所をお借りさせていただきますわね。
[先に中に居た青の少女へと声を掛ける]
[テーブルに盆を乗せ、少女の傍らの窓の先を*見た*]
そこからは、何かが見えるのですか?
[大きな手に触れられる一瞬には、
微かながら身体が震えた。
眼差しより声より、如実に感情を語る反応。
小さく吐息を零す。
撫でられる頃には落ち着きを見せていた]
望まないよ。
オレは、死にたくはないもの。
[はっきりと口にした]
だから、その為に――…
[続く決意は音にはならず、拳を握る。
やがて埋葬は終わり、
かつて番人だったものは土の下に眠る]
……うん。
死んでしまえば、動かないしあたたかくもない。
詰まらない。
[握る拳の内で指先が疼く]
[肉を裂いた爪は今は無い]
先ずは番人と謂っていたけれど。
次は誰かの、決まりはあるの?
[逸る心は次の狩りへと]
なるほど。そうです、そうですよね。
[肯定の返事を得られると、表情が転ずる。
満面の笑みを浮かべて、安堵する。]
ましてや、それを法として咎める者はここにいないし、
倫理的な咎めもされない予想が立ちました。
[メモに書いた言葉は「GO!!」]
踏ん切りがつきました。ええ。
パーツ?
[呟きのような声に尋ね返すのもまた呟きに近い小さな声。
意図したものかそれとも単にあわせる形になっただけか]
生き残るためには、終焉を齎すもの、人狼、を見つけて殺さなければ。
そのための術もまたあるよう、なのですが。
[そこはあえて伏せられていたとは気付かず。
その言葉が他者にどう伝わるかも知らぬまま]
[緋を少し摘み、そっと手の上にとった]
なら、己はお前を殺さない
[土のかぶさる音に、男は手を離した]
[見た先、死体はなかった]
[土が僅かに盛り上がり、そこに番人だったものは眠るのだ]
終わったか
城の中に戻るか?
[ラッセルの足へと一度視線を落とした後、二人に尋ねる]
[ハーヴェイの腕を見た時には、黒紅を細めた]
また疑われたくなければ、早く治すことだ
[少し頭を傾けて、ケネスを見る。]
ケネスさん、でしたか。
あなたは随分と人狼についてお詳しいようだ……
無くした記憶に、この事件の手がかりがあるようですね。
[声音に皮肉の色は無く、口調はあくまで穏やかだった。]
[イザベラの笑顔を一瞥し、要注意と心に留めておいた。手近な部屋の窓から玄関へ抜ける風に身を震わせ、止めていた足を動かす]
ここに居ても冷える一方だ。体を温めねえとな。
[挨拶にもならない声を残し半ば巣穴と化した地下室へ戻る。運んできた食料を片隅に隠し、アルコール度の高い酒を暖が必要な分だけ呑みポケットへねじ込む。酒臭い息は変わらないが汚い前髪に見え隠れする目は*酩酊には程遠い*]
うん…?
もう次の狩りが待ち遠しいか?
[年若い同胞の性急さを揶揄うように]
[だが愛でるように、皮肉な聲は耳もとを擽る。]
特には決まっていない。
もし我らを察知しそうな者がいたら、見付からぬように出来るだけ速やかに狩った方が良い、というくらいで。
……変なの。
[女の時と同様、緋は掬われる侭。
まじまじと男を見て、呟いた]
ん。
[天を目指す花も、
今は地を見詰めているように思えた。
小さな肯定と共に踵を返す。
手をかけた扉は軋む音を立てて開き、
風が冷えた大気を運んだ]
それとも。
誰か、喰いたい奴が居るのか?
[ゆったりと聲ならぬ聲で愛し仔の感覚器を撫でつつ、甘やかす声音で尋ねた。]
だって。
早く獲たいのもあるけれど、
全てに終わりを齎せば、良いのでしょう?
[同胞の問いにも弾む聲は止まない]
嗚呼、番人が謂っていたね。
僕等を脅かす力を持つ者が居るのだって。
[ラッセルの呟きに返す言葉はない]
[二人がどうするかは二人に任せ、振り返ることなくラッセルを追った]
――…喩え、お前が使者だとしても、今度は殺さない
[その言葉は口の中で転がされ、決して届かない]
[一度忘れたかに思えた、忘れられない記憶が決めさせる意思]
温かくしてこい
足だけでも
外は冷たかっただろう?
ううん。
未だ、特別には居ない。
嗚呼、でも。
食べたくない人は居る。
僕の事は殺せないと謂うから。
そういうものは、利用しなくてはいけないのだよね。
[獣は識っている][己が身を護る術を][為すべき事を]
ケネス、様。
[ナサニエルの声にその名を知る。
人狼に詳しいと聞けば、立ち去るその背をじっと見つめていた]
ああ、私もこれを片付けなければ。
[赤黒い桶を持ち上げる]
僕と?
[反射的に疑問を含んだ聲を返す]
うん。僕も、そうしたい。
でも、親しくしていたら、変に見られてしまうかもしれないから。
いけないのかと思っていた。
[傷の男の意思を知らぬ侭、
戻った玄関ホールの面子は先程とは大分異なる]
あ、リィ。
掃除、していたの?
何か手伝ったほうがよかったのかな。
食べたくない人か……
賢いなおまえは。
[押さないながらも確りと、生きる術を身に付けている若い獣に苦笑する]
だが、少し妬ける……
そう、俺はどうなっても良い。
だが、お前はまだ稚い……
俺の所為でおまえの命が中途で断ち切られるのを見たくは無い。
[苦さと痛みを含んだ囁き]
だから、おまえに触れないようにしている…
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