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あの話が本当だったということか
[体に付いた場所から、布団はゆるやかに緋に染まる]
そういう武器がない事もないが――
持っているような奴はいなかった
それにこれは、人では作りにくい傷だったな
[隠れきれはしない体]
[足の先を見下ろして、男は玄関の戸へ向かう]
少し空気を換えるぞ
臭い
ああ、ずっと見ててもしゃーねえな。
[同意に頷き、落ち着き払った強面の男の動作から目線を緋に侵食される布団に戻す。次に向くのはクインジーとは別の方向]
俺はあっちを開けてくらあ。
頼む
[言いながら、玄関の戸を開ける]
[冷えた風が道を通り、わずかに布団を揺らした]
弔って――それから、獣を探すか
まさかあの戯言が、本当だとはな
[死者を見下ろした男は、目を細めた]
確か――使者が二人だったか
[クインジーが玄関の戸を開けた瞬間、部屋のカーテンが大きくはためく。ずっとポケットに入れっぱなしだった手をようやく出して払う。冷たい風を背にホールに戻り、男でなくその後ろの扉向こうに広がる緋を見た]
弔う暇なんてあるのかねえ。
ま、やりてえなら止めねえよ。
[ポケットに親指を引っ掛けて細まる隻眼を見る]
そう、使者とやらが二人、それに協力する者もいるらしいな。
そして番人はソイツらじゃなかったってことだ。
[廊下で女たちと別れた後。
探し物は見つからず、結局はキャロルに教えられた水場の布を持って部屋へと戻った。
包帯の下にあるのは、縦横無尽の引っ掻き傷。
それは包帯に覆われる全域に及んでいた。
そこにあるものを隠そうとするかのよに]
……ったく。
[腕を覆う紅、それを拭いもせずに白で覆い隠した後、眠りに落ちた]
[やがて呼び込まれた目覚めは気だるい。
何か、夢らしきものを見た気もしたが、定かではなく。
重たい息を吐き出しながら身を起こし、ふらりと外へ出た]
……なんだ……これ。
[何がどう、と。
説明できる訳ではない、異様な感覚。
しばし躊躇った後、それを感じる方へ――玄関へと歩みを進めた]
埋めるか燃やさないと腐るぜ
よけいに酷い臭いになる
[戻ってきたケネスに言う]
番人は単なる被害者というわけか
武器になりそうなもんを探してこないとな
[言いながらも、男は刃を離したことがない]
[黒の衣の内にある]
[放置したなら腐るまで生きる気の男に口を歪める。皮肉めいているが笑みの形]
限られた手の内を減らす馬鹿なら狩るのも楽だがな。
終焉の幕が切って落とされた…とかあのキザな男なら言うのかね。
俺にゃ単なる宣戦布告にしか見えねえがな。
[重い息を吐く男から、聞こえた足音の方を見る。瞬く蒼氷にぎらつく目を向けた]
なん……だ?
[口をついたのは、惚けた声]
……一体、何、が。
[外気が呼び込まれ、冷えた空間には、薄れはすれど、何のものかは察しのつく臭いが漂っていた。
蒼氷はやがて、場所に不似合いな布団へと向いて再度、瞬き。
それから、向けられた視線の主へ問うような眼差しを向けた]
何があったか、アンタは本当に知らねえのか?
[ナサニエルを運んだ広間ではすぐに踵を返したので記憶はないに等しい。疑いの目を持って包帯に手を伸ばす。猛禽の爪に似た動き]
……どう考えても異常な状況で、知っている事をわざわざ聞くほど悪趣味じゃ……。
[悪趣味じゃない、と言う言葉は途切れる。
左腕へと伸びる、手の動き。
意識よりも先に身体が反応し、後ろに向けて飛びずさっていた]
……見掛けによって、か?
荒っぽいな、あんた。
[隠さず舌打ちし、距離を詰める]
死体が転がってて手負いのヤツがいる。疑うのは当然だ。
見せて下さいとでもお願いすりゃ見せてくれるのか?
[制止の声がかかるより早くその腕を掴もうと動く。欲するのは緋の一滴で十分。包帯の上から力づくで得ようとする姿は言われるままに荒っぽい]
そういわれてもなっ!
こっちは、ここに来た時から手負いなんでね。
それを理由に疑われても、納得はできんかな!
[言って信じるとは到底思えぬものの、それでもそれは自身の真実。
傷を持つ理由、それを癒すのを厭う理由は霞の奥ではあるけれど]
[ただ、左腕を他者の目に晒すのはできぬ事、と。
それだけは確たる意思としてそこにあるが故に。
腕を掴もうとする動きをかわすべく身体を低く構え、大きく横へと跳んだ]
[ハーヴェイがやってきて、問いかけに答えようとした矢先、先に問いが返る]
[暫し二人をみていたが、近付くとケネスに告げた]
そいつのは、確かに昨日からあったぞ
お前もいつまでも治療しないから悪い
[増えていてもわからないがと、口にはしないが]
[ささやかな晩餐の後は片付けをしてから自室とした部屋へ戻り。しばしの休息を取る]
[夜明け後。目は自然と覚めた。鏡が無いまま身嗜みを整え、出来る限りチェックをすると部屋を出る。ナサニエルとの約束を果たすべく彼を探そうとするが、部屋がどれか分からず、ましてやそこにまだ居ると言う保証もない。おそらくそれはナサニエルも同じだろうと、予測がつけやすいであろう広間へ向かうことにした]
[階段を降り、まず辿り着くのは全ての廊下に通ずる玄関ホール。そこまで来て、ようやく静かな騒ぎに気がついた]
……ちょっと、貴方達何やってるの!?
[相対するケネスとハーヴェイ。険悪なムードであることは直ぐに見て取れた。そちらに目が向いているためか、その先の惨劇にはまだ気付いて居ない]
……はいはい、俺が悪うございました。
[クインジーの言葉に、不機嫌な声でこう返し]
そちらさんに因縁つけられた、としか言えんが。
[上から聞こえたシャーロットには、それ以外に返せぬ答えを]
因縁って……何かあったの?
[階段を降り切って三人が居る傍まで近付く。表情は訝しげなものとなり、それぞれの顔を順繰りに見やった]
来た時からだと?
だったら余計にやばいだろうが。
手負いの獣ほど性質の悪いもんはねえよ!
[クインジーの肯定と何より割って入る女の声に動きを止める。二日酔いの頭に甲高く喚かれるのは微かに残る苦手意識]
ったく、煩そうなのが来たぜ。
オイてめえ、後で覚えてろ。
[ハーヴェイにチンピラじみた捨て台詞を残しその場を去る。向かうのは*食料の得られる場所*]
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