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─ →広場─
[再び広場に戻って来ると]
[周囲を注意深く見やり、耳を澄ます]
[そこかしこで自衛団長の失踪は噂になっていて]
[自衛団員もまた見回りをしながらその対処にあたっている]
…隠したところでいつか露見するもんなのにな。
御苦労なこった。
[露見させる側の男は、自衛団員の行動を鼻で笑うのみだった]
[もちろんこれを聞き咎められるのは面倒なため]
[その声量は周囲に聞こえぬように潜められた]
うん、ふたり。
そうだなぁ――…
[チラリ、横目でふたりを見る。
アーベルの姉と、露店の少女。]
またオレが呼び出しするなら、ベッティのが楽かなぁ。
[呟きを零す。]
─広場・噴水傍─
[再び噴水の段差へと腰掛けると]
[短くなった手巻きタバコを摘まみ、弾いて中空で燃やし尽くす]
[巻き添えで燃えた舞い散る花弁も、この時ばかりは芳しい薫りではなく]
[花弁の焦げる匂いと渋みの交る薫りが混じって宙へと立ち上った]
……味も薫りもねぇのがネックだな、この媒体は。
[そんな愚痴を漏らしながら]
[胸ポケットに戻した手巻きタバコを取り出し口に咥える]
[指を鳴らし火を灯し]
[立ち上るのは文字通りの*紫煙*]
―食堂―
[脂でテラつく唇をぺろりと舐めて、
両手で水のたっぷり入ったカップを持ちごくごくと飲む。
決意の表れのような言葉は、果たして回りにどう捉えられるのかという心の内は秘めたまま。
俯いたまま上目で周りを一度見渡して]
じゃ、オレもうひとっ走り行ってくる。
[カタン、と元気良く立ち上がった。]
ベッティ…
ああ、露店の。
[楽師見習いの青年を目に入れつつも、聞こえた名前に暫し思案する。
肩の隼はいつも通りそこにいただろうか]
一番確実だろうね。
彼女ならそう抵抗もあるまい。
[やがて軽く目を伏せ、そう結論づけた。
そのまま、もう1人の言葉を待つように沈黙する]
ん。
ゲルダがそれでよけりゃ、オレがまた誘い出すよ。
[抵抗、という言葉には少しだけ下唇を噛む。
首から提げた財布の中には、小さな針。]
―大通り―
[細い道を抜けて、大通りに出た。
日は傾き始めていただろうか。
漸く光を浴びて安堵したかのように息を吐いた]
さて、どうします。
女性陣に報告を?
[一息置いてから、2人に向けて*切り出した*]
じゃ、なんか見つけたら教えてな!
[少女は人ごみの中へと駆けて行く。
――食べた分のコインは置いていかなかったけれど
きっと誰かが払ってくれるのだろうなんて思って。
マフラーに鼻先まで隠し帽子を目深に被り
少女は噂話しに耳を傾ける。
どうやらやはり、目撃者は居ないようで。
人知れずマフラーの下、口元は僅かにその端を*上げた*]
―自宅―
[養父の待たぬ自宅へと帰る。
屋根裏部屋に並べられた、キラキラと綺麗な硝子の瓶やランプや小箱。
小さな灯り取り窓からの光に色を変えるそれらを目を細めて見てから
灯り取り窓の隙間に手を差し込んだ。
小さな紙が、挟まれている。
そっとそれを開くと、
『確認した』
と、ひとことだけが目に入る。
そしてそれは、読み終えるとさらさらと砂のように崩れてしまった。]
―大通り―
[アーベルと下街の住人の会話はやはり見ていただけ]
[行こうというライヒアルトに頷きアーベルにも促す]
[ついでのように軽く肩を一度だけ叩いた]
ああ、戻ったことは伝えておかないとな。
向こうで何か掴めた可能性も皆無ではないのだし。
[表通りに戻ればやはり小さく息を吐く]
[ライヒアルトに切り出されれば頷き答えた]
[ただ内容とは裏腹に期待はしていないという口調で]
確か団長さんの巡回ルートを話していたと思ったが。
今はどの辺りにいるだろうね。
[どう思うと*尋ねた*]
[だからか、少女の声に気づくのは遅く、]
あ、カヤちゃん――
[席を立ち後を追えど、小柄な姿は人混みに消えていた。
吐息を零して一先ず戻ろうと振り返り、ぴしりと固まる。
その反応の仕方は、流石姉弟と言えたかもしれない。無論、誉められはしないが。]
[エリザベートの視線の先には、楽器職人の姿があった]
[4人で探索をしていると、自警団の男から声を掛けられる
だが、その態度は横柄にして不遜
トップが居なくなっただけでここまで崩れるか、と内心で呆れ返る
するすると降りてきたカヤが男に啖呵を切るのをジィと見ていたが]
でしたら、有言実行
素人相手に時間を潰す暇があるのでしたら、さっさとギュンターさんを見つけ出して、その不安を取り除けばいいんじゃないかな?
[にっこりと笑顔を見せながら、自分も挑発してみる]
これは、その――
[問答無用とばかりに引っ張られていく彼女には、
カヤの分だけでなく、
自分の代金を払うことも*叶わなかったのだった*]
─裏通り→大通り─
[肩を叩かれ、一つ、頷く。
伸ばした前髪の奥、その表情は窺い知れず。
ただ、裏通りの住人たちにひら、と手を振り、先に立って歩き出した。
周囲を揺らめく風は、さながら気遣うかのように。
大通りに出たなら、今後の事を問われ。
一つ、息を吐く]
……そう、だな。
色々と、心配なとこもあるし。
[零れた言葉は、風が運んだ『声』からの予測に基づくもの]
状況的に、自衛団も浮き足立ってそうだし。
……ちょっとの事で、騒ぎになるかも知んない。
[言葉自体は、多少唐突やも知れないが。
裏通りに入る前の自衛団にかかわるやり取りの事もあれば、さほど不自然さも出ないやも知れず。
昨日の自衛団の詰め所でのやり取りは、場にいた団員が話せばすぐに知られるだろうけれど。
それでも、どこに信を置くかの見極めが定まらぬ内は、それに関して語る事は躊躇われた。
その場にいる一方が、心情的には信を置きたい相手であっても]
とりあえず、姉さんたちとの合流と情報交換は、そっちは二人に任せていいかな?
俺は、俺のルートでもう少し当たってみるから。
[軽い口調でこう言うと。
二人の返答も聞かずに駆け出し、近くの屋根へと飛び上がった]
[男が挑発に乗って襲ってくるようなら相応の対応に出るつもりだったが、予想に反して先に飛び掛ったのはカヤの方]
ちょ………カヤちゃん、何してるの!?
[そう言って止めに入ろうとするが、動き出すのはエルザの方が早かった
所在なさげに成り行きを見守っていたが、後から現れたヴィリーの言葉で顔を真っ赤にした男か立ち去っていくと、ふぅと息を吐き]
……まさかギュンターさん居ないだけでここまで酷くなるとはねぇ
これは、いよいよ今の自衛団は頼りにしちゃいけないね
[苦笑いを浮かべて、居合わせる面々にそう言う]
─屋根の上─
[呼び止める声はあったかどうか。
あったとしても、止まる事はなく、駆け出した。
途中、立ち止まって、波長を合わせた大気の位置を辿る]
……は。
信じたい人信じ難くて、一番信用できなさそうなとこがアテになるとか。
なーんか、やな状況。
[それでも、と思うのは。
一年前の悔しさを払拭したい気持ちが強いから。
下街で出会った友。ハーモニカの元の持ち主。
護れたかもしれないのに、護れなかった悔いは、今でも消えていないから]
…………。
[しばし、目を伏せた後、ふる、と首を振り再び、駆け出す。
今目指すのは、広場]
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