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老女 ゼルマは、隠居 ベリエス を心の中で指差しました。
[少しだけ、旅人は黙り込みました。
とんがりぼうしを引き下げます。]
旅をしているとな。
色々なことがあるから、自然と疑り深くなってしまうものだ。
村の人がどうかは、分からないけれど。
[小さな声で答えます。]
ドミニクや、どうか間違えるでないぞ。
自分のする事の意味を、ようく考えるのじゃぞ。
[斧の刃が、ぎらぎらと光っています。
あの斧を振るったら、どんなものでもたちどころに切り裂かれてしまうでしょう。
人狼でも、人間でも]
ああ、こっちこそよろしくな。アナ。
[ペコリとお辞儀をした少女に羊飼いは笑いかけました。葬儀が終われば、その約束通り、少女を連れて牧場へと帰って行くはずでした**]
ええ。
ですから人は、神様の手の届く所で暮らすべきなのですよ。
[牧師は少女に告げると、羊飼いを見やります。
彼が少女に危害を加える者でないことを神に祈りながら]
[この時、ゼルマは年寄りなら先が短いのだからまだましではないかと考えました。
しかし、自分でなければそれはベリエスのことを指します。
元の投票先がドミニクになっていて、ドミニクにはもっと村を守っていてほしいと思い、悩んだ末にベリエスに変えたのでした。]
[アルベリヒと視線が合わないのが、わざとなのか。
それとも帽子のせいなのかはドミニクにはわかりません。
涙もろい羊飼いが目元を隠しているのかもしれないからです。
木こりはアルベリヒの羊を見ます。
狼に怯える羊は人に化ける狼にも怯えるか考えるのでした。]
羊飼い アルベリヒは、老女 ゼルマ を心の中で指差しました。
[小さな声の答え。
疑り深くという言葉に、少し眉が下がりますけれど。]
……ありがとう、ルイさん。
[続けられた言葉には、本当に、嬉しそうに笑いました。]
お引止めしてしまって、ごめんなさい。
それじゃ、わたくし、参りますね。
[葬儀は終わった。
散り散りになる人々を見送りながら]
牧師様、本当にアルに任せて良いのでしょうか。確かに宿も女将さんが居なくなって大変ですけど、部屋もありますから……。
〔アナは納得がいかないといった顔をしながら、メルセデスを見る。〕
神さまは手を差し伸べてはくれるけれど、
なんでもしてくれるわけじゃ、ないと思います。
道を照らされる前に、じぶんで歩く足を持たなくっちゃ。
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