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─自宅─
[頬に触れる冷気と、微かな痛みに顔を顰める。
その間に、棘は離れ。
痛みの元に触れた手には、微か、濡れた感触]
……で。
お見立ては、如何に?
[史人が血を口に運ぶ様子にも、表情は変わらない。
以前、これよりも更に凄惨な様を間近で見たが故か]
……死者が?
[続いて説明されるも、要領を得ない返事をするばかりに。
けれど、最後に告げられた言葉にあからさまに落胆の色を示した]
…それじゃあ、手伝って貰えないんだな。
早く千恵を探したいのに……。
[狙われやすいなら、探しに行けば逆に危険に晒すことになるのかと。
オレの頭は既に従妹のことでいっぱいになっていた]
[神楽の説明は納得がいくものだった。]
それでは、その憑魔っていうのを浄化すれば皆助かる…。
[復唱するように呟いて、続いて聞かされる神楽の素性]
そんな大事なこと、隠さないで大丈夫なんですか?
[かけるのは心配の声、それと同時に一つ思ったこと]
静音さん…、その憑魔っていうのになると…どうなるんですか…?
その人って助けられるんですか?
[神楽の言葉に、頭が痛くなってくる。]
…………いや、ありえねぇから。
てか、もうお前しばらく黙っとけ。
[そう言って、神楽を無視して話を進める。]
で、だ。……ウサギのリュック、ねぇ?
一応、他の特徴も聞いときたいんだが。
―住宅街・路地―
[千恵ちゃんがこくこくと頷く。僅か遅れてうさぎも揺れる。
なんだかそれがおかしくて、小さく笑った]
うん、伽矢も瑞穂ちゃんもきっと、おうちにいるよ。
おうちは怖くないよ。
(……誰にも侵入されてなきゃ、ね……)
[理性を失った人々が、不法侵入を気にするとは思えなかった。
力が篭った姪の手をこちらもしっかりと握り、歩き出す。
数冊雑誌の入ったビニール袋は、反対の手にぶら下げたまま。
襲われればこれで殴りつける事もできるだろう]
[そこまで言うと、綾野が驚いたような顔で神楽を見つめた]
『……っ。
神楽さん。憑魔というのは表から見て分からない人もいるのです。みだりに自分の立場を明かすのは辞めなければ、命に関わります』
え?あ、そうなんだ。
さっきのような分かりやすい奴だけじゃないのね。
まあでも、心配ないっしょ。
私はここにいる人は信じるよ。全員知った仲だし。
『憑魔とは人の心の闇にはびこるモノなのです。
今までと同じようには行きません』
うん。それでも、私は信じるんだ。やっぱ、信じないで疑念を抱くよりは、信じていたいし。
/*
あいかわらず、そういうこと言う人に限って狼包囲網が敷かれていたりする。
まあ、わかってやってる人もいるんだろうけど。
『ヨウコはダメ。壊れてしまうから』
[どういう意味かは分からない。
ただそれは逆らいがたい意思として心に染み込んでゆく]
『桜の花に身を委ねて』
[捧げるのではなく、委ねて]
―住宅街―
[タッタッタと走る。
広い道を走っていると何となく怖かった。から、気配の確認もせずに路地の一つへと入り込んだ]
っ。
[前方に大小の人影。
奥の方が暗いから、相手の顔までは分からない。足が止まる]
[落胆に俯いていたが、白銀の髪の人物に訊ねられ、オレは顔を上げる]
千恵は、身長はこのくらい。
髪が金髪で、今はピンクの服を着てるはずだ。
[自分の身長と比べての従妹の背丈を伝え。
外見の特徴も伝えた]
ああ、まったくよりによって。……神楽が司ねぇ。
うわぁもう、めんどくせーな。あらゆる意味で。
[どうにも溜め息しか出ない様子。]
つーかうぜぇ、この女うぜぇ。
さっさとどっか行けよマジで。
[手を貸してくれると踏んでいた相手がなかなか動かないのに苛立ちを覚える]
瑞穂も司っぽいし、こいつらまとめて喰っちまいてぇな。
[千恵の外見を伝える伽矢、携帯のことを思い出し]
あっ、私の携帯に千恵ちゃん撮った写真があります。
[圏外表示のままの携帯を開いて千恵と伽矢が並んでいる写真を雪夜に見せた。
千恵の方はうれしそうにこちらに満面の笑みを浮かべながらピースをしていた。]
そっちの女の子です。
[伽矢の言葉に]
んや。
せったん持っていっていいよ。だから、大丈夫よ。
私が危ないってだけだから。
[そして、瑞穂の言葉には]
だーいじょうぶ。私はみずちー達を信じてるからさ。
憑魔に囚われた人間の行く末、か。
とりあえず、憑魔になったものは、生者の血肉を食らう存在になるらしい。実際襲われたし。
助けられるかどうかは……難しい、としか言いようが無いかな。
私に出来るのは死者の浄化だけだから、あまりたいしたことできないんだよ。
どうやら憑かれてはいないらしいな。
……今のところはだが。
[促しに視線を合わせて告げた。
二言目はやや抑えた声で]
あぁ、傷のほうはすぐ直るから心配するな。
[聞かれてもいないことを付け足してから、背を向けた]
てめぇが邪魔なんだよくそ女。
なぁ、綾野だけ連れ出せそうか?
ぜってー離れねぇぞ、このくそアマ。
[表で殊勝にしている分、苛立ちは募るばかり]
―住宅街・路地―
[反対側の手には絵本。うさぎは背中で動きにあわせてひょこひょこしている。
百華が何でか笑っているのか分からなかったが、笑みにつられてこっちもはふり、微笑む。
伯母の胸中で不安やら心配やらが渦巻いている事などしらず。
知った大人と一緒にいられると安心してくる。
怯えはちまりと残るものの、だいぶ元気よく歩き出した。]
あっ。
[と同時に前に人影が見えた。
とたんにびくっとうさぎが止まる。]
/*
こっちが必死で移動させようとしてるのに気付かないで頑なとかマジ勘弁。
綾野襲撃のために離したいんだからさ。
せめて綾野動かすのもうやめてくれ。
それはうれしいですけど…、
[綾野の言葉に神楽の返答、思うところがあったがそのことは口にはださず。
代わりにもう一つの質問をした]
その憑魔になったら、その、身体能力あがったりとかそういうのあったりするんですか?
[ずいぶんと自分でも具体的なことを聞いた気がした]
― 住宅街 ―
[千恵ちゃんの手を引いて、歩いた。
できるだけ彼女の足に合わせようと、急く気持ちを押さえゆっくり歩く]
『タッタッタ……』
[規則的な足音にぴくりと止まる。
足音が近づいてきて、主の影と共にぴたりと止まる。
私は雑誌の入った袋をしっかりと握り締めた]
離れちゃだめよ。
[隣の姪に小声で言うと背中に庇い、相手の挙動をじっと見た。
雲が途切れ、さした月明かりに薄っすらと顔が見える]
……あんた、コンビニの子?
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