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―公園―
[落胆したようなノブに、力になれない事に申し訳なく思うが、どうすることも出来ずに。礼には今度はこちらがゆるく首をふる。
戻ってきたジョエルに気づけばそちらを見、話す町の様子を聞いた。
予想していたより悪い状況に、表情は翳る。]
…そんなに。
[人は死んでしまったのかと。
マイルズの提案には無言で頷き。
他の者がどう応えるか待っていた間に、無機質な声が聞こえた。]
―――8人。
[翳りを帯びた表情のまま、ぼんやりと顔を上げる。そこに驚くような色は薄い。
ジョエルの報告から、近しい予測は出来ていた。ただ思った以上に少なかったが。]
―住宅街・アヤメの家―
嘘…だ、だって。
リディ、は…室長は…?
―…っいや、嘘よ…!!
[生存者が八名だけ、という知らせに思わず耳を塞いでしゃがみこみ。
瞳をきつく閉じたものの、堪えきれない涙が零れた]
[それでも無機質な命令に大人しく従う性はズューネ故か。]
…参りましょう、集会場へ。
[小さくぽつりと呟き、3人を促した。
ふと――8人の名を思い返すと、メイドの彼女の名前がそこにないのに今更気づく。
彼女も死んでしまったのかと。
思えばようやく、哀しげに表情が歪んだ。
それでも―――泣く事は出来なかったが。]
―住宅街・アヤメの家―
ナターシャさんっ。
[悲鳴のような声に慌てて近寄る。パニックになる前に司書の反応が起きたので、ギリギリで踏み留まれた。
困ったような顔をして家主である作家の方も見た]
……。
[気の利いた台詞なんて浮かんでこない。
困ったまま、宥めるように司書の肩へと手を伸ばした]
―住宅街・アヤメの家―
―…ぁ…。
…ごめん、なさい…私……
[名を呼ばれ、肩に手が置かれると我に返って。
顔を上げると困ったように心配そうなレッグとアヤメの顔が目に入り、泣き顔のまま申し訳なさそうにぎこちなく笑み。]
………行かなくちゃ、ね。
[先の指示を思い出し、私事を振り切るようにゆるりと頭を振って]
―住宅街・アヤメの家―
「そんな大層なことじゃないから」
[少し照れつつ作家に答えたのはつい先ほどのこと。
束の間の平穏は瞬く内に通り過ぎてしまった]
……集会所、行かないと。
[非常時のマニュアルはザッと目を通してしかいない。
放送の内容を確認するように言った]
―住宅街・アヤメの家―
[しばらく歩いて、アヤメの家に人のいる気配を感じて、
ドアの前にいくと呼び鈴を鳴らした]
アヤメ、レッグ、ナターシャいるんだろう?俺だ。
あけてくれないか?
[中に呼びかけた]
―住宅街・アヤメの家―
もう、大丈夫。
ありがとう…ごめんね、取り乱して。
[レッグに落ち着かせてくれた礼を言い立ち上がる。
集会場に行こうと、未だ中身を出さないままの袋を抱えて出ようとすればチャイムの音と、知っている声が聞こえ。
瞬きをして、名を呼んだ。]
*パトラッシュ、さん。*
―住宅街・アヤメ宅―
[玄関を開けて、顔をのぞかせたアヤメの顔色はあまりいいものとはいえなかった]
アヤメ、大丈夫か…?
レッグとナターシャも中にいるな……?
[アヤメを気遣った後に、ゆっくりと落ち着いた声で語りかけながら、
すぐには玄関の中には入ろうとはせず中に促されればそれに従い、肩にかけたままのアサルトライフルはそのまま玄関口に置いた]
―住宅街・アヤメの家―
いや…。
[司書の謝罪には首を振り、聞こえた声に玄関を見る。
大丈夫と言われてもまだどうしようかと躊躇う間に、ふらつきながらも家主が先に玄関へと立っていた]
ラッシュ。
いるよ。ナターシャさんもここに。
―→集会場―
[集会場までの道のりは、まるで酷い道だった。
歩きながら死体の顔を見てまわり、彼女を探したが、集会場までの道で見つけることは出来なかった。
時折動かされたような跡が残る死体に、だれかが避けたのだろうかと思ったがそれだけだ。
血塗れた道を通り、ようやくたどり着いた集会場にも死の匂いは濃い。
先にたどり着いて様子を知っていたジョエルはともかく、他の二人の反応はどうだったか。
支え手が必要なら貸すようにして、とにかく集会場へと入り、休める場所を探して入り込んだ広間の大きなモニターに、非常事態のマニュアルの内容が映し出されていた。
そういえば、マニュアルの類は一度も目に通す事はなかったとモニターに走る文字を読むと。]
………え?
[一瞬、ぽかんとした風にモニターに書かれていた文字を見る。
その内容をようやく理解して顔色を変えた。]
なんで、なんでこんな………!?
殺し合いみたいな事………!
[そこには無常の言葉が並んでいた。]
―― 住宅街・自宅 ――
うん。 ……大丈夫。
ラッシィ、無事で好かった。
[蒼白であっても、笑みを忘れぬようにと
ふぅわり笑みでパトラッシュへと返し。]
……。
[玄関口に置かれた銃器に視線を遣って
口許に手を当てた。
軽い眩暈と吐き気を堪えるために。]
(あーあ、だからマニュアル見なさいって言ってたんだけど…。
でも貴方らしくて良いかしら?)
[驚きを他所に、『私』が、小さく呟いた。
その声は、始めの頃よりずっと小さい物になっていた。]
―住宅街・アヤメの家―
[家の中に入ると今までの外の様子が嘘のように日常が身近に感じられた]
レッグもナターシャも…、無事でなによりだ。
[レッグとナターシャの姿を見、それぞれの返答が聞こえればそう声をかけて]
アヤメ…
[心配そうにその名前を呼び、アヤメを見上げた]
―住宅街・アヤメの家―
ラッシュも。
[無事で良かったと言う声には少し安堵が混じっていたが]
放送は聞こえた。
移動しようって言ってたとこだ。
[その先に待ち受けている事態を理解していなくても。
続いた声は常よりもずっと硬いものだった]
……。
[アヤメの様子に視線を追い、ライフルの銃身を見つける。
更に眉が寄るも、結局は沈黙を通した]
―― 住宅街・自宅 ――
……ん
[見上げる姿は現状に不釣合いな愛らしさ。
普段なら思わず手を伸ばしてしまうのに。
笑みを造ろうだけで、精一杯。]
大丈夫……
[発した声が掠れている事に後から気付いて]
あは。
[あえて思い切り明るく笑って誤魔化した]
わた、
[名を呼ばれる度に
私がどんどん遠くなっていく]
わたし、は
[菖蒲はどんな色で
どんな華だったのか
私はどんな顔で
どんな声だったのか]
……名無し……
[聴こえていた声を、繰り返す事しか出来なくて]
―集会場・広間―
[がり、と音がなるまで指を握ると、手のひらに痛みが走る。緩め離すと爪の跡が残っていた。
何度もモニターに表示された文字を読むものの、何が変わる事もなく。顔色の変わらないまま、その場に暫く立ち尽くす。
誰に声をかけられても、暫くは無言のままだった。]
…時間、までは。
自由に動いてもいいんでしょうか。
[誰が残っていなくても、独り言のように呟いて。]
…私、少し外に出てきます。
時間までには戻ります。……探し物があるから。
[近くに居た者にそう断りをいれて、一人集会場を*出て行った。*]
そっ、か
[は、と自嘲する声]
ねぇ、アリシア?
[思えば初めて名を呼んだ気がした
眩暈が、吐き気が、酷い]
……私は、ナナ。
[名無し、ならばいっそ。そのままで。]
そう、呼んで。
[サイキッカーの私に、名なんてきっと、無い。]
―住宅街・アヤメの家―
すぐで…大丈夫か?
つらいようなら少し休んでからでもかまわないと思うが…。
[レッグの言葉に、アヤメの様子をちらりと見ながら。
視線が向いた先には気づき]
ああ…、すまないな…配慮が足りなかったか。
[ナターシャもそれに気づけば反応していたかもしれない。
一般の者にとってはただでさえ銃器など馴染みの薄いもの、その中でも特に殺傷力の高いそれは刺激が強すぎたのだろうと思った]
アヤメ……
[無理に取り繕う様子に体を数回すりつけた]
少し休んでからいくか。
[集会場の前の様子は今のまますぐに行くには刺激が強すぎるから、そう判断した]
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