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[軽く、首を横に振る。
熱くなったら負け。
そんな言葉が頭を過ぎった]
……いずれにしろ……俺は、死なねぇ……。
[言い聞かせるように呟きつつ、懐に入れた短刀を取り出して見つめる。
基本手段である、糸での窒息。
それが適わない際には、短刀や短剣を利用した接近戦での一撃必殺を試みるのが、彼の殺り方。
それを見透かしたように置かれていた短刀]
……こんな馬鹿げた騒ぎのために……死んでたまるかよ。
[いつもなら、扉が開いた時点で気づきそうなもの……いや、それ以前に、他者に気取られぬようにしているはずなのに。
それを、一瞬とはいえ怠ったのは、やはり、直面した事態に多少なりとも動揺していたのかも知れない]
……え?
[思わず上がる、呆けた……『らしからぬ』声。
はっと振り返れば、そこに立つ姿に、一つ、瞬いて]
…………カティア…………?
[見間違えたのは、室内の薄暗さ故か、他に理由があるのか定かではないものの。
知らず、紡いだ名は全く別人のもの]
[呼ばれた名に心当たりなどあろうはずもない。]
アーベルさん?
どうかなさったのですか?
[少し瞬き、尋ねる。
普段と違う様子なのが、心配で。]
あ……ああ。
シスターか。
[再度の呼びかけに、我に返る。
数回、首を強く振って、一つ息を吐き]
いや……なんでも。
……調べものか?
[問いかける調子は、いつもと変わらぬものに]
……何やってんだ、俺。
[心の奥底でもらす、呟きは呆れを帯びて]
カティアは、俺が消したのに。
[だから、いるはずはないのだと。
繰り返す]
…yes,少し。
[棚を見ながらそう言うと、少し、悩んで、...は彼の方に歩いた]
本当に何でもないのですか?
体調を崩されたとか、そのようなことは?
[心配そうなまなざしを]
ああ。
まあ、蔵書はそれなりに揃ってるから、多少は役に立つだろ。
[少し、という言葉にこう返して。
続いて投げられた問いには、天井へ視線を彷徨わせる]
……何でもねぇよ。
それに、そう簡単に体調崩すほどヤワかったら、裏道で生きていけねぇっての。
そうですね、とても多いと思いますし。
…きっとたくさんあるのでしょう。
[...も釣られるように上を向く。青い瞳が捉えるのは、特別何のかわりばえもない天井。
すぐに視線をアーベルへと戻すと、心配そうな眼差しに変わる。]
そういう様子には見えませんでした。
…それに、あなたは少しくらい辛くても、何もいいそうにないとおもいますけれど。
[言いながら、熱を確かめるためにその額に触れようと手を伸ばし]
無駄なもんも紛れてる気がするがな。
あと、訳のわからん物とか……。
[言いつつ、先ほど投げ出した日記に視線を向けて。
それから、投げかけられた言葉と共に、近づく気配に。
反射的に、後ろへと、跳ぶ。
……そして、違和感]
『……なに?』
[手を避けられる程度に軽く、跳んだだけのつもりなのに。
開いた距離は、予想よりも大分、広かった]
[熱を測ろうと思った手は宙で留まり、少し悲しげな笑みが零れた。]
そんなに、お嫌ですか?
心配なさらないでも、熱を測るだけですよ。
―過去―
[ギュンターに話を聞いた晩、広間を出た彼が向かったのは書斎だった。
それは今彼が手に入れる事の出来る情報を、出来る限り集めようとしての行動。
書斎に置いてある本の、巧妙な選び方。
机に読んでくれと言わんばかりに置いてある、恐怖を煽る言葉の連なった日記。
そして何よりも、ここに訪れた人物―あの少年―を思わせる形跡を見て彼は満足げに微笑んだ。
さして時間を掛けずに書斎を後にした彼は、彼の為に用意された部屋へ。]
[自分の異常な跳躍に、一瞬取られていた意識が問いかけで現実へと返る]
べ……別に、心配とかじゃなくて。
[数瞬、間を置いてから、言葉を返す]
恐らく、今ここにいる中で一番丈夫なのは俺だから。
その心配は、他所に向けろ。
[悲しげな笑みに気づいた様子もなく。
ただ、早口にこう言い放つ]
あなたがそう思っているだけでは、安心できません。
一番無理をしそうなのはあなただと思いますし。
確かに体調を崩した人はいらっしゃいます。
でもそういう方は余計に注意されると思います。
元気だったところに突然風邪なんて引いて、やせ我慢をして悪化するっていうことも、けっこうあるんですよ?
[早口の様子に、諭すようにそう言って。]
そうじゃないと、料理に砂糖をいっぱいいれてしまいますよ。
[思いついて、...はそう言う。はっきり言って他者へも迷惑だろう。]
あー……そういう問題じゃなくてだな。
と、いうか、それは一体どんな脅しだ。
[ぐしゃ、と前髪をかき上げて、嘆息。
どうにも調子が狂ってならないのは、きっと気のせいではないだろう]
『ったく、神父と言い、このシスターといい……あわねぇ』
[何となく虚しいものを感じつつ、*はあ、とため息*]
でも…砂糖を入れてもわたくしたちにはあまり味がわからないかもしれませんね。
砂糖よりも甘くておいしいものを…知ってしまったから。
食べ物を粗末にしてはいけませんのに。
['vox', it likes mutter to myself.
まるで独り言のようなコエ]
―過去―
[作り溜めていたグリューワインを温めて飲む。
少しアルコールが飛んだか。ラム酒を加えて飲めば、香りは部屋中に広がった。
目を細める。]
[と、扉を叩く音。
カップを机に置くと、静かに微笑んだ。
彼には、扉の奥に居る人物が分かる。]
お入りなさい。アーベル。
どういう脅しって…
食べることは重要ですよ?
[笑いながら、...はそう言った。
教会ですごしていたのだから、...とfatherの、彼にとっての相性の悪さなんて当然だったりするわけで。]
それでは、体調が悪くなったらすぐに仰ってくださいね?
…我慢していらっしゃるようでしたら、甘いもの攻めにいたしますから。
[なんだか疲れたようなアーベルにそう言って、...は棚に向き直る。
たくさんの本。
その一つ一つの背を眺める。]
―過去―
[椅子に腰掛けたまま、彼はアーベルの背中を見送った。
それも、満面の笑みで。
彼が部屋に篭っていた間に行われていた事と交換に、彼はアーベルが求めた知識を与えただろう。
多くの事を語られ、彼は時を知った。
彼の部屋の厚いカーテンは、彼の外套と同じ様に光を飲み込むものだったからだ。]
[綺麗に製本されたノート―と呼ぶにはやや豪華な物だが―を再び開くと、彼はそれに筆を走らせる。
踊る様に淀みなく、ノートは美しい文字で埋まっていく。
そしてまた時は流れる――]
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