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[ユリアンの渇いた笑いをなんとも言えず静かに見つめる。
去っていくのを視線で見送っていると振り向かれ]
・・・・・・えっ。
[言われた言葉に、変に手が泳いだ]
まあ……そうだろうな。
[「犯人は人狼」。その言葉に、一つ、頷く。
死体の状態を見た時から、それは既に確信となっていた]
いや、別に邪魔じゃねぇが……って、なんだよ、それ。
だから、何の勝負なんだ?
[それから、立ち去り際の軽口に思わず呆れたような声を上げつつ、前髪をぐしゃ、とかき上げて。
一つ、ため息を]
−部屋→西側階段→1階広間へ
[ややあって、しなやかな薄紫のアンサンブルをまとって部屋の外へ出る]
[手にしたバッグに、懐剣を忍ばせて]
[アーベルの「誰の話なんだよ」という言葉に]
う、うん・・・。
[僅かに戸惑いだけが感じられる声。
ユリアンの言葉に頬が熱くなりそうな気がして、なんとなく下を向く。
でもしばし考え、顔を上げた]
アーベル、笑ったら、可愛いんじゃないかな。
[無表情で淡々と言う]
─自室─
[その長い柄の月の刃を、隠そうともせぬままに、
ひらりと立ち上がればスカートがふわり。
部屋に置かれた人形の家には、ずたずたに引き裂かれた老人の人形。]
だれから おこして あげましょう
よいこは さきに
わるいこ あとに
[ひゅん…と、月の刃を振れば、暗い部屋の空気に、青白く光が残る。]
10人のインディアンの少年が食事に出かけた
1人が喉をつまらせて、9人になった
9人のインディアンの少年がおそくまで起きていた
1人が寝過ごして、8人になった
8人のインディアンの少年がデヴァンを旅していた
1人がそこに残って、7人になった
7人のインディアンの少年が薪を割っていた
1人が自分を真っ二つに割って、6人になった
6人のインディアンの少年が蜂の巣をいたずらしていた
蜂が1人を刺して、5人になった
5人のインディアンの少年が法律に夢中になった
1人が大法院に入って、4人になった
4人のインディアンの少年が海に出かけた
1人が燻製のにしんにのまれ、3人になった
……?
[困惑するような声に、やや、首を傾げ。
どうかしたかと問おうとした矢先に、言われた言葉]
……な……なんだ、それ。
[思わぬというか、思いもよらないと言うかな一言に、とぼけた声が上がる。
それが『らしからぬ』と気づく余裕さえ、どこかに落ちた]
3人のインディアンの少年が動物園を歩いていた
大熊が1人を抱きしめ、2人になった
2人のインディアンの少年が日向に坐った
1人が陽に焼かれて、1人になった
1人のインディアンの少年が後に残された
彼が首をくくり、後には誰もいなくなった。
[それを見たらしいイレーネにもアーベルにももう激しい動揺の色なんてものは見えず、和やかに話せていた。
きっと自分もじき落ち着いて、ああなれる。
やはり同年代に見えてしまう色んな事に慣れてなさそうなイレーネの泳いだ手、前髪をかき上げながら呆れた声を出すアーベル。
去り際の二人の様子を思い出して口元だけで笑みながら、自分にそう言い聞かせた]
(清潔なグラスで水でも飲めばすぐさ)
[台所に入ると、そこで思案顔のクレメンスを発見する]
…神父さま?
[思わずぽかんとする。
…まさかこの狭い台所で迷っている?
眼鏡がない時の彼だからありえるかもしれないと真面目に心配し、入って来た方を指した]
えっと、出口はあっちです。案内しましょうか?
[目が覚めたのは昼すぎだ。
怠惰な生活にすっかりなれてしまったせい、
というわけでもない。
歌がぐるぐると回って、離れない。
朦朧としたまま夜を迎えてしまった。
さすがに腹が減る。
好きな紅茶でも飲もうと、扉をふさいだ家具をどける。
緊張と興奮とで満たされた屋敷に、
家具をどける音だけが響く。
昨日までのそれは、
コミカルに響いていたはずなのに。]
(がたん、ごとん、がた、がたん)
[アーベルの動揺した声に]
なんだか、想像して、そう思ったの。
[むしろこちらが不思議そうに首を傾げる]
それに、アーベルが笑った顔見たこと、ないから。比べられないじゃない。
[扉を開ける。
隙間から吹き込んできた匂いは、彼の部屋に仄かに残っていたグリューワインの匂いをかき消した。
彼はその匂いを発する物を、確信する。
匂いの元は何処だ――]
―廊下―
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