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次の日の朝、自衛団長 ギュンター が無残な姿で発見された。
……そして、その日、村には新たなルールが付け加えられた。
見分けの付かない人狼を排するため、1日1人ずつ疑わしい者を処刑する。誰を処刑するかは全員の投票によって決める……
無辜の者も犠牲になるが、やむを得ない……
そして、人間と人狼の暗く静かな戦いが始まった。
現在の生存者は、青年 アーベル、旅人 ハンス、少女 ベアトリーチェ、研究生 エーリッヒ、職人見習い ユリアン、歌姫 エルザ、貴族 ミハエル、シスター ナターリエ、教師 オトフリート、神父 クレメンス、ランプ屋 イレーネの11名。
─自室─
[浅い眠りがふと破れる。
眠りに就くのが遅かったわりに早く目覚めたのは、昨日の話の影響か、それとも他に理由があるのか。
そのどちらかと問われれば、後者かも知れない]
……血の臭い……?
[馴染み深いと言えば馴染み深いそれに、身体が反応した、と考えるべきだろう。
起き上がり、軽く頭を振ってから右手首の銀糸を確かめ、ゆらりと部屋を出る]
─二階・廊下─
こいつは……。
[部屋から出れば、それはすぐに目に付いた。
隣の部屋──白紙の表札の掲げられた部屋へと続く、緋い足跡]
…………。
[表情が、険しさを帯びる。現れたのは、幻魔の冷たい瞳。
右手首の糸と、懐に隠した短刀。それらを確かめて。
気配と足音を忍ばせつつ、隣室の扉をそっと、開く]
─空き室─
[誰もいない、部屋。
それでも、その内装は豪奢である事に変わりはないらしい。
しかし、誰もいない部屋の中には、不自然な跡が残されていた]
……家捜しでもしてったのか?
[まるで、何かを探していたかのような、跡。
誰もいないはずの室内においては不自然な様相が、そこに織り成されていた]
…………。
[蒼く、鋭い瞳で室内を見回した後、再び廊下へ。
それから、緋い跡をたどり、階段へと向かう]
─東側・階段─
……あれは。
[階段にたどり着き、下を覗き込んだ時。
それは、鮮烈な色彩を伴い、視界に飛び込んできた]
あの男……?
[周囲を見回す。
誰もいない。
それを確かめて、銀糸を解く。
ヒュンっ! という大気の唸り。
糸を空間に走らせ、階段の周辺の空間に、危険らしきものがない事を確かめる]
……よし。
[小さな呟きの後に糸を元に戻して、床を蹴って跳躍する。
緋の残る階を伝わずに、一気に階段下へと向かうために]
─一階・東側階段下─
……こいつは……人の殺り方じゃ……ない?
[階下に飛び降り、血溜まりに沈む男の身体を確かめる。
人の死体など、見慣れたもの。
恐れはない……が、しかし]
喰われてる……。
[その屍の姿に。こんな言葉が口をついた]
[所々の肉がなく、辛うじて繋がるだけの首。
首筋には、どう見ても喰い千切られた、としか見えない跡があった。
そして、腹部。
皮がめくられ、その奥にあるべきものが欠落している]
……慌てて、喰い散らかした……って感じだな。
[妙に冷静な呟き]
だが……ここには、こんな喰い方をする動物はいねぇ……。
[それ以前に、彼ら以外の『生物』の姿は見ていない。
鳥、昆虫、獣。
それらの姿も気配も、ここにはないのだ]
……人狼……か。
[その結論に達するのは、とても容易い事と言えた]
おはよう おはよう おはよう おはよう
[歌いながら、自室を出て廊下へ。]
まっかになって おはよう おはよう
からっぽなって おはよう おはよう
[手にした駕籠には紙の花。
赤い花びらのような足跡を、裸足でぺたぺた追って行く。]
[階段をぺたぺた降りて、その赤い池に紙の花を振り蒔く。
血溜まりに横たわった老人の、傍らに座り込んで、赤く染まった白髪を撫でる小さな手。]
――自室――
[眠れなかった。
夜から朝へと変わる、空を見ていた。
のろのろと身支度を済ませ、部屋を出る。
今日は花の刺繍の入った、深緑のワンピース。
階段を降りて、広間への扉を開けた]
・・・・・・。
[違和感を感じる。
大きな窓からは、のどかな景色が見えていたが]
[なぜか行きたくない思いがあったが、こちらとは反対の東側の階段まで、足が向かう。
徐々に錆びた匂いがしてきて、拳を握り締めながら。
鮮烈な赤を見つけ、小さく息を飲んだ。
すぐ横に誰かいる事に気付き、身を引く。
それがアーベルだと気付くと少し冷静になり]
・・・・・・殺し合い、に、なるのかしら。
[首を傾げることはしなかった。聞く意味などなかったから]
[ベアトリーチェの言葉を聞きながら、酷く怯えていたギュンターの姿を思い出した。
目を細める]
・・・そうね。もう、怖くないのね。
[ベアトリーチェの傍に行き]
・・・弔ってあげってるの?ベアトリーチェ。
…さよならの、おいわい。
[にっこりと向ける笑顔は陰りを知らぬお日様のようで、
赤く染まったワンピースと、
赤く染まった紙の花だけが、
そこにあった惨劇の痕跡を留めていた。]
[「目が覚めた」「おいわい」という言葉には、首を傾げたが、手を伸ばし、ベアトリーチェの頭を撫でる。
赤く染まっている服を見て]
もう、具合、いいの?
服を、着替えた方が、いいわ。シャワーを浴びて。
・・・・・・。
[ベアトリーチェを視線で見送り。
自分の肩を抱く。
無表情な...も、おびただしい血のついた激しさのあるその場所には充分不似合いだろうけれど。
ベアトリーチェの無邪気な笑顔ほどの不自然さはないだろう]
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