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[ミハエルの問いに、ええ、と答えようとするが、声はかすれる]
あたしは、大丈夫。
[いつの間にか、エーリッヒのナイフで傷つけられた腕から血がこぼれていたけれど、口には出さない]
[クレメンスの微笑みに、困ったように、首を傾げて。
彼の行動に、ナターリエの様子に、驚いて力が入っていたものだから、難しい。
それでもクレメンスの微笑みは、いつもの彼のもので。
「父親」を感じさせる、いつもの、底から、優しい・・・]
…!
[エーリッヒの手からミハエルを庇って引き寄せる]
[けれど次の瞬間、悲しみが押し寄せた]
[彼の正体が何者であれ、犠牲者には変わりないのだと]
[ナターリエに頷いて、手伝うという言葉に]
ありがとう。もしかしたら、頼むことがあるかも、しれないわ。
・・・上の、物音が、収まった。
……人間、ね。
[小さく、呟く。
視線は相変わらず、室内の紅に向いたままだが]
この世で一番恐ろしい生き物が人間だって、知ってるかい?
……俺は、俺を育てたヤツの一人に、そう聞かされたよ。
[続けて投げる声に宿るのは、哀れみか嘲りか。
もっとも、一つの言葉を繰り返す旅人の耳に、それが届くかどうかは定かではないが]
有難うございます
[オトフリートの言葉に、微笑んで、嬉しそうな顔。]
…そうですね。
いって、みたほうがいいかもしれませんね。
[イレーネの言葉に頷いたあと、上を見てそう言う。]
[伸ばした手から逃れる勢いは止まる。投げ出された足首は、エーリッヒの手の届くところにあるというのに]
エーリッヒ、あなたなの?
あなたが、人狼、なの?
[問いかける]
[物音が止んでも、なかなか上に上がれない。
その様子は落ち着かなげで。
昨日のベアトリーチェの騒動のように、何も無ければいい。
みんな無事で・・・無事で。
人は狼さえ殺せば、狼は人を殺せば、生きて出られるというのだから。
クレメンスの言葉に]
カフェオレは、じゃあ、明日・・・。
上に、行かないと。
・・・・・、・・・
[声は声にならず息だけが洩れる。血の気の失せた唇は『何で』『死にたくない』と、只それだけを繰り返して。
程無く視界は薄れ。
伸ばした手は力なく地に墜ちた。]
[静寂。]
[その瞬間。
部屋の表札の文字が、顔がすっと溶けるように消えたことを、僕が知る事は出来なかった。
Erich Callsen-Brackerは消去された。まるで初めからなかったかのように。]
[イレーネに頷く。]
もう遅いね。
人狼…か。
イレーネは、誰か人狼だと思っている人物はいるかい?
[おやすみの挨拶の前に問いを]
[あたりにはまだ、ふわふわと枕の羽根が舞っていて、みんなの上に白く降ってくる]
[絨毯を染める赤の上にも降って]
[白は、赤に]
[動きを止めた青年を無言で見つめ続け。
やがてのろのろとエルザの方を振り向く]
…エルザ、血が。
[その腕から流れる紅に目を止めて。
ポケットから取り出した白いハンカチーフで傷を押さえた。
すぐにその白も紅に染まって]
手当て、してもらわないと……
[入口の方を見る]
[こちらを見つめる青年が二人]
[一人は呆然と、一人は何処か冷たく]
…しずかに、なったね。
[フォークを咥えたまま、ぽつり。]
だれか、おきたのかな。…よかったね。
[ふわり、と…春風に舞う花びらのように笑む。]
[もうナターリエに続いて、二階に行こうとしていて。
クレメンスの問いに]
・・・人狼であってほしくない人なら、いるわ。
[静かに、一息に答える]
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