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[それを見たらしいイレーネにもアーベルにももう激しい動揺の色なんてものは見えず、和やかに話せていた。
きっと自分もじき落ち着いて、ああなれる。
やはり同年代に見えてしまう色んな事に慣れてなさそうなイレーネの泳いだ手、前髪をかき上げながら呆れた声を出すアーベル。
去り際の二人の様子を思い出して口元だけで笑みながら、自分にそう言い聞かせた]
(清潔なグラスで水でも飲めばすぐさ)
[台所に入ると、そこで思案顔のクレメンスを発見する]
…神父さま?
[思わずぽかんとする。
…まさかこの狭い台所で迷っている?
眼鏡がない時の彼だからありえるかもしれないと真面目に心配し、入って来た方を指した]
えっと、出口はあっちです。案内しましょうか?
[目が覚めたのは昼すぎだ。
怠惰な生活にすっかりなれてしまったせい、
というわけでもない。
歌がぐるぐると回って、離れない。
朦朧としたまま夜を迎えてしまった。
さすがに腹が減る。
好きな紅茶でも飲もうと、扉をふさいだ家具をどける。
緊張と興奮とで満たされた屋敷に、
家具をどける音だけが響く。
昨日までのそれは、
コミカルに響いていたはずなのに。]
(がたん、ごとん、がた、がたん)
[アーベルの動揺した声に]
なんだか、想像して、そう思ったの。
[むしろこちらが不思議そうに首を傾げる]
それに、アーベルが笑った顔見たこと、ないから。比べられないじゃない。
[扉を開ける。
隙間から吹き込んできた匂いは、彼の部屋に仄かに残っていたグリューワインの匂いをかき消した。
彼はその匂いを発する物を、確信する。
匂いの元は何処だ――]
―廊下―
おや、こんばんは?
ベアト……
[見下ろした先には、かわいらしい少女。
ぷっくりとした子どもの手には、
およそ似つかわしくない
(けれど彼女の背丈に良く似合った)、
鋭利な刃物。]
……。
どうしたんだい?それは。
ええと、君のクローゼットに入っていたのかな?
危ないから、僕に渡してくれないかな?
[唇を真っ青にしながら、右手を差し出す。
老人の死を知らない彼には、
少女の豹変の理由がわからない。]
……どんな想像だよ……。
[はあ、とため息をつく。
神父やシスターたちとは、また違った意味で調子が狂うかも知れない。
そんな事を考えつつ]
別に、比べなくてもいいが……。
[幻魔としての微笑。
正直、それ以外の笑い方など、忘れているようなものなのだが。
さすがに、それと告げる気はなく]
- 2F・部屋I -
[気が付けば部屋にも夜の帳が下りていて。
寒い部屋に小さく身震いをした]
ああ、神父様にも謝らないと。
失礼をしてしまった。
[言葉にして確認する。
声は震えずに出てくれた]
―in front of library →kitchen ―
[いつまでもここにいるわけには、と。
少し考えて、kitchenへ向かう。
本日は何の料理にしよう。
あの赤い色を思い出して、no,赤いものは止めておこう。
きっとあまり食べてもらえない。]
stuffed cabbageなんてどうかしら。
[呟きながらkitchenの前へ]
ううん、こっちはだいじだから。
[スカートからごそごそ取り出すのは、鋭利なトゲがたくさんの鎖鉄球。]
こっちなら、おじさんにあげる。
みんなをおこすの てつだって?
[がたん、ごたん、がた、がたん。
階上から響く音にどきりと天井を見上げる]
あ…そうか。
ハンスさんだきっと。
[我ながらびくついてる、と、グラスに水を入れて一気に呷った。
神父がそこに居なかったなら、酒にしていたかもしれない。
空のグラスにもう一杯水を入れて]
…え、台所から出られなくて困っていたわけじゃなくて、料理をしようか迷ってた?そうだったんですか。
[神父さまの手料理っていうのも食べてみたいですと笑う]
俺に何か手伝えそうなことあったら、言って下さい。
[扉を開けて、声の聞こえる方を向く]
[数人の人影]
[少女の手には冷たい三日月の光るモノ]
……!
[硬直]
[昼間の少女の姿が甦る]
[真っ赤な服を着て微笑んでいた]
―自室―
[扉の前に座り込んだ侭、どの位時間が経っただろうか。水を飲んでも乾ききった喉が完全に潤うことは無く。
状況を確かめなければ。そうは思ったけれど、動き出すのには相当の時間が掛かった。
震える手で箪笥の中の刃物を漁る。幅の広い湾曲した短剣。木製の鞘に収められたそれを身に隠す。
壁伝いに歩いて、廊下へと続く扉のほうへと歩む。]
―kitchen―
あら、声がする。
[doorをあけて、中に入る。]
…神父様? ユリアンさん?
食事、お待たせしてしまっていました?
[forced smile,小さく苦笑を浮かべる。]
わたくしが、やりますよ?
神父様は熱が出ていたのだから、休んでいてくださいな?
cheesecakeも作るつもりでしたし?
[最後はユリアンに悪戯っぽく]
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