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−鍵の書が消えた夜・Kirschbaum−
[ブリジットと二人、ティルの部屋へと向かい、ティルをそっとベッドに横たえる。]
ふぅ……。
[一息吐いて、心配そうにティルを覗き込むブリジットに微笑み。]
しばらくは僕がついてるから、君は先に下へ行ってて?
他の人たちが何か知ってるかもしれないし、ね。
[そうしてブリジットが去っていった後、ベッド横に椅子を持ち寄り、組んだ足の上で肘を付き、視線はティルの右腕に注がれている。]
書の力を捉え、その位置を掴めれば、奪還のために動き易くなる。
……俺は、あの力は、今の世界には不要だと思っているから。
奪還して、本当に必要な時が来るまで、再び眠らせるつもり。
[それ以外にも、思う所がなくはないが。
今は、それだけを問いの答えとして、告げて]
─教会─
[夕方のミサが終わった
ミサを含めて今日一日のクレメンスの所作はいつもと変わりない
だがしかし]
……変わらなさすぎ? クレメンスなら気付いているはずですが
参拝者に不安を与えないため? それとも……
[胸に去来した僅かな違和感。それが疑惑まで結実するのも遠くないか]
[少し俯いて、独り言のように呟く。]
…持ち去られた、という事は、きっと必要な人がいた。
私は今は、そういうことだと思う。
本当に必要な時は、今なのかもしれない。
ただ…
[顔を上げて]
無理すると、彼が心配する。
[言いながら少し口の端を持ち上げて、白い梟を細い指で指した。]
−夕方/北東部・墓地−
[とつぜん、緑の眼がぱちっとまたたかれたのは、お日さまがかんぜんに隠れてしまったからでしょうか、それともなにかを感じたからでしょうか。それは定かではありませんが、とにかく、ベアトリーチェは闇に包まれてゆくそらを見つめ、じっとそこに立っていたのでした。]
必要。
[独り言のような呟きに、一つ、瞬いて]
……ああ、確かに、そうなのかも知れない。
必要ない、というのは、あくまで俺の価値観だから。
それでも。
少なくとも、俺が過去に『見聞き』した世界の停滞に比べれば、今は……とても、変化に富んでいるように思うんだ。
[静かに語る刹那、今は翠の双眸はやや、翳りを帯びたようだが。
相棒を示しながらの言葉と、その時の表情に、翳りは溶けて消える]
……はは……まあ、そうとも言いますか。
[そろそろ誰かが、訪ねてきても良さそうなものだ、と、考える]
まずはナターリエか…それとも時の竜殿か…いずれにせよ、楽しみなことだ。
[そっと、手のひらで聖書を撫でる]
―Kirschbaum1F・朝―
[下に降りればそこには既に二つの影があった]
おはよう?
もう大丈夫なの?
[どちらにともなくそう声を掛けた]
―西の桜―
[やってきたときから眠っていた地の精から離れる。
千花に木の実をやったりしていながら、ただただ、苗床は桜の花を見上げていただけだった。
花散らしの雨は降らなければ良い。
右の手をそっと押さえて、思う。
散らずにあるは花ではないと、知りつつも、知りつつも……]
誰が入れたのだろうね。
あの遺跡に。
[口に上らせる問い。]
封印のうちに。
[白梟からオトフリートに目線を戻し、無表情に見つめていたが、ブリジットの声に気がついて]
…おはよう。
彼は、大丈夫、と。
[何処かで、指環の力が用いられたのを感じ取る。
あれも、『精霊球』や『鍵の書』には及ばずとも、強大な力を持つものだ。
本来は支配の役目を持つ物。書と接する事で、衝突が起こらなければ良いが]
少し、話して来ようかな。
[呟く。
地の精の様子、千花の様子を見て、立ち上がると。]
いってこようか。
かれならば、詳しく知っていそうだから。
[またね、そう挨拶をした苗床は、中央部の教会へと足を向けた]
―→教会―
[聖書の姿をしているが、この本の真の姿は、古き魔導の書。そして、今は封印の書でもある。鍵の書は、この聖書の中に、溶け込んで沈んでいる。魔の封印と天の封印、相反する二つの封印によって『何もない』存在となって]
やあ、おはようございます。
[やって来たブリジットの方を見て、浮べるのはいつもの微笑]
ええ、俺は何とか。落ち着いてますよ。
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