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[ 深夜。
酷い飢えに煽られて目が醒める。
呼び声と喚び聲は、まだ続いていた。
暗闇は月明かりに照らし出されている様に、
易々と何処に何があるか見えて居る。
傍らにアレクセイは居たろうか。
朦朧とする意識の中、居ればふっと手が髪の毛を撫でた。
溢れそうな唾液を飲み込むのに苦労する。
喉が渇く。
気付けば別の闇の中に立っていた。
喚び起こされたまま、
音も立てずに、ふらりと聲の元に訪れた。
まるで夢の様に。]
[ところで、ベルナルトの方からアリョールに対して
今まで距離があったのは、彼女にもその先代にも
あまり世話になった記憶が無いからでもあった。
そう、ベルナルトの一族の墓はこの村には無かった。
村に住まいを構えたのは祖父母の死後、父母の代から。]
――――…
[明日ここから出られても、出迎えることはない家族を思い出しながら。
ネームプレートの張られた扉を、キィと閉ざした。**]
キミの目に映る俺はどんな姿なんだろうね。
[長い前髪に隠れた目許に視線を注ぐ。
距離は保ったままであるから覗き込む事は出来ない]
あいつら。
俺達を此処に招いて閉じ込めた村の誰かさん。
[言葉足らずな所があるのは癖か。
ニキータの尋ねのような響きに言葉を付け足す。
複雑と言われると小さく笑み声を漏らし]
俺はみつけられて嬉しかったけどね。
――…ん、それなら良かった。
そんなに念をおさなくても、伝わってるよ。
朝食か昼食か、次は此処に運んで食べよう。
[起きて直ぐ解放されるとも思えぬのか
そんな言葉を向けて片手で覆われる彼の相貌を見詰める]
はっ、ふー……、はぁ……、はぁ。
[ 辛い。
辛い。
辛い。
欲しいと体は訴えている。
口元を抑え、それでも尚、耐えた。
何もなければ解放されるのだと。
まだ頭の片隅で覚えている。]
[ 更に強く口元を抑え夜闇に息を殺す。
そんな、人狼としては愚かなヴィクトールを、
"彼"も"彼女"も、どう眺めていただろう。
それは分からなかったが、
ああ苦しいのだろうと見てとるのは、*誰でも出来た。*]
ヴィクトールは、 フィグネリア を投票先に選びました。
[片手を顔に添えたまま、
前髪の奥から、ひたりと視線を合わすのは。
男にとってとても、久しぶりのことで]
姿形、よりも。
時間…かなぁ 夜の湖畔の、重ねてきた時間が。
たぶん、こうして、息をするように君と話せるおれを
形作っているような …うまく言えないけど ね。
[鼻先を掻くように手指は離れ、
まなざしはまた前髪の奥に隠れる]
ああ、そういえば、あいつらは、そうか。彼らか。
[特に、村人へ感慨を抱くでもなくうなずき。
朝食か昼食の提案には、素直に笑みが浮かぶ]
[細まる双眸や、返る言葉に、
嬉しい。と、これ以上重ねずとも。
空気だとか、表情で伝わる気がしたから]
おやすみ。
[小さな声に囁きを返し、今日の別れを告げた]
[イヴァンが去った部屋。
寝台の上に身を横たえると男はしばらく眠る。
どれくらい眠っていたのか、
目を覚ました男はのそりと起き上がる。
静けさに包まれた屋敷の一角。
薄暗い井戸の前で念入りに水を浴びては、
体に残る匂いを気にする仕草。
さすがに洗えなかった衣服は部屋に持ち帰り
椅子に掛けておくと、
裸のままベッドに潜りまたうつらと*眠りに入った*]
[あの時差し出した己の利き手へと視線落とす。
ぎゅ、と握りしめて息を吐き出した。
ぬくもりを恋しく思うが戯れの相手を探せる場所でも時間でもなく。
広間に戻ると其処は磨き上げられた後。
片付けるものもなく厨房で魚の水を替えるくらい。
選んだ部屋に戻るとのそりと寝台に潜り込む。
目を閉じて眠りにつく夜半。
夢にみるのは泣きながら己の首に手を掛ける母親の姿。
魘されて息苦しさ覚え目覚めるのはひとりきりの朝の常**]
― 2階自室 ―
[夢をみていた。
きっと。
人狼などいないといいながら。
同じ立場に追いやられた、幼き日にみた母の姿。
『恨んではいけないよ。
わからないものが怖いのはしかたないことだから。
だから、知られてはならないよ』
そう諭した母はもういない。
あてもなく旅して、この村にいついたのは適度な干渉と相反する無関心がそのときにはちょうどよかったから。
母のようにはなれない。
いまもまだ、使いこなせるわけではない。
夢の名残は目覚めればきえる]
[目を覚ましたときにはだいぶ日ものぼっていた。
猫のように伸びをすれば、ぱさりとショールが落ちる。
煙草に火をつけて吸い込めばすっきりする気がした。
ふ、と煙をはきだして、廊下へとでる]
――なんか……
[香、埃、朝の匂い。
それらに混じる鉄臭い匂いに眉をひそめ。
匂いを探してむけた足は]
――アナスタシア?
[きい、と薄く開いた扉の先。
そこから見えた顔に驚いて。
扉の向こう。
広がる赤に声を無くしてたちつくした**]
―自室―
[微睡んでいた。
カーテンは開けたままであったから、入り込む日差しに微かに瞼を開けて。
眠いと言うより、覚醒しきらない意識。
その夢を見ていたくはないのに]
朝……?
[今どこにいるのだったか。毎日変わる寝床はあそこから抜け出せた証拠でもある。
ゆっくりと身体を起こすと、軽い眩暈がした。
額に手を当てて熱が上がっていないことを確認する]
起き、なきゃ。
[ふるふると首を振り、その場に座り込んだ。
開いた扉の間から、赤いものがじわりと流れてくる]
誰か、呼んできましょう、……か?
[それだけようやく口にしたものの、腰が抜けたのかうまく立ち上がれない。
口許を押さえて、それでも立ち上がろうと壁に手をついた]
―回想/ヴィクトールの部屋―
[水は、とか、世話を焼くのは、自分もそうしてもらった記憶があるから]
謝る事じゃない。でも、先に言って欲しかった。
あんたが体調崩して、万が一の事でもあったら、俺にどうしろっていうんだ。
……隠さないで欲しいんだ、ヴィクトール。
あんたのお蔭で、俺は普通に生きてこれてるんだから。
[両親が死んだあの日、慰めてくれた彼がいたからこそ。
それから助けてくれていたからこそ、自分は生きているのだ。
――彼もまた自分と同じように後悔しているのは、薄々と気づいていても、それを問い詰めることは出来なかった。
月日を重ねていくうちに、問うタイミングを失ってしまった]
わかった。
お休み、ヴィクトール。
[自室で、というものの。椅子をすすめてくれたから、その顔を見て微かに笑う。
早く寝ろというように、目を開けているなら片手で覆い。
寝つけない様子に、自分がやられたように頭を撫でてみたりもする。
人狼かもしれないなどと、疑うわけもなかった。
そもそもこの中に人狼は存在しないのかもしれない。そうであれば良いのだ。
違った時は]
――あんたは何もしなくて良い。
綺麗なまま、村の偉い人達の中に居れば良い。
人殺しの烙印なんて、背負わせるものか。
[眠りに落ち切っていたかどうかは知らない。
記憶に残るかどうかもしらない。
この事態への緊張からか、彼の言葉はほぼ無意識のうちに声として出ていた。
暫く様子を見ていたら、いつのまにかそのまま眠ってしまったようだ。アリョールの「部屋にいないだろう」という予想は正しかった。
無理な体勢の為、目覚めは常よりも早く、ヴィクトールの様子を確かめた後は部屋に戻って寝なおす事になった]
―朝/自室―
[彼の親は大変子煩悩であった。
あの日も、一体いくつの子供だ、自分は平気だと追いやったような気もする。
恵まれていたのだと、思う。甘ったれた事だと自覚はしていた。
だけれど、そういう日常は、夢に見る事もない。
一歩、人との距離を取る。失った時が怖いから。
今日も夢は見なかった。いつもの朝だった。
起きて身支度を整える。隣の部屋のヴィクトールは、もしかしたら起きているだろうか。
覗きにいこうか、と考えて外に出ると、端の方に人の姿が見える。
――鉄のようなにおいがする。
開くときは気にしなかった音を、閉める時は気にした。
それから、二人の姿の方へと歩いていく]
……大丈夫か。
[フィグネリアとタチアナの二人の様子に、まずはそう声をかける。
そのまま室内を覗くと、顔を顰めた]
―朝・2階客室―
[この異常とも言える環境下でも、寝付けないわけでも無く、悪夢を見るわけでも無く。
寧ろ見る者が居たなら、穏やかとすら言われそうな表情で彼女は眠る。
目覚めもすっきりとしたもので、身支度を整えれば室外へと出る]
――…ふむ?
[アナスタシアの部屋の前に、幾つかの人影。
その様相と周囲に漂う鉄臭さに、一つ声を零した]
[赤い血だまりの中、村の十人の彼女の事は知っていた。
目を伏せ、再び目を開けた時、二人へと向き直る]
動けるか。
広間に行こう。ここは閉めておく、今は。
手を貸す。
……アリョール。
[二人に手を差し出そう、として。
そこで廊下に出てきた彼女を発見した。
誤魔化す事はないが、見せるものでもない。
だから、事実を伝える]
アナスタシアが、死んだ。
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