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―二階・個室―
[何時からか、彼女は窓辺に佇んでいた。
瑠璃の眼は、無感情に死を見詰めていた]
[幼馴染みがソレに駆寄るのは見えはしたが、白に咲く朱い華に目を奪われて。薄紅色の唇には、笑みすら浮かぶか]
あなたのコエを、聴かせて。
死の、全てを、私に。
[語りかけるように囁いて]
[ランプに火を、*灯す*]
―二階・自室―
[誰かの叫ぶ声に目を覚ます。
と、同時にブリジットが飛び出していくのが見えて慌てて起き上がる]
ブリジット!何処に行くの!?
…あの声は…エーリッヒよね…
まさか…
[ブリジットの後を追うように部屋を出て、急いで声のするほうへ、と]
[途中足を雪にとられて転びそうになりながらもベアトリーチェの元へと走る走る、走る]
嫌…嫌……嫌ぁぁぁ!!!
[辿りついた時には影達は既に去って]
[似ても似つかぬ姿となったベアトリーチェの姿]
嫌…やぁ…やぁぁぁぁ!!!
[此方に向かってくるエーリッヒとは入れ違いになる形で、ベアトリーチェだったものへと駆け寄り、エーリッヒの上着ごと抱きかかえようとした]
陽のひかり…陽のひかり…
[嫌々をするように頭を振って髪を振り乱し、無残な体となったベアトリーチェに抱いて縋りついた]
[金の髪は朱が散り、獣の爪か牙でか、痛ましい]
ベアトリーチェ…!!!!やぁぁ…!!
―二階→一階―
[ブリジットが外に駆けていくのを見つけて後を追う]
[放心したようにこちらに向かうエーリッヒ。
その向こう…不自然に窪んだ雪の…その赤い…]
[それが何か、に気付いて]
ブリジット!見てはダメ!
[静止は間に合わず、ブリジットの悲鳴が響く]
[そこに居た…あったものは、人の残骸]
……ベアトリーチェ?
そんな……
[遠くに影…狼の。嘲笑うように]
[ゆっくりと、遺骸に縋るブリジットを抱き締める。
少しでも落ち着けばいい、と]
[エルザに後ろから抱きしめられるけれども]
[目の前の奪われたベアトリーチェを離そうとはせず、取り乱している]
ベアトリーチェ、ベアトリーチェ…!
―二階・個室―
[誰かの部屋の扉を叩く音]
[廊下を駆ける音]
[階下の扉が開かれる音]
[絶叫]
[悲鳴]
[次々に襲い来る音の波は眠りの淵から容赦なく意識を叩き出す]
……何…?
[体を起こして、部屋の扉を開いて]
[開かれた扉から流れ込んだのか。
鼻をついたのは――血液の]
[ほんの一瞬、意識がどこかへ飛んでいたらしい。
気づかなかった。すれ違う者たちと。
気づいて、止めるべきだったのに]
……。
[無言。唇を噛んで、しばし、立ち尽くす。
でも、今は、無力感を感じている場合ではないからと。
そう思うことで、楽な方へ、楽な方へ流れそうな自分自身を繋ぎ止めた]
なんてことなの…どうして…
[昨夜、話していたことがふと浮かぶ。
一緒に機械犬を連れて散歩に行こう、と。
そういっていた彼女はとても楽しそうで]
[なのに、今目の前にいるのは…]
どうして……
[ブリジットが泣け叫ぶ傍らに、少女が一人佇んでいる。
誰にも認識されずに]
あらあら。損傷がひど過ぎて、復旧は無理ですね。
あたしのデータは研究室にバックアップはありますが、
その情報も微々たるものだし、
人工人体を作り出すにはそのレベルまで科学が追い付いていない。
[少女はまるで他人事のように、昨日まで自分の体だった物体を見つめている]
[白を染める赤。
雪に横たわる自衛団の姿がフラッシュバックする]
[――誰かが死んだ]
痛…っ!
[そう、脳が判断した瞬間。
左胸のその向こう、それの触れる場所から痛みが走る]
[一瞬で全身に広がった苦痛に耐える間もなく。
意識は闇の底へと*堕ちて往った*]
[ブリジットの頭は糸が切れたように垂れ]
[だが決してベアトリーチェを離さない]
アハハハハ…奪われた……うばわれた…
………アハハハ。
[わらったまま、*離さなかった*]
[笑いながら、歌うようにくり返すブリジットを揺するようにしながら声を掛ける]
ブリジット!しっかりして…
[傍に落ちる影でエーリッヒに気付いて、見上げるように]
[だけどブリジットは離さずに]
…エーリッヒ……ベアトリーチェが……
[それ以外、何も言えずに]
[少女はブリジットに手を伸ばすが、
その手はブリジットに触れる事無く擦り抜けた]
くす。綺麗な紅い花。
紅い花、白い大地をその呪われた色で埋め尽くせ。
[少女は踊る。自分の血に酔い。
誰にも気付かれず、*何かに取りつかれたように*]
[集会場を振り返る。
そろそろ、他の皆も気づくだろうか……そんな事を考えつつ、エルザに向き直って]
……ああ。
痕が、教えて……見に来たら、こんな……。
[一度言葉を切り、小さくため息を]
……なんで、なんだろな。
『聖痕』を持つ者が邪魔なら、俺から喰らえばいいだろうに……!
[思わず口走った言葉は、いつかと同じ物と、自分では気づかずに]
何故、殺さない。
ああ。あの時も思ったっけな。
あの時は……なんで俺、生きてたんだっけ?
[マヒしたような感覚が、ふとこんな疑問を浮かべる。
答えは、知っているはずなのに。
何故か、浮かばなかった]
小説家 ブリジットは、ランプ屋 イレーネ を投票先に選びました。
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