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あ、うん。
丁度リネン室の傍に居たから。
きっと必要になると思って。
[シーツを指摘されて、カヤに一つ頷きを返す。
手伝うと言われて是を返し、外へ向かうために勝手口の方へと近付いた]
ヘルムートさん、タオル要る?
[怪我をしたことは知らないが、事を為したことで必要になっていないかと声をかけ。
必要と言われるなら持って来ていたタオルを一枚渡す]
後でで良いから、ちゃんと話聞かせてくれるかな。
[それはヘルムートとウェンデルの両方に向けた言葉だった]
[堂々と、という、エルナの聲に、少年は、ぐ、と逃げ出してしまいそうな足で、地を踏みしめる]
うん、エルナ。
[ここで、簡単に崩れてしまってはいけない。逃げる事も、もう出来ない。
始めた事は最後まで、やり通さなければ意味が無い。
自身の為、エルナの為...
そして犠牲とした人々、これから奪う命の為にも、きっと、逃げる事だけは許されない]
─ 外 ─
[勝手口から外へと出て、浜辺に横たわっているブリジットの骸へと近付く。
掻き切られた喉が痛々しい。
カヤに頼んでシーツを広げてもらい、その間にタオルでブリジットの顔や服に付いた紅を可能な限り拭い取った。
そうしてからブリジットを抱え上げ、広げられたシーツの上へと運び、包み込む]
ってて……
下まで運ぶのはまだ無理かな…。
[シーツに乗せるまでは我慢出来たが、運ぶとなれば足がまだ持ちそうにない。
クレメンスが居るなら手伝いを願うのだが、彼はどうしていただろう]
― 一階 ―
[ヘルムートとウェンデルの会話に、男は口を挟まない。
けれど、結果を知る為に男は後をついていき、厨房から一歩外へと出る。
彼女の最後の時には小さく聖句を紡ぐ。
それが今、男にできる事だったから。
エーリッヒに気が付くと、小さく手を振って、気が付いたことを示した*]
.........ねえ、ヴィアベルさん、人狼は、人間を喰らいたくてそうしているのだと思いますか?
[祈りを捧げる姿勢のままで、静かに問いを投げる]
もしかすると、人狼も、人を喰らうことが嫌で、悲しくて、でも喰らわずには生きられないから......そうしているのかもしれない。
僕は、そんな風に思うんです。
[そう言って、再びヘルムートを見上げ、微笑みを浮かべる。その頃には、エーリッヒ達も近付いてきていたか]
[きっと、ブリジットは、自分には触れられたくもないだろう。
彼女を陥れ、殺させたのは自分、それを少年は知っている。
喰らった人達に対してしたように「ごめんなさい」と口にすることすらも、できはしなかった]
なぁ、神父様。
今回のことどう思う?
ウェンデル君がブリジットさんを人狼だって言ったこと。
誰かを人狼だと言われても容易には信じられないって言ってたはずのヘルムートさんの行動。
ウェンデル君は見出す者なのかも知れないけど、ヘルムートさんの行動は言葉と矛盾するよね。
[地下への道すがら、クレメンスにそう問いかけてみた。
ヘルムートの言動について、その話が出た時に不在だったことを指摘されるなら、カヤから聞いたと正直に言う]
この辺は後で本人にも聞く心算だけどさ。
何かすっきりしないんだ。
……さて、わからんな。
伝承には、そこまで詳しく記されたものはなく。
その一端である先祖も、その辺りを詳しく残してはいなかった。
何より、己が身に準えて考える事ができぬ以上、推測も難しい。
[緩く腕を組み、そこまでは淡々と告げて]
……痛みなど知らん……とは、言うつもりもないが。
だからと言って、容易く相容れるのも難しいところだな。
[は、と一際大きく息を吐いた後、僅かに緩めた口調でさらりと告げる]
……ただどうもウェンデルとヘルムートが見えた物は、
違うような気がする。
[男の位置からはウェンデルとヘルムートの会話と細かい様子は分からなかったけれど。
人狼を見つけた、という感じではなかった気がした。*]
神父 クレメンスが「時間を進める」を選択しました。
─ 二階 客室 ─
…やっぱり、酷い顔ねぇ。
[部屋に入ると、何よりも先ず鏡の前に座って呟くのは自衛団長の元に訪れる前に零したと同じ呟き。
眉を寄せ息を一つ吐いた後、いつも通りの化粧を施す。
見目良く見せる為ではなく、年相応の素顔を隠す為に化粧をするようになったのは、この村に来る少し前からだ]
[女は、年若くして母となり。
年若い故に、子を奪われた過去がある。
母と名乗ることも、子に会うことも許されず。
己の生きる支えを失い、けれど自ら命を絶つことは許せなかったから、代わりに自分自身を捨てようと決めた。
それまでの自分を知る人達から離れ、足が付かぬ様に手を尽くし。
見目まで変えれば、連れ戻される可能性は更に減るだろうと派手で年嵩に見える化粧をする様になった。
思えばこの過去が、女に勘違いを起こさせたのだろう。
この集会場で出会ったあの少年と、女が産んだ子の年が同じだったから。
女が子と離れ離れになった年と、彼が村を離れた年が同じなんて思い込んだりしたのだろう]
[最も同じなのは年だけで、見目も性別も子と少年が重なる部分は無いのだが]
……重ねて見る方が、悪いのにね。
[娘と同じ年で、陰惨な光景を目にしたあの子が心配で。
どうしても心から離れなかった。
その結果が自分に齎したもの、身の内から心の芯までを酷く苛み今も尚増していくばかりのそれに、ふっと一瞬意識が遠のく。
意識を失えば、また何か見えるだろうか。
刹那沸きあがったのは「視なくてはいけない」という強迫観念。
少年を案じ、視えたものを告げても良いだろうか。
そんな相手を無意識に思い浮かべたのと、意識を手放したのはほぼ同時。
数分程経って意識を取り戻した後、部屋の外へと出ていった頃にはもう事態の収拾に入った頃だろうか。
ともあれ、まだ何も気付いていない女は誰か居るだろうかと階下へ向かった*]
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