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〔嗚咽を漏らすフランに、心の中で詫びる〕
〔向日葵のような強さを持つ彼女が、とても小さく感じられ、檻の中から手を伸ばし、頭を撫でる〕
フラン…。
俺だって、誰を信じたらいいのか正直わからんのだ。
だが、こんなふうに疑わせるのが、奴らの手段、なんだろう?
負けてたまるか、とは思わないか?
打ち勝つにはどうするか。
お前はおまえ自身を信じたらいい。
お前が信じたいと思う人間を信じたらいい。
俺はお前の事を信じたいと思う。そして信じている。
お前に騙されても、後悔はしない。
パトラッシュ以外に人狼だと思う奴がいなければ、奴を殺すのも仕方ない…とは思ってるんだ。
〔俺は、俺のやり方で、奴が人狼かどうか確かめたいとは思ったが…と、言うと、また彼女は悲しむだろうか〕
ランディ…。
[顔を上げる]
[悲しそうな顔のまま]
[自警団員に肩を叩かれる]
……うん。
またね、ランディ。
[見上げても首を振られ]
[しぶしぶと立ち上がる]
[促されるままに詰め所を出て行った]
[自室に戻り、濡れた手袋を変えて、食堂へと。
誰もいない食堂で、ゆったりとした時間でもすごそうかというとき、宿屋の扉が荒々しく開かれた]
「喋る犬の居場所を見つけたぞ!
誰でもいい!手を貸してくれ!」
・・・。
[そんなこと言ったが、周りを見渡してみても、マスター以外はどうやら自分しかいないようで。
正直、あの犬の顛末がどうなろうと、どうでもいい。
ただ、人狼かも知れないものの最後の姿を確認するのは悪くは無いと思った]
・・・私では、お力になれませんが、場所だけ教えてもらえるかしら?
[その言葉に、自警団は渋い顔をしたが、猫の手でも欲しいと思っているのか、場所だけ伝えて、また人数集めへと走り始めた]
[気にするな、と言われて。微かに顔が歪む。]
[それじゃ駄目なんだ、という言葉は呟きにすらならずに消える。パトラッシュの心の中に。]
そ、か。
多分、あの時だな。酒場で俺がお前に話しかけた時……
あの後、お前が風呂に行ったろ? その時に、奴に意味深な顔で見られたんだよ。俺はてっきり、お前が危ない目に遭ってるんじゃ、って思ったんだけどさ。
[低い声で、俯いて地面を睨む。]
あいつ……なんでこんなことするんだ? 本当に占い師なのか? わけわかんねぇよ。あいつが人狼なのか?
あの時か…。
僕が居なくなってからそんなことがあったんだね。
[自分が呑気に風呂へ行っている間に。本当に、彼女が何を考えているのかが分からない]
…シャロンは、人狼じゃないよ。
人間だった。
きっと、クローディアを殺されて、気が触れたんだと思う。
自分がクローディアの力を受け継いだと、思い込んでる。
[その言葉を紡ぐ表情はどこか寂しげだっただろうか。敵視されているにも関わらず、彼女には同情を禁じえない。自分も下手をすればああなっていたかも知れないから──]
[自警団の言葉は、かなり適当で、細かい場所など分からなかったが、それでも、旅慣れしているせいか、普通の人では見つけることの出来ない犬の足跡を見つけて、一つの洞窟へと辺りをつけた。
耳を済ませてみると、洞窟で反響した声が二つ。
分かりにくい声ではあったが、一つはディーノのものだと思った。
ならば、もう一つは簡単だ。
シャロンが回りに散らばっている自警団の一人を捕まえると、この洞窟の中を指差した。
そして、小声で]
・・・もう少し集めてらっしゃい。
今度は逃がさないように。
お得意の人海戦術で、ね。
[それは、無能な自警団への嘲りの言葉も含まれていたのだが、その自警団はそれにも気づかず、周りの自警団を集め始めた]
〔またね、と言う声に、ああ、と返し、去っていく彼女を見送る〕
〔何故だろうか〕
〔妙に寒くなった気がした〕
…なぁ、灰皿、ねぇか?
メシくらい喰わんでも何とかなるが、煙草がないのはちとキツい。
くれねぇんなら、その辺に棄てるけどいいか?
〔この非常時に何考えてんだよこのクソ親父、と文句を垂れつつも若い団員が灰皿を投げてよこす〕
おい、お前今真剣にぶつけるつもりで投げたろ!
年長者は敬っとけっつーの。祟るぞ。
〔暇なのと、考えても堂々巡りになりそうな思考に嫌気が差して、門番の若人をからかって軽くストレス発散していた。守るべきものがない人間に怖いものは無い〕
―雑貨屋―
[結局閉めたままの]
[店へと戻る]
[プレートを閉店に変えて]
自分を信じる。
ランディは信じてくれる。
パトラッシュを殺すのも、仕方無い…。
[作りかけの湿布]
[のろのろと]
[また作り始める]
しかたが、ない……。
─宿屋・2階─
[ふ、と目を覚ます。
窓の外が騒がしいような気がした]
また、何か、あったのかな……?
[ぼんやりと呟く]
……なんにもなきゃ、それが一番いいんだけど……。
[それが望める状況ではないのは、理解しているが、それでも。
そう、呟いてしまうのは、止められなくて]
ああ、占ったんだったな。あいつのこと。
そう……気が触れた人間か。
確かに、クローディアが死んでからだな。
シャロンが変な感じになったのは……。
[自分に微笑んでみせたことだってあったのに。]
人狼さえいなけりゃ、あいつも。
普通の人間のままだったんだろうが。
[苦々しげに言って。
ふと頭を上げる。誰かの気配を感じたように思って。
さわり、と背中を妙な感覚が走る。]
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