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[少し遅れて辿り着く]
[詰め所の前にはディーノの姿]
あ…。
[彼も信じていいのか分からない]
[うろたえ戸惑う]
ディーノ。
[詰め所に向けられた視線は厳しく]
[それもまた近寄りがたかった]
[声をかけられそちらに視線を向ける。それがフランだと知ると張り詰めていた雰囲気は消え、表情は沈んだものになる]
フラン…。
何でこんなことに…。
パトラッシュが人狼だなんて、何かの間違いだよ…。
[その場に座り込むと膝を抱えて顔を膝に埋める]
[沈んだ表情のディーノ]
[その隣に一緒に座って]
うん。
自警団の人も殺気立っているから。
[詰め所の方を振り返り]
ランディは。
きっと何か知ってるんだよね。
パトラッシュ、守ってくれたんだよね。
[そしてやはり俯いて]
本当に。
どうしてこんなことに。
─宿屋2階/朝─
[ふ、と、途絶えていた意識が繋がり、目が覚める。
自分がどこにいるのか理解できず、しばしぼんやりとして]
……あれ?
[そこが宿での自室だと気がついて。
戻ってきた記憶の無い事に戸惑うものの、すぐ側の気配に、ぼんやりとそれを理解した]
レッグ……運んでくれた……?
[情けないなあ、と呟いて。サイドテーブルの水差しから汲んだ水を飲んで、一つ息を吐く。
気だるいけれど、動けなくはなくて]
ちょっと帰るだけなら、平気……かな?
[小さく呟いて。
転寝しているレッグの肩に毛布をかけて、そーっと部屋の外へ]
[階下に下りれば、当然の如く主人に見咎められるものの]
あ……大丈夫。
ちょっとふらつくけど、でも、一度、家に帰りたいから……。
[師にちゃんと薬を処方してもらってくるから、と。
拝み倒して、強引に許可を取り付け、外へ。
外の物々しさに僅かに眉を寄せるものの、真っ直ぐに自宅へと]
─自宅/朝─
[戻ってきた所を出迎えてくれたのは、心配そうな表情の師で]
……御師様……あのね。
[宿で起きた事。
自分の事。
それらを話して。
……師は、どこか固い表情でそれを聞いていたものの、話が終わると一つ、息を吐いた]
「……それで、お前はどうしたい?」
[投げられた問い。それに、僅かに目を伏せる]
……よく、わかんないけど……何もしないのは、嫌……だから……。
……あれ、持って行っても、いいです……よね?
[伺うような問いかけに、師はああ、と頷いた]
ありがと、御師様。
あ、それでね。飴玉、持って行っていい?
[肯定に安堵しつつ、ふと思いついて笑顔で問う。師はやれやれ、という感じで息を吐くと、用意しておく、と頷いた]
……ありがとっ!
[にこ、と笑って。自室へと足を向ける]
多分…。
自警団の人が話してたのを聞いた限りじゃ、ランディの家にパトラッシュが居て、見つかったと知るや一緒に逃げたって…。
きっと、何か知ってる。
[俯いた顔を僅かに上げて]
パトラッシュが人狼じゃないか、って言った人が居る。
疑いが広まればそれは力となりその対象を排除しようとする。
人狼だと言わなくても、それに繋がるような言動を伝えればそれは起こる。
自分達と少しでも異なるものを排除しようと…。
[紡がれた言葉はどこか沈痛な雰囲気を含んでいて。表情が読み取れるならば苦痛に歪んでいただろうか]
[自室に入り、着替えをして。
新しい着替えを用意した後、机の上の小箱に向直る]
…………。
[しばしの逡巡の後、それを開いて。
中に納まっていた深い紫の天鵞絨に包まれた物を手に取り、ぎゅ、と抱きしめる]
同じには……したくない……もう、嫌だから。
[呟く表情は、いつになく真摯だろうか]
[部屋を出て師の所に戻ると、テーブルの上には飴の詰まったガラス瓶。
それを手に取り、荷物に入れて]
それじゃあ、宿に戻るね……え? その前に?
[具合を診せて行け、という言葉に。
反論の余地はなかった。
そんなこんなで、疲労と風邪、という診断と薬をもらった頃には、既に時間は昼過ぎ。
宿に戻ろう、と自宅を後にすれば村の中は相変わらず騒々しく……詰め所の方は特にそれが酷いような気がした]
あの子……大丈夫、かなぁ……。
[そんな、不安げな呟きをもらしつつ。ゆっくりとした足取りで、宿へと]
そっか。
じゃあ出てきたら教えてくれるかな。
[少し口篭り]
あの、ごめんね。
あたしも余計なこと言っちゃったんだ。
その、パトラッシュの声がって。
[ごめんなさいと]
[顔を伏せたまま謝って]
自分達と違うものを、か。
やっぱり怖いからなのかな。
[窺い見た顔は]
[とても苦しそうで]
これから。
どうなっちゃうんだろう…。
[カランという音で、宿屋の扉が開かれた。
正直、誰がこようとどうでもいいことではあったのだが、それでも、入ってきた人物には目を見開いて]
―――エリカさん!?
[思わず、立ち上がってエリカのそばへと駆け寄る]
具合が悪くて養生していたはずなのに、何故、外に?
ああ。いえ。そんなことより、熱は?下がったの?
[エリカの額に手を当ててみると、やはり、まだ熱は引いていなくて]
下がってないじゃない!
〔詰め所の中で待っていたのは、自警団の団長。お互い洟垂れ小僧の頃から知ってる奴だ〕
〔顎で部屋へと入るよう指示される〕
〔ランディが入ったところで、団長が人払いの指示をする。幾人かの血気逸った団員が不満の声を漏らすが、団長の意思が変わらないのを確認すると、しぶしぶ退席する〕
〔かちゃり、と鍵をかけ、部屋の真ん中辺りまで連れてこられたところで、ため息が聞こえた〕
…俺が何考えてるか、バレちまったか…。
〔命を粗末にするな、馬鹿野郎、と睨まれた〕
あ、ええと。
[まくし立てられる言葉に、ちょっときょとん、として]
……どうしても、一度、家に戻らなきゃならなかったから……。
[ぽそぽそと言えば、カウンターの向こうから、だから言わんこっちゃない、といわんばかりの視線が投げられて。
それに、ぅー、と恨みがましい声を上げるが状況は自業自得、助けは望めなくて]
[作業小屋から岩伝いに大きく迂回して、村の中心を避けるようにして丘へ。
昨夜のように追いかけっこが始まったものの、物影に隠れてやり過ごしたりしたお陰で、丘近くまで逃げてきた頃には自警団員の気配は後ろには無かった。
ランディに教えられた坂を見つけ、程なくして洞穴を探し当てる。
落ちかけた陽、烏がぎゃあぎゃあと鳴き騒ぐ声をバックにして、その場所はいかにも不気味な様相でその口を開かせていた。]
あのおっさん、なんでこんな場所知ってんだろうな……。
[ちょっと呆れたように呟いて、洞穴の暗闇を覗き込み。]
ちっとお邪魔するぜぇ、っと。
[一応声をかけて、中へと入る。
洞穴が返事したらイヤだなあ、でもそんな話どっかで聞いたよな、なんて、思いながら。
洞穴の中は土っぽくて、空気は少し冷やっこかった。
ひとまず丸まる。遠くでまだ、人々が自分を探して騒いでいる声が聞こえた。]
[何かを言い募るエリカの目を見つめ―――そして、ため息を吐く]
どうして、クローディアといい、貴方といい、治ってもいないのに治ったとか嘘をついてまで、無茶なことをするの・・・。
無理をして、倒れて、その時に悲しむのは、周りの人間だということに・・・何故、気づかないの!
[悲しげに、シャロンが目を伏せた]
[フランからの告白には、そっか…、と声を漏らし]
やっぱりあの時聞いてたんだね。
確かにパトラッシュは喋れるよ。
でも、だからって人狼だって言うのは間違ってる。
人狼は人にだって化けるんだから。
パトラッシュが何をしたって言うの?
誰かを襲った?
その気なら、部屋に招き入れてた僕が先にやられてるはずだ。
パトラッシュは人狼なんかじゃない。
[俯いたまま言葉を紡ぎ]
パトラッシュは違う…。
もう大切なものを失うのは嫌だ。
[その言葉と同時に瞳は真剣そのものになり]
僕は彼を信じる。そして、護る。何があっても…。
〔灰皿が目の前に突き出される〕
〔ありがたく受け取って、いつもの仕草で一本吸う…ややあって、ぽつりと呟く〕
俺は別に、あの犬っコロが人狼じゃないとは思ってない。
奴が俺以外襲えないような状況にして、ちゃんとした証拠が残ってからでも構わないかと思ってた事は認める。
〔ゆっくり味わうように吸い、細く長く紫煙をくゆらす〕
惨劇が終わるまで、殺し殺されがどうせ続くんだろ?
そういう話を聞いている。
人狼が誰を襲うのかなんざ俺には見当もつかねぇが、奴の尻尾をつかむことが出来るなら、俺は…。
〔ジュリアの元に逝けるなら、悪くない〕
〔本心からの願い〕
〔しかし、口には出さず〕
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