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[中から出てきたランディと視線がかち合って、息が止まる。
思わず身を引いて逃げかけて、その唇が動いているのに気付く。
「 そ こ に い ろ 」 ?
「動くな」って?
影から自警団員の声が何事か問う。
どうするか。考えて一瞬で答えを出す。
ランディを信じてみよう。]
[暫くして、裏口の戸が開けられる。
ちらっとランディの顔を見つめ。
そして、静かに、極力音を立てずに中に入る。]
[戸が完全に閉められて、ほうっと息をつく。
この建物の中に他に人の気配はない。
先ほどの自警団員も、表から帰っていく姿が垣間見えた。
ランディ以外は誰も居ない。
そのことをもう一度、身体全ての感覚を使って確かめ。]
……ありがとう。
[顔は合わせずに、ぽつりと礼を言った。]
〔パトラッシュが中に滑り込み、周囲に人がいないのを確認してから静かに戸を閉める〕
〔不意に、背後から声がかかる〕
…!?
〔誰か人がいたのかと焦り、急いで振り返った…が、いるのはパトラッシュだけ〕
〔ほう、と安堵の息をつく〕
…昨日のアレで、耳がおかしくなっちまったかな…。
俺はそんなにヤワなつくりはしてないはずなんだが…。
〔ぶつぶつ呟きながら、台所に向かい、受け皿に水を汲む。それをパトラッシュの前に置く〕
熱かったろ。飲めよ。
〔パトラッシュがどう動こうがあまり気にせず、作業台においてある煙草に火をつけ、灰皿を持ったまま窓際に移動して、外の様子を伺いつつ一服する〕
…大型犬で、人の言葉を喋る事が出来るから、人狼ってか…。
こいつがクローディアを殺ったって証拠があるとか、人語を喋ったところを確実に聞いたとか、確たるモンもねぇのに捕まえてどう調べるつもりなんかね。
裁きを下して、濡れ衣だって判った時、罪悪感を抱かない相手だからとしか思えねぇんだよなー。
だいたい、喋る口があるからって、犬の申し開きなんか聞く耳もたねぇだろ。
くっだらねぇ。
〔ぎゅぎゅっと灰皿に煙草を押し付け火を消す〕
[ランディの呟きに首を傾げる。
自警団員たちの噂から、自分が喋れるということはとっくに村中に広まっていると思っていたのだが。
どうやらランディはまだそれについては聞いていないらしい。
じゃあこのまま喋れないフリをしているのが良いのか?]
[一瞬考え込むも、察しよく目の前に水を差し出されて、とりあえずそれを飲むのに集中することにする。
限界まで渇いていた喉を潤す。]
ディーノは知っていた。
それなら、ディーノも人狼の仲間?
[巡る思考は]
[辿り着いてしまった先で]
[回り続ける]
わかんないよ。
誰なら信じていいんだろう。
〔親父の独り言は続く〕
…まぁ、よ。
俺は別に喰われても構わなねぇって気持ちもあるんだがな。
今、お前が俺を喰ってしまえば、この工房にお前が来た証拠が残ってるから、お前が犯人だってわかるだろ。
その受け皿に、お前の毛がついてるはずだから。
殺されるか、先に殺すか…。
それなら俺は殺されるほうを望む。
ただ、それだけの事だ。
〔カチリ、また新たな煙草に火をつけた〕
〔ふぅ、と紫煙を吐く〕
〔ここで始めてパトラッシュに視線を合わせた〕
…だから、お前が俺を喰いたきゃ喰え。
俺はお前のその長い毛でも握ったまま死んでやらぁ。
〔ニヤリと笑った〕
(…教えて、ディ……僕に、あの人の…シャロンの本質を)
[ぽーん。透明なジャグリングボールが宙を舞う。1つから2つへ。2つから3つへ。3つから4つへ。クリスタル・ペリドット・ガーネット・ターコイズが宙に舞う]
(場の浄化を…この一時だけ、悪しきものを排せ…。
その曇りなき身に、彼の者の真実を映し出せ)
[心を無にし、集中する。宙に舞う4つのボールが僅かな光に包まれ、手の中に戻るとまた一つに戻る。両手の中に収まると光は失せ。ボールを左手に乗せ、右手をゆっくりと退けた。そこに現れたのは──]
…トパーズ。
やっぱり…シャロンは人間。
人狼なんかじゃない。
[その結果に安堵する気持ちと人狼を見つけられなかった悔しい気持ちが入り混じる。彼女が自分の大切な者を手にかけた訳では無いことに安堵した。しかし──]
おそらくはクローディアが死んだことで気が触れた…。
それ程ショックだったんだろうな…。
[可哀想に…、とトパーズが輝くジャグリングボールを手に握ったまま、視線を落とす。それからふと考えた。自分はどうなの? ディが死んだのをその目で見て、狂いはしなかった?]
……狂うどころか、躍起になって人狼を探した、か。
感情が向かう方向が違ったってことなのかな…。
[考えたところでその答えは出ず。それから顔を上げ、手早く着替える。人狼を見つけ出すことは出来なかったが、こうしては居られない。自警団より早くパトラッシュを見つけなければ。懐にジャグリングボールを仕舞いこむと、駆け足で外へと飛び出した]
[しゅ、と軽いマッチの音と共に、部屋に煙草の匂いが立ち込める。水を飲みつつ、ランディの独り言に耳を傾け。
まともに働き始めた脳でゆっくりと内容を咀嚼する。
そして判断を下した。
こいつは「自前でモノを考えられる『人間』だ」と。
ランディになら話しかけても大丈夫だろう。
こうやって親切にして貰っていることからの恩義だけではない。今は情報が必要だった。シャロンは正確には何をやらかしてくれたのか。今、ディーノがどうしているのか。
逃げっぱなしではいけないのだ。
ディーノの元に戻らなくては。
傍にいてやると約束したのだから。
その為には、味方が必要だった。]
[水を飲むのをやめて。けほん、と軽く咳きをして。]
はん。
誰が人間なんてクソ不味そうなもん喰うかよ。
[笑みに応えるように、真っ直ぐランディを見つめた。]
〔…〕
〔………〕
〔とりあえず、今度は煙草を落とさずにいることに成功した〕
ちょ、おま…。
本当に喋れるのかよ…。
〔人狼から始まって、ずいぶんとこの村も御伽噺の通りになってきたな…と思いながら、長いため息をつく〕
なんつーか、随分タイミング悪い時に、村に来たな。お前。
〔現実感の伴わない出来事に、間の抜けた言葉を投げる〕
…しかし、こりゃ参ったな。
とっ捕まったら、間違いなく殺されるな。
何とか、あいつらを納得させるような方法が無いもんかね…。
〔眉間を軽く揉み解し、呟く〕
―工房―
[ノックをしようと]
[手を上げた時]
[聞き覚えのある声が]
ランディッ!?
[慌ててノックする]
[悲鳴のような声に]
[どうしたと後ろからも声が]
ランディが。
中にパトラッシュが!
[反射的に答えて]
[相手が自警団員であることに気が付き]
[慌てて口を手で押さえた]
「中にいるのか!?」
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