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……からすにいさま、いくん?
[小さく首をかしげて]
おらぁ、もどっても、うとまれるだけよ
やさしいんなら、いきたいと思うんよ
……からすにいさまが一緒じゃったら、こわぁないかなぁ
[それから思うよに]
天狗さまはおつよいから、したらおらん夢も、見ぃへんようになるかなぁ
[そっと、ねいろの傍に寄り、小さな頭を撫でて笑う]
ゆくかもどるかは、ねいろ坊次第。けど、坊は、ふう坊と離れてしまってもいいのかい?
そっかぁ。
迷うたわけではないかもしれんのね。
理由あったら、ここさくるんか
じゃけん、おらぁ、優しうなんてなかよ
あやめねえさまがお優しいんじゃよ
…………?
あやめねえさまが天狗さま?
[子供はようやくそこに思い至ったようで]
[眼差し受けて、潤む琥珀は烏を見やる。]
…さてな。
我はひとたび呼ばれし時は、帰りたいと願うたが。
されどふたたび呼ばれたは…天狗の見立てが正しきかな。
[切り下げ髪の童であった時を、思いて哀しげに笑む。]
おら、次第?
[それから離れるとの言葉に]
[小兄を見て]
[もう一度、大兄へと視線を戻して]
……からすにいさまとも離れとうないよ?
ふうれんともじゃけど。
えいかねえさまとも、あやめねえさまとも。
三つ目の問い――
[答えられぬと言われるも、すぐには思い当たらずに。]
ここでなくば、答えられるであろうか…
[問いかけるでもなく、呟くように。]
改めて、御挨拶を――
己等(おいら)は妖女と名の授けられしもの。
人の理にてはあまきつねとも呼ばれよう。
ゆくにしても、
かえるにしても、
己等(おんら)次第。
己等(おのら)は何れにしても、望みを叶えよう。
[――くすり、笑みを零せばいつものように]
今更ではあるけれどもね。
みえぬ心を見たきがゆえに、謀るようになって申し訳ない。
[雅詠の眼差し感じれば、潤み湛えた琥珀を向け。]
…なあに、たいしたことでない。
二度あることは三度というなれば、手間かけるはよくなかろうというだけじゃ…。
[抑揚なく淡々と。
されど哀しき笑みのまま。どこか漂泊するように。]
[むぅと、俯いて]
じゃって一緒にいたいん……
[だけれど]
[ちいねえさまがたがお別れになったときを思い出して]
[思い出してしまって]
[口をつぐむ]
[ねいろの言葉聞けば、屈みて瞳見つめ]
…望むであれば、また来られよう。
そなた、会いたき人はおらぬのか…?
[いるであれば、もう会えぬは寂しかろうと。]
あいたいひと?
[えいかの言葉に、首を傾げる]
[かかさまもおらず]
[本当のおやもおらず]
[ちいねえさまがたにとっては]
[平穏をこわしたもので]
[だけれど考えた顔にすべては消えて]
[やがてにこりと笑う]
[だけ]
[あやめの名乗りに目を向けて、小さく笑いを零してみせる]
天狗の謀りは、以前もあった。存ぜぬ振りはこちらも同じさ。
坊らは、もとより気にしますまい。
謝る事などなかろうよ。
〔巾着袋より取り出せしは小さき金の鈴、
鳴り渡るは白銀の其れよりも軽き音色。
……りぃん、……りぃん。
森の声も川のせせらぎも風のそよぎも、
澄みたる音は全てを包み込むやうに響く。〕
とは言えども、
この名は気に入ってはおらぬのだが。
さてはて、刻限にはまだ幾許かあるゆえに、
今すぐに決めろとは申さぬよ。
ただ、後に悔やまぬ選択を――
[りぃん]
[りぃぃん]
[鈴の音に]
[考えるように目を閉じて]
[何一つあらぬうつしよと]
[望むがままの天狗の里と]
[どちらが良いかはわかっていても]
[よきものを選べば はできない]
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