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[そしてしばらく掘り進めていき、それなりの大きさの穴を作り出し、一息つく]
逃げてもいいんだが、この雪で、村を迂回してってなると山か?さすがに無謀だ…それに、逃げるにしてもどうなってるのかわかってからじゃねえとな。
[こんな奇妙な状態だ。何が起こるかわかったものじゃない。と。
軽く汗を拭って空を見上げる
空は陰鬱な気分を表すように曇っていた]
―一階―
[昨日と違って広間に人の姿は少なかった。マテウスに連れ帰られてからも呆然とした様子だったエーリッヒは、今は眠っているのか或いは疲れ果てて動く気力もないのか、こちらに振り向く様子はない。男も敢えて声はかけずに、台所へと向かった]
身体をあっためるほうがいいよな。
[昨日のポトフの残りの野菜を木杓子で軽く潰して、バターライスを足し、チーズを溶かしてリゾットに仕立てる]
―外―
[気が付いた時には白銀の世界に立っていた。
どこか遠く記憶は残っている。
崩れるブリジット、マテウスの報告。
渡されて、手の中で冷えていった紅茶]
…選ぶ。
[手元には、家から持ってきた小さなランプ。
初めて自分で作った作品]
人狼も。
選んでいるのかしら。
[甦る銃声。
倒れてゆく影]
それとも、兄様のように…。
―台所―
ん、こんなもんかね。
[出来上がったリゾットを一皿よそうと、見つけた白ワインと一緒に、台所の小さなテーブルで、男は寂しい朝食をもそもそと摂り始める]
[意識を集中させているところに後ろから声をかけられたら、それはつまり危険なわけで]
[ガクン、]
[踏み外しかけたところを手摺りに縋りつくようにして事なきを得た]
……心臓にわっる……!
[心拍数が一気に上昇したのがわかる]
…何やってるんですか、ねえ?
[呆れたようにユリアンの様子を眺め]
[階段を軽々と降り、彼の一つ上まで]
落ちなくて良かったですよ
……ま、ここにこもってても、仕方ねえよな。
少し外で、身体動かすか……。
[小さな声で呟くと、そのまま窓枠を乗り越え、外へ。
一歩遅れて、黒がそれを追った]
─…→集会場・外─
[サクリサクリと小さな足跡が残る。
村の明かりはどこまでも遠く]
待っている人がいたのに。
[ユラリとランプの灯が揺れる]
誰もこんなこと。
望んでないのに。
[上空には重たい雲。
今の状況には嫌味なほどに合っている]
あなたのせいです。
[間違いではない。
伸びてきた手の位置は引っ張り上げようとするにはおかしくて、後ろにのけぞった。右腕を使わずほぼ左腕一本で支えているから、些か、どころではなく辛い。右足を、確かめながら下の段につけて体勢を立て直し、身を起こす]
[全く、と息を吐いて、向きを変え、再びゆっくりと階段を下り始める]
何をそんなに嫌がるんですかねぇ
[くすくすと笑った]
…見えてないんですか、ユリアン君?
[上に人がいるか]
[確認はしていないが、声は普通に届くほどか]
酷いですねえ、むさいとか。
俺そこまでむさいですかねえ
[少しショックを受けたような声をして]
…ごまかしちゃいけませんよ、ユリアン君。
間違えてしまいますよ?
[何をとは言わず]
[階段で立ち止まる]
--一階・廊下--
[ユリアン達よりは先に下りたのか、気づかないまま。]
[階下へ降りれば、温かな匂いがしたのでそちらの方へ。]
[一人テーブルで食事をしていたハインリヒの姿を見かけたので、そちらの方へと近づく。]
ハインリヒさん。こんばんは。
……昨日は、ありがとうございました。
[そうしてぺこりと頭を下げた。]
……ん。
[暖炉の火のおかげで、やはり、広間は暖かかった。
ほう、と息を吐く。外にいるときよりはマシだが、手は冷えていた。
人工とは言え、灯りがある分、階段よりは見えやすい。窓辺ならもう少し見えるだろうかと近づこうとして]
間違えるって、なにを。
[背後から聞こえた言葉。疑問を含んだ声を返す]
[白の上に着地する。
危なげない動きには、隙らしきものは全くなく。
日々の暮らしで鍛えられ、運動神経は元々発達しているが。
それが、更に鋭さを増しているようにも見えるか]
……ふうっ……。
あーあ……何にもなく、駆け回るなら。
ここら、いい場所なんだがな。
[零れ落ちる呟きは、愚痴めいて。
奇妙に日常的なそれは、やはり異質だろうか。
ふう、と一つ息を吐き、ゆっくりと周囲を見回すと、そう、遠くない所に灯りが見えた。
よくよく見たなら、雪の上にはそちらへと伸びる、足跡も]
……誰か……いる?
[小さく呟いて。そちらへと、歩みを進める。
先行するように、カラスが飛び立った]
[止めていた足を再び動かし、広間の方へ]
[ユリアンを追う、というわけでもなく]
さて。
何を、でしょうね。
取り返しの付かないことか、
それとも、他の何かでしょうかね。
[小さく笑って]
[くんと匂いをかいだ]
いいにおいです。
[ユリアン達に気付く前に、ブリジットに声をかけられて、男は振り向いた]
ああ、いや。俺は何もしてねえよ。
[正確には、何も出来なかったのだが]
嬢ちゃん、腹減ってないか?食欲はないかもだが、ちっとでも食えたら食っといたほうがいいぜ。
[後のことは勝手にやってしまうわけにもいかないだろう。
裏口の近くにスコップを立てかけて、もたれ。
熱くなった体をしばし、冷気にあてて冷ますが]
む?
[上から何か落ちてくるような音が聞こえ咄嗟にいつでも木箱から武器を取り出せるように手をつける]
[静寂の中、羽音が響く。
ゆるりと振り返れば小さな鳴声]
…かあくん、だっけ?
[たしかノーラがそう呼んでいた]
どうしたの、こんなところに。
[小さく微笑む。
掲げたランプの向こう、近付いてくる人影にはまだ気付かずに]
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