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[窓際のソファに腰を下ろす。
やはり、雲に阻まれてひかりは遠い。
また、見え方が変わった気がする。視界に残る赤は、炎だろうか、消し切れなかった血痕だろうか。それとも、焼きついて離れない、朱い花の色か]
……よく、わからないですけれど。
目と関係ないことのように、聞こえますよ。
[それは「理解している」答えだった。
けれど、「理解していない」振りをした]
[別の話し声が聞こえて、視線を動かす。
男と少女。その色を認めて、目を伏せた]
[届いた声は、ブリジットとハインリヒのものか]
[であるならばこの香りは、かれらが作ったのだろう]
そうですね。
関係ないといいことです
[小さく笑う]
気をつけて、ユリアン君。
…さて。
ところで、食事は摂りましたか?
いえ、探しに来てもらいましたし…。
[視線は下を向くも。][首は緩く横を振る。]
ええと…。
[食事の事を問われれば、少し間が空いた。][食欲は確かに無い。]
[ほぼ丸一日経ったのに、自然と湧いてこないそれは、やはり昨日の惨劇の為か。]
[それでも、行為を無駄にしたくなかったのと。][食べなければ、たしかに身はもたない事を頭が理解していた為。]
それじゃ、頂きます。少しだけ…。
[言って、気配の感じた方を振り返る。][ソファにユリアンの姿を見止めて、こんばんはと小さく声をかけた。]
[彼の視力云々は、まだ気づいていない。]
[かあくん、という呼びかけに、カラスはクァ? と鳴いて首を傾げ。
違うよ、といわんばかりにカァ、と鳴く]
……というか、かあくん、とか一体なに……。
[一方の相棒も声を聞きつけて。
呆れた口調でこんな呟きを漏らす]
……何してんの、こんなとこで、一人で?
[光の環と薄闇の境界で歩みを止めて。
静かな口調で、問いかける]
言っていることが、滅茶苦茶だと。
[右足をソファの上に引き上げて、組んだ手を、膝の辺りに軽く引くように添える。届かないひかりを見る代わりに、その上に顎を乗せて、炎へと向いた]
……まだ、ですが。
[小さな、少女の声。
それがこちらに向いていると知って、顔を上げないまま、挨拶を返した]
まあ、そんくらいはな。
[首を振る少女に、男は笑みを見せる]
それじゃ、今…
[言いかけて、ブリジットの視線を追い、ユリアンとクレメンスの姿に気付く]
よう、お前さん達もどうだい、リゾット。あったまるぜ。
…アーベル、さん。
[首を傾げるカラスと一緒になって首を傾げていれば。
サクリという足音はごく近くで響いた]
え、だって。
ノーラさんがそう呼んでいたから。
[呆れられれば困ったようにそう答えて]
何、してたんだろうね。
[どこか儚い笑みを浮かべて]
何、すればいいんだろうね…。
[ユリアンの答えを聞いて、くすりと笑った]
それじゃあ、ご馳走になりませんかね。
ところでめちゃくちゃですか。そうでもないと思うんですけど?
[名を呼ぶ少女に、や、と言いつつ手を振って。
ノーラが、と聞けはそうなんだ、とぽつり。
蒼の瞳には感情の色彩はなく]
こいつの名前は、ザフィーア。
[名を教えたなら、カラスはばさり、と一つ羽ばたいて]
……何を、か。
何を、どうすれば。
答えは、単純なんだろうけどね。
……でも。
ん、頂きます。
せっかくですから。
[その言葉は、クレメンスではなくハインリヒに答えたもので]
取り返しの付かないことは間違えてはいけなくて、
それと関係ないなら間違えてもいい、っていうように聞こえましたけど。
ああ、いけないとも言っていないか。
ただ、なんとなく、楽しそうにも聞こえますね。
[クレメンスには、素っ気なく返した]
いただきます。
いやぁ。いいにおいですから、お腹がすいてしまいました。
[ハインリヒにそう言葉を投げる]
あ、ここのユリアン君の分もよろしくお願いします。
運ぶの、手伝いましょうか?
[色々無残なことになるかもしれないが]
[ユリアンの方を見れば、自然とクレメンスの姿を見つけ。][彼にもぺこりと会釈を返す。]
今日はハインリヒさんが、だそうです。
[クレメンスの問いにはそう答えて。]
[顔を上げないユリアンには、少しだけ首を傾げた。]
そうですかね?
[一度、ユリアンに振り返って]
人生、何度も間違えを選んで生きてゆくものですよ
ユリアン君はまだ若いんですから。
少しうらやましくなりますね
[喉の奥で笑った]
[それが本心か否かは伝わらず]
ハインリヒさんは料理上手ですねえ
[といいながら、彼の方へと近づく]
[が、ブリジットに目を向けて、立ち止まる]
大丈夫ですか? ブリジット君。
[答えの代わりに、付き合っていられない、と言うように、息を吐き出した。
本当は、その話題を続けたくなかっただけ、だけれど。
右手を腰から離して、腰の辺りに触れる]
おっけえ、おっけえ。
ま、味は保証すっから。
[軽い口調で言って、三人分のリゾットを器に取り分け。白ワインも一緒にトレイに乗せて広間のテーブルに運ぶ]
神父さんは、動かなくていい。
[クレメンスの申し出は、もちろん、きっちり、きっぱり、お断りした]
ザフィーア。
[カラスが羽ばたくのに小さく頷く。
憶えておくねというように]
そう、本当は。
もう答えは出ているの。
[スカートのポケットを上から撫でる]
でも……
[光の境界線にいる相手をじっと見つめて]
……苦しい、よね。
[イレーネの言葉に、カラスはこくり、と頷いて。
差し伸べられた相棒の腕へと戻っていく]
答えは出てる……というか。
仕掛け人は、最初から一つしか用意してない。
[そういう事だよな、と。
小さく呟いて]
苦しい……か。
従えば、ラクになれるのに、何で、苦しいって、思うの?
[見つめる瞳を見つめ返しつつ、静かに、問う。
蒼の瞳の底は、光の狭間である事を差し引いても、見通せそうにはなく]
[そしてそっと音がしたほうを見遣ると、アーベルの後姿と、その先にイレーネが見えた
それだけといえばそれだけなので、特に気にせずに、裏口から広間に入るとそこに居る面々に]
よう、おはよう。何かいい香りがしているな
[そういって、暖炉に比較的近いところに座る]
[ブリジットが崩れても動けないくらい、...は疲労していた。
いや疲労していないほうがおかしいかもしれない。
普段は机にしがみついて書類処理しかしていない自分が、ここ3日で何度も雪の中を駆けずり回り、人の死を間近に見てしまっている。これでどうにかしない方がおかしい。
だから、アーベルがブリジットを横たえている間に、ふらりと...はノーラとアマンダの遺体がある集会所の外へと足を向けた。
冷たい雪だらけの地面の一角が掘り起こされ、簡易的な墓を形成しているその場所で、...はただじっと眠っている2人を見つめていた]
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