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[頭を撫でられれば、幼子のように笑う。][以前誰かに撫でられた時と、同じ反応を返して。]
はい…平気です。
昨日は何だか頭が痛かったんですが。
今は楽に。
[そうクレメンスには言いながら。]
[特別にはと言われ、そうですかと言いながら。][彼が離れテーブルに着くのを見送り。][自分も食事を勧めてゆく。]
[神に祈りは、しなかったが。]
[唇を引き結んだまま、広間に入る。]
こんにちは。
[恐らく少女にも正しい時間は分かっていないが、先に居た者には頭を下げておく。僅かに開いた口からの声は小さい。
何処か俯きがちに、食卓からも暖炉からも離れた場所に座った。]
[唐突に語られる言葉。
そこで紡がれる人の縁は、知る術もない、けれど。
ただ、それらの出来事が。
朱の花を抱く少女に、選択をさせたのだと。
滑り落ちた白銀と、雫とが感じさせた]
そっか。
じゃあ、君は。
……生きたい?
[投げかけられた問いは、どこか、唐突で。
問いかける瞳は相変わらず、底知れぬ、蒼]
そうか?けど、顔色も良くねえぜ。
ま、しっかり食って体力だけでも落とさねえようにしな。
[男は、それだけ言って、ユリアンから離れた]
……元々、白いらしいですから。
余計、そう見えるだけじゃないですかね。
[離れていく気配に声を投げる]
[入ってきた人影が、皆とは離れた位置に動くのを見る。
声は聞こえなかったが、色と形で、誰かを知った]
リュー。
……、食べた?
[何を言えばいいか思いつかなくて、問いを投げた]
でも…って、………そんなに子供じゃないです。
[気にするな、にはそれでもと。すまなそうに見上げたが。]
[いい子には、むぅ、と口を噤む。][その様子は歳相応とはいい難く。]
[泣くだけ泣いたからだろうか。
...はボロボロになった顔を拭う事もなく、ゆっくりと立ち上がると、徐に集会所の裏にある薪割小屋へと足を運んだ。
すでに外は暗く、月明かりしか頼りになるものはなかったが、それでも彼の求めるものが落ちているのを発見し、そっと手にした]
仇をとる……。
そんな大それた事は考えていないけれど、それでも一矢報いるには必要かもしれないから。
[手にしたもの――薪割用の鉈をそっと背中に隠し持つと、涙の後を隠さぬまま、裏口から集会所へと入った]
こんばんは、リディ。
[広間に現れた茶色の影にはそう挨拶して。][彼女の小さな声は、ぎりぎりの所で耳に届いた。]
[少し遠い所に座る彼女を、ただ見送った。][どうしたの?とは聞けなかった。]
……。
[生きたいか。
そう尋ねられれば、一瞬の沈黙]
…ううん。
それも、もういいの。
[だが口から紡がれたのは]
同じように感じている二つの苦しみの片方でも。
少しでも減らせるのなら。
[影に揺れる、小さな微笑]
……うん?
見ていません、けれど。
普段通りなら、外じゃないかな。
[普段通り。
それがこの場で、どれだけ異質な言葉であることだろう]
・・・・!
[掛かった声、何時もの呼び名に一瞬身を竦める。様子が見えていたなら、まるで恐れるかの様に見えたかも知れない。]
・・・まだ、だよ。
[ややあって、ユリアンの問いに返った声は平静を装えていただろうか。顔は上げなかった。
ハインリヒの問いにはやはり少しぴくりと動いたが、知らなかったから何も答えない。]
[ブリジットの反応に、くくくっと低い声で笑い]
まあ将来有望ではあるのだろうがな
[それは暗に子供だといっており、そしてハインリヒが何気ない口調で言った言葉に]
アーベルか?イレーネと一緒に外にいたのをさっき見かけたな。今もいるかまでは知らないがな
[そして、それがどうした?といった意味合いの眼差しを送り]
……そう。
[返ってきた言葉に、零れるのは、小さなため息]
俺は、生きたいよ。
何があってもね。
[小さく言って。
蒼はゆっくりと、空へ向けられ]
……雪でも降り出しそうだね。
戻ろう、みんな、心配してる。
[沈黙の後に向けられた言葉は。
ごく何気なく、日常的なもの]
[ぐらり、揺らぐ視界。
ああ、自分はしくじったのだと、気づいたときには、
既に視界はぼやけていた。]
君は、私をなんだと思ったの?
エーリッヒ。
君の手帖には、「一人」だけだと書いてあったのか。
[声にはならなかった。血をこぼす余裕もなく、
意識も身体も全てが、冷えていく――]
―二階・個室―
[眠れずに居ても、やはり身体は疲労していたようで
ベッドに横たわるといつしか意識は落ちて]
[目覚める]
[外は明るいけれど、日射しは感じられず]
……今日は、天気が悪くなりそうかしら…。
[起き上がり、外を見て]
[天気が悪くなるのなら、早くしなければいけない事がある]
[簡単に身支度を直して、外に向かって]
[見えなくなってきてから、それ以外の感覚に頼るようになった。
それに何より、よく知っている者であったから。
リューディアの声の揺らぎは、理解出来た]
そっか。
……なら、食べない?
それとも、またグリンピースでも入っているのかな。
[対して、返す僕の声は、常と変わらなかっただろう。
――温度だけは、低かったかもしれないけれど]
[ゆっくりと、ソファから立ち上がる]
[...は集会所に入ると、話し声の聞こえる広間――ではなく、ピアノのある部屋に入った。
昨晩はピアノが鳴っていたためまだ暖かな雰囲気があったが、今はまるで様相を変化させ、ただ冷たく寒い空間に感じられた。
...はピアノに歩み寄ると、蓋を開けて鍵盤をなぞった。
埃はなかった。
白と黒の鍵盤は主を失ったように寂しく見え、それが再び...の瞳に涙を湛えた。
だが涙を流す事無く、...は鍵盤を1つだけ鳴らした]
「ポーン」
[寂しい音が鳴った]
―外―
[外に出る]
[二人の遺体は昨日のうちにそこに運ばれていて]
[既に埋葬が終わっているそこに歩み寄り、祈りを]
……わたくしは、何をなすべきなのでしょうね?
[もう答えない二人に問い掛けて]
これが、教会のしたことの行きついた先なら……
断ち切るべきなのでしょうか……
でも、どうすれば……
[言葉を閉ざす]
[深く、強く絡み合ったそれは、簡単には壊せないだろう]
[ふるりと頭を振る]
[自分が考えてもどうなるものでもないだろう]
見守っていてくださいますか?
[そう問いかける]
[もしかしたら、ここに眠るのは自分だったかも知れないのだから]
[また、暫く目を閉じ、祈りを捧げて]
[そして急いで集会場に戻っていく]
……うん。
ごめんなさい、変なこと言っちゃった…。
[俯き、呟く。
それから足元のランプを拾う。
もう一つは拾わないままに]
雪、降るのかな。
[一歩、アーベルへと近付いて。
重たさを感じさせる空を見上げた]
[薪割り小屋から鉈を手に集会場へ入っていくミハエルを見送った]
・・・困った子ね。仇・・・。
そう、仇・・・なんて。
[空に輝く月を見上げる][思い出すのは、夫の遺体]
[彼の近くに残されていた、犯人の手がかりのボタン]
[ろくな捜査もなく、夫の死を事故と決め付けた自衛団の不自然さ]
[一時は仇を探そうと思ったこともあった]
[それを思いとどまらせたのは][愛娘の笑顔]
復讐は復讐を生むの。それは、無益なもの。
だから、お願い。仇討ちなんて考えてはだめ。
そんなことをしても、誰も喜びはしない。
万が一、あなたが怪我でもしたら・・・その方が、悲しいもの。
[言葉も想いも届かないのだろうか]
……。
[視線は空に向けたまま]
…はい、ごめんなさい。
もう言わないわ…。
[カーディガンの前を掻き合わせる。
堪えていた痛みが僅か引いてゆくのに。
逆に涙が浮かび上がった]
様子といっても二階から飛び降りた。ってのはわかるが、それ以外は後姿を見ただけで…
[矢継ぎ早に聞くハインリヒに、そこまで答えた後、すっと目を細め]
…そういうことだと…いうのか?
[明確には言わないものの、逆に問い返し]
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