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[横を擦り抜けようとするユリアンを、止めようと、そう思ったのが何故なのか男には、はっきりとは判らない。ただ気がつくと、反射的に、その腕を掴んでいた]
待てよ。何が嫌だって?
ああ、そうだな。大丈夫なようだ
[しばし、見守っていたが、危なげなく洗っている様子にようやく安堵したのか]
では、すまないが任せるよ
[そういってキッチンを後にした]
[手を伸ばす。
影を手がかりに立ち上がろうと]
っ。
[力を入れたところで、またカクリと膝が笑う。
必死に力を入れて堪えようとして、加減無く掴んだ]
いえいえ、どうぞゆっくり休んでいてください
[マテウスにそう言った]
[彼が出て行って、あわだらけの食器を水で洗い流す]
[ふと口元に笑みが浮かんだ]
[だがそれは一瞬で]
さて、あとは拭くだけですね
[マテウスの声には少し励まされて。][次に聞こえたシスターの声には、微か笑みを浮かべながら。]
おなかがすいたら…そうですね。
…そういえば、アマンダさんも居ませんね。
食事時には毎回顔を出すのに。
[何気なく、シスターから出なかった名前をぽつりと呟いた。]
[そこここから聞こえる話し声]
[微かな緊張と不安が隠しきれずに混ざっている]
……「汝の隣人を愛せよ」と言いますけど
……それが「人狼」であった場合はどうすればいいのでしょうね。
[ぽつり、ぽつり]
[「殺さなければ」と言うことは判っているのだけれど]
[だけど、神に使えるもの、と言う立場がそれを阻害する]
……でも、時が来たら?
[そのとき自分はどうするだろう、と]
[青年の悲鳴を聞いても、男は手を離さなかった。奇妙な、怒りに似た、けれどどこかそれとはずれた感情が沸き上がる]
アーベルもリディもイレーネもおかしいが、お前も変だ。ユリアン。
いや、リディやイレーネ…それにエーリッヒは、まだ判る。
システムってやつに組み込まれているらしいからな。
だが、お前やアーベルは?
親しい人が目の前で亡くなったてのに、この上隠し事だの弱みは見せたくないだの…正直異常だぜ。
それとも、お前さんも、この茶番の役者の一人なのか?
て、ちょ、わ。
[イレーネの反応は予想外で。
それでも、結果的には支える形となるだろうか]
……だ、大丈夫ですかと……?
[そっと、問いを投げかける]
―→広間―
[戻った広間]
[皆の様子が沈んでいる]
[ハインリヒがユリアンの右手を握っている]
…ハインリヒさん。
反対側の手の方が良いと思いますよ。
[クレメンスの言葉が、男の耳に届く。ハッとして、手の力を緩めた。けれど昂った感情は収まらず]
お前さんも、何か知っていそうだな「神父さん」
[身上書にあった『記憶喪失』との記載。それも、今となっては鵜呑みには出来ず]
[集会場へ飛ばしたカラスはそろそろついたか、それともまだかと思いつつ]
……無理、しないでいいよ。
[朦朧とした様子に、ため息をつく。
歩かせるのは無理か、と割り切り]
ちょっと、ごめんねっと。
[短く断って。
少女の身体をひょい、と抱き上げる]
この方が、早い。
……僕は1年前に、ここに戻って来たばかりですから。
それに、実感が、湧かないのかもしれませんね。
[身体は正面を向いているから、半身を捻ったような格好で。
視線が、男の青を捉える。
適当な事を並べて、答えようとした。
なのに、最後の問いかけに、表情が歪むがわかった]
――そうだったら、
どんなによかったか。
[異常な答えだと理解していても、口から出るのは止まらなかった]
ん?
俺ですか?
[振り返る]
[ハインリヒを見る]
記憶すらも落っことしてくる俺が何を知ってるというんでしょうね?
[困ったような顔をして]
少し、頭を冷やした方が良いのでは?
……クレメンスさん…?
[ふと現れて、そのまま立ち去る彼に声を掛ける間もなく]
何か、ご存知なのでしょうか…。
[聞こえることのない問いはそのまま消えるか]
そうだったら?
[ユリアンの言葉を鸚鵡返しに聞き返す]
どうだったら、良かったってんだ?
お前は、何を知ってる?
[声は、今は静かだったろう。それは、探偵としての習い性の通りに、尋問の基礎を忠実に再現して]
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