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[元気そうと苦笑をもらしたジョエルに、頬を大きく膨らませて]
元気じゃないもん!
長老ったら、あたしに暴力ふるって気絶させている間に、ここに連れてきたんだよ!
[自覚すると痛む首筋を擦りながら、怒りがじわじわとこみ上げてくる。
と、自分が意識を失う前に使用人と襲撃者が口にした言葉を思い出した]
……そういえば、私がクロちゃんの力になるかもしれんってどういう意味なんだろう?
[己の血筋を理解していないため、...には謎の言葉だった]
なるほど、そういう理由もあったわけか。
[リディアの言葉に、一人頷く]
それにしてもあのくそじじいも混乱してるとしか思えんな。
いくら巫女の血筋だと言っても、お前とクローディアでは力の質も性格も違う。ここに送り込んでまで何をさせようというのか。
[なんだか各方面に酷い感想だった]
まあとにかく、気の毒だったな。お前は虚に囚われたわけではなさそうだし。俺が居れば暴力くらいは止められたかもしれないが、このていたらくだ。
冷たい身内を持った身の不運と思って諦めてくれ。
[カルロスが戻ってくるまで扉に凭れ、待つ。
動いていた方が楽との言葉は否定できず、口の端だけ歪めた。]
………当たり前だ。お前達の関係に興味はない。
近くにいるならば、変化も判るかと思ってな。
[不快さを露にした顔に、顰め面を向ける。
エリカに付き寝ずの番をする姿が堕天尸には見えず、問う事にしたのだとは言わない。]
巫女の……血筋?
ナニソレ?
[それが力の暴走の一旦だったかも知れないのは、...はわからなかったが……]
って、ジョエルんも何気に毒舌ね? でも、その感想は同意だよ!
大体虚にとらわれるって、私がそんな事になるわけないじゃない! もう! 長老の目って節穴以上に悪くて頭もさいっていレベルに酷すぎだよ!
[と、そこまで愚痴をこぼして、はたと気づく事があった]
……そういえば、何でジョエルんがここにいるの? クロちゃんが居るって事は、ここが結界樹の中なのはわかるけど……
[人がいなくなった後、狐は長老の居場所を聞く。
そして向かい、口にしたことば。]
リディア嬢は、ざんねんながら。
お名前を聞いたので、彼女がどうかと考えてしまいましてね。
あァ、夜も遅いので、では、失礼。
[それだけ言うと、外へと向かい、ふと立ち止まる。]
――それでも、虚の使徒とやらに、良いプレッシャーになったと思います。
俺は、長老殿を責めはしませんよ?
[今度こそ失礼、と、まるで演技のように頭をさげて、空の上へと。
戻る先は自宅。部屋の中、あえて片付ける人はいないのだから、朝方見たカルロスの反応もしっかりと残っていた。皺のよったシャツを拾い、狐はわらった。]
お前は俺と同じ、というには少々遠いが、巫女の遠縁だ。知らなかったのか?
お前の家が火事で燃えたと聞いた時は、もしや巫女の血筋を狙う堕天尸の仕業かと思ったくらいだ。
翠流と火は相反するもの、決して交わらぬ反属性だからな。
[そこまで淡々と説明して、何故ここにいるのかという問いには、思い切り溜め息をついた]
どうやら俺は、堕天尸にここに追いやられたということらしい。
我ながら、間抜けにも程があると落ち込んでいたところだ。
─施療院─
[光を感じて目を覚ます。小さく欠伸をして瞬いていると、ラウルがくるる、と鳴きつつ顔を覗き込んできた]
……ん。おはよ。
[短く言って、微笑む。
翼の疼きは大分治まっていたが、やはり、未だに残って]
ちょっと、出て来るか……。
[小さく呟き、ラウルを肩に乗せつつ、部屋の外へ]
……私ってクロちゃんの親戚なの?
え? 誰も教えてくれなかったけど……本当に?
[どうやらさすがに初耳だけあって、多少疑問に思っているが、それでも次の言葉に愕然とした]
……私達の羽の色って火苦手なんだ……。
だったらあの事故は?
あれって私の力の暴走じゃないの?
[力がたまたま火の元を直撃したという思考はぴたりと停止していた]
[スティーブに声を返しざま擦れ違い、水をエリカに渡しに向かう]
ほら、飲んで。
心配は…したけど、まあしょうがない事だし。
[微苦笑を零し、扉へと振り向く]
少し、スティーブと話ししてくるから、無理せずに休んどきな。
[ただ、落ち込んでいるジョエルには...が嘆息して]
だからちゃんと休んでしっかりやらないとってアレほど言ったじゃない!
半分は自業自得よ!
[と、頑固さに少し釘を刺した]
[時間はすぎ再び日の昇る時間に。
狐は屋根の上、羽根を広げて座っていた。]
さァて、次はどうするか。
鷹目殿の目もあるが――何とか成るだろう。
[まずは暇をつぶしに結界樹へと行こうと、立ち上がって翼をはばたかせた。]
変化…?アイツがそう簡単に変わるもんか。
下手をすれば、アイツは普段通りでも虚よりか性質が悪いんじゃないか。
[向ける言葉はにべもない。
少し、不審の眼をスティーブに向け、]
なんで…俺にまでそんな質問を?
アンタは、それほどにまでアイツを警戒してるのか?
ああ、ほんとうだ。
力の暴走?そんな話は聞いていないが。
そもそも、翠流は破壊や争いには向かない力だぞ。
守護天将の中では智将ということになっているようだがな。
おかげで俺も、護衛とは名ばかりの雑用係だ。
[そういう自覚だったらしい]
[施療院の中には、複数の人の気配。
顔をあわせれば、何か小言を言われるな……と思い。
子供の頃さながらに、近くの窓からひょい、と外へ飛び出す]
……樹の近くに行けば、少しはやりやすい……かな。
[呟きながら二翼を開き、ふわり、島の中央へと]
だって……だって……私が助けてくれた人がそう言ってた……。
あ……そういえばあの人は誰……?
知ってるのに知らない……ただ羽の色が普通と違うような……?
[記憶は混乱をきたして、少しその場に蹲った]
[蹲ったリディアの傍に近付き、顔を覗き込む]
羽根の色が違った?
お前は一人で火事の跡に残されていたから両親が外に逃がしたのだろうと聞いていたが、誰かが傍にいたのか?
まさか――
[飛行はやはり、どこか不安定。それでもどうにか、落ちずに島の中央、結界樹の根元へとたどり着く]
……あーあ。
この程度の距離で疲れちまうようじゃ、とても外になんて出られやしないね……。
[呟き、見上げるのは蒼穹。
幼い頃、その先にある見知らぬ地に抱いた憧憬は未だに強く。
それが『外から来たもの』に惹かれ易い気質に反映されているのは、当人以外は知らぬこと]
さて……と。
[呟き、意識を凝らす。
普段、隠しているもう一対の翼へと]
お父さんとお母さんは……血と煤にまみれて……柱の下になってて……。
あれ?
回りも火でいっぱいで……。
そう。
え?
ああ、そう。私は誰かに背負われて……。
[ぐるぐると回っていく思考に、意識が一瞬だけ途切れてその場に倒れそうになる]
虚の力は、人の心の闇に忍び入るという。
お前が、自分のせいで両親が死んだと思い込んでいたなら……それはずいぶんと深い闇の筈だ。
やはり、巫女に近付ける立場のお前や両親を狙ってのことだったのか。
[そらをゆっくりと動く。
目を落とすと、結界樹の範囲外に、己の落とした種のような、虚がひろがっているのが見えた。]
――さて、気付いただれかが、何かするやら。
[つぶやき、そのまま結界樹の範囲内に。
すぐに樹は見えた。
その根元に紫の影。]
[水を飲ませる様子を黙って見、振り向いた顔に頷く。
不審の眼も逸らす事なく受けた。]
………性質が悪いのは同意だがな。
お前にまでと言うより、お前だから聞いてみた。
誰より近くにいるし、それに……お前が堕天尸ならエリカにずっと付いている理由が納得できん。彼女も堕天尸ならわざわざ巫女の居場所を教える理由などないからな。
[遠回しだが、カルロスへの疑いが減っていると告げる。
視線を窓に向け、低く呟いた。遠く見えた翼の色は判らない。]
………ケイジは、読めん。
あれは腹に一物もニ物も抱えている…。
さぁ、て……。
[呟き、見上げるのは高き枝。
四翼を用いて初めて飛んだのは、実のある場所。
そこを目指して、飛んだ]
……って。
やっぱり、慣れてないときっついか……!
[そんな言葉を漏らしつつ、まだ慣れぬ四翼を操り、実の近くの枝までたどり着く]
ん……
[グラスを受け取り、傾ける。
こくん、小さく、喉が鳴った]
十分に休んだ、と思うのだけれど。
それより、そちらのほうが――……
[続く言葉は、扉へと向かう背には届かぬと思ったか、紡がれず。
首を巡らせて、自然の光を迎える窓を見やった]
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