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まずいと思ったら、呼びはしない。
[アーベルの問いには簡潔に答え、ユリアンの目はまっすぐに見返して、三人とも、入れと、もう一度]
[説明する時に、視線が彷徨っていたためか、接近に気づけず]
……へ?
[惚けた声の直後に、額に一撃。
そも、運動神経は昔からよろしくないため、避ける事などできず。
同一空間にいるためか、痛みらしきものもしっかり感じた]
[ぺしーん。
存外、いい音が立った気がする。
そんなことをしても、振り返る者は誰一人いない。
ふむ、と納得した様子で腕を組み、頷いた]
なるほど。
封じがこのようなものとは、思ってもみなかったが。
となると、長殿や――…他のものも、いるのか?
いや、生者と死者が共に在れるとは思えないな……。
[呟き、思考に耽る]
[読書室に皆が揃うと、布をかけたキャンバスの傍に立ち]
ミハエル。絵を見つけた。確かめてくれ。
[静かに言って、布を取り払った]
しかしだな。
やはり、言わないこっちゃないじゃないか。
いや、私も他人の事は言えんが――
単なる失敗というよりは反撃を食らいでもしたのか。
……せめて、誰を調べるかくらいは言っておくべきだったな。
[とはいえ言っていたであろう人物はこうして此処に居り、
他に言うべき者も見つけられてはいなかったのだが]
[後から入る人達を待って。
誘導されたのは、布の掛けられたものの前。
それから]
…絵?
[その言葉の意味を理解して、息を飲むのとほぼ同時だったろうか。
布の下から現れた、一面の青と]
[布が取り払われたキャンパスには、
ヒカリコケで光る金の髪に、綿毛の雲。
海の青に空の雲。
目を細めて、じっとみた。]
……それを確かめるためだけに、殴らんでくれとっ……。
[額を押さえて、ため息一つ。
精神体で嘆息できる、というのも妙な話しだが。
この辺りは、感覚的なものなのだろう]
……じじ様は、多分どこかにいるだろうな。
でも、ここは、『心の場所』じゃない。
恐らく、あちらと……俺たちのいた場所との、狭間の空間に当たるんだろうな。
[思案する様子に、説明して。
続いた言葉に、軽く目を伏せて]
反撃、か……調べたのは、あの子……リディ、って言ってたか、さっき。
[読書室まで来ると、オトフリートが絵に掛けられた布を取り払う。
そこに描かれていたのは、ある程度予想していたもの。]
……ああ、やっぱりかよ。くそったれ。
[静かにそう呟く。その目は怒りが一周してひたすらに冷たく。]
[決して、下手な絵ではなかった。
それなのに]
…っ、
[凍り付いた身を酷い違和感が襲う。
そこに描かれた姿故か。
それとも、正統な『絵師』の絵でなかったからか。
ぎ、と奥歯を噛み締めて、目を逸らした]
血液を取り違えるなどという、
馬鹿な事をしていない限りはな。
[終わりの重さを感じる声には、淡々と答える。
しかし、それを伝える方法がなければ、意味がない]
……戻る方法はないのか。
私の身体は――診療所か?
[言うなり、歩み出す。
つい人ごみを避けそうになるが、その必要はないようだった]
……んで。オト兄さんはこの絵を何処で見つけたんだよ。
[目線をオトフリートに移し、問い掛ける。
その眼は感情を伴わない冷たい眼のまま。]
では、この絵は、お前に預ける。
[頷くミハエルに、静かに言って、布を元のように掛け直した]
意外と穏やかな顔をしているな。
[布に隠れる前に絵を見て呟いた声は小さく]
[歩くような、漂うような感覚――]
―広場―
なに。だれかいるの。
[生者以外、という意味でだが]
[というかこの声が聞こえるものが存在するのか]
[よくよく意識してみれば、
存在がふたつだけ、明確になってくる]
!
エーリッヒ様。
ミルドレッド様まで?!こっちにいるの?
なに、どうなっちゃってるの?!
[驚きのあまり不機嫌など吹きとんだようだ]
使うの。
海の中で、息継ぎに
[アーベルの問いに、
にへらと笑いながら、二人を見送る。
しばらくその場にいてから、手のひらをみた。
闇色の目で。]
まあ、ふつうにけがしてたから、あんまり気にしないのかな。
[白の下で、青がじわりとにじんだ気がしたけれど、
ぎゅうと手を閉じる。]
ま、いっか。
あの子の興味は、『海』に向いてたからなぁ……。
まさか、絵筆ほしがるなんて、思わんかったよ。
[小さく呟いて]
こちら側から戻る方法は、恐らくない。
俺が知る限りでは……絵筆が二本揃って『解放』を行わない限りは、戻る事はできない。
[他になんの術もないのか、と問われれば。
絶対的に否とは言えないのだが]
これが…なんか。
[息を呑んで絵を見る。考えても見れば絵師…が描いたわけではないだろうが、心を封じたという絵を見るのはこれが初めてだろうか]
…ん、この絵もちゃんと持っておかないと、だよな。
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