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なにやってんだよ、オイ。
そんなふらふらして廊下をずぶ濡れにされちゃ迷惑だぜ。
[ネリーがバケツを用意して拭いていたからニーナも出来るかと思えば見ているだけで危なっかしく、文句を言いつつ結局は手を貸す。それもバケツを下ろすまでの話で拭く方には感知せず。顎に歯形の残る親指を当てて目に映る光景と別のことを考える]
[階段へと向かえば廊下に広がる黒ずんだ紅を拭き取るニーナと、手伝わず眺めて居るだけのような不精髭の男の姿があった]
[夜中よりは薄くなった紅。それでもあの時の光景はありありと思い出される。その光景を打ち消すように一度瞳を閉じ、一呼吸置いてから彼女らの横をすり抜けようとした]
なるほど、な。
殺した側から、うら若き娘の何かを探ったのかな?
あくまで想像の域は越えないが、なかなかグロテスクな光景だなぁ……。
殺した者を何とか探ったのならば、それなりに頭の中に入っていくが……
[ギルバートの琥珀色の目は、少しずつ色を失い、口許は緩く開く。]
もし貴方が、探る為に乙女を殺したのなら、貴方の行動は魔物の仕業と変わらない……
そうだろう?クインジー殿……
土を盛るお手伝いはいたします。
[ネリーの元に行く人の背を、歩み、追う]
[男手が必要だと言いたそうに青の男を見る事も忘れず]
[ここに来る前出て行った者達の姿と獣の爪と牙が裂くや振るわれたかどうか。明らかに害しやすい目の前の少女が生きている理由。獣はどこに――誰を隠れ蓑にしているのか。
思考の時間は思っていたより長かったらしい]
…あ゛? 終わったのか。
[汚れた水を運ぶのも面倒と手近な部屋の窓を開けて外へと赤い水に触れぬよう捨てる。埋葬の人々の様子の異様さを入る風の匂いで察し、低い声が出る]
なんかあったな。良くも悪くも手がかりになるか。
[空のバケツをニーナの傍に置き、階段を降り始める]
[立てた膝の上に、スケッチブックを乗せた。
未だ何も描かれていない頁を開き、皺の寄った紙を広げる。
ポケットから取り出した鉛筆の先を置き、線を重ねていく。
形作られていくのは、人の輪郭。
されど、誰かと判別出来るようになる前に、止まる手。
息を吸い、吐き出す。
再び動き始めた手は乱雑に、絵を黒く塗り潰した。
手までに色が移る程に重ね、ふと力を抜く。
鉛筆はからりと床を転がっていった。
眼差しすらそれを追うことなく、
左腕に手で添え、眼を閉じた]
……、変なの。
[*じくりと、熱*]
探るためにわざわざ殺す馬鹿がいるか
生きるために殺した、それだけだ
お前は自分が生きるために他人を殺すのを嫌がるかもしれないが、
己は己が生きる為に――生かす為に他人を殺すことに、なんら抵抗を覚えない
今更一人も二人も変わらないからな
[笑う]
番人から聞いていなかったか
死者が、終焉を齎す者だったか知る者がいると――
[赤い水が外を落ちて行くのを見ていました。
遠くの色彩はぼやけてしか見えず、ちらちらと動いているのしか分かりません。]
何か…?
[かたん、と軽い音がして横を見ると、バケツがあるのが分かりました。
手元に引き寄せます。]
[ふと、横切って行く青が見えました。]
…シャーロット?
[何気なく名前を口にして、けれどそれが届いたかは分かりません。]
……いいや。念のために聞いておこうと思ったまでさ……。
もし貴方が「探る為に殺す」ような人間だとしたら、たとえ神からどんなに強い力を与えられた存在だったとしても……話を聞くだけでも御免だね。
ああ……。確かに番人殿がそのようなことを言っていたね。思い出した。冗談半分で聞いていたからね。
貴方がその「死者を見分けられる」方なら……どんな方法で其れを見分けるのかな。
そして、俺にその「見分ける」現場を見せてくれることは、できるかな……?
正直、ただ話を聞いただけでは、眉唾もので……信じにくいんだ。俺の周りにいる紳士淑女の皆様は既にご覧になったのかもしれないけれど……少なくとも俺は、大切なシーンを見逃してしまったようで、ね。
[クインジーの右目を、じいっと見つめる。]
ハーヴェイ殿の分の穴もお願いいたします。
[そう、青の髪を持つ男に告げて]
[女はもう一人に向き直る]
ネリーを穴へ。
足を持っていただけますでしょうか。
[女は頭の側へとまわり、作業を進める]
[土を被せ、その姿が見えなくなるまで]
やれやれですよ。その議論は、先ほどもナサニエルさんが
行ってきましたし、疑えば何でも疑えるでしょう。
[首を竦める。溜息。]
私は、埋葬のお手伝いに来たのです。
議論が尽きるのが早いか、亡骸が腐るのが早いか。
埋葬を行わないのであれば、私は失礼しますよ。
[そのまま、すたすたと城内へ向かっていく。]
ふらふら立ち歩いていると、殺される対象になるそうですからね。
どこかに閉じこもって、時間を潰していることにしますよ。
[もうひとつ深い穴が出来る頃、女は話し合う二人に声を掛けた]
ハーヴェイ殿を運んでいただけますか。
このままと言うわけにはいかないでしょう。
見るだけだから何も変わらんが?
[ギルバートの問いに、動揺の欠片もない]
少なくともお前達からはなにも変わらない
己の目だけが見る
幻みたいなもんだろうな
で、立てそうか?
[問いかける]
[不精髭の男の一瞥は意に介すことも無く。しかしニーナからの呼びかけにはぴたりと歩みを止めた]
…なぁに、ニーナ。
[振り返り、紅紫の両目をニーナへと向ける。声は押し殺したとも言える酷く冷静なもの]
[ニーナの呟きは耳に届くが実際見に行かない内は返す言葉は持たず外へ出る。大体の場所は上から見ていたので見当をつけて早足で近寄る]
なんだ、まだ埋めてねえのか。
あっちは掃除もう終わったみたいだぜ。
[顎で出てきた玄関の方を示し、ハーヴェイの無残な姿に目線を向ける。片方上げた眉は驚きより苛立ちめいていた]
チッ、コイツがやられたのかよ。
最後まで役に立たねえヤツだ。
[掠れの残る低い呟きを吐き捨て、ハーヴェイの傷をぎらぎらした目で見る]
番人のものと似てるな。
パーツも足りねえ。落としてきただけって訳でもねえだろ。
[立ち去る女にあからさまな溜息を吐き]
[あらたな男の声に、ぽつりと零す]
泉に沈めた方が早かったかもしれませんね。
今更に過ぎないのでしょうけれど。
死体が一つ増えたから、まだ終わらないんじゃないか
まあ後は手伝うほどでもないな
[内容は、つまりハーヴェイの死体に関しては、男も見て悟っている]
[ケネスの横を通り過ぎ、城へと戻る]
武器について詳しく聞かれたな
そこらへんの連中には、昨夜お前と彼女がいたことは言っていない
[その時、ケネスにだけ聞こえるか聞こえないか程度の声音で、男はそう言った]
[そのまま城の中へと入ってゆく]
[青い色をじっと見上げます。]
…いえ。
何だか、違うひとみたいに思ったものですから。
[呼び止めたのは、いつもと少し纏う空気が違ったように感じた、それだけでした。
少し堅く感じるものの、声は確かに彼女のもの。
緩く首を振りました。]
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