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血なんざつけりゃ腹減らした獣が寄って来らあ。
手伝いなんざ勘弁だ。
[血に触れれば「見て」しまうかもしれないとは言わず。月に一瞥だけくれて、動き出した二人から一定の距離を置き*見ていた*]
己も襲われたくないが、手を下した以上仕方ない
[ケネスの隠すことなど思いもつかず、男はそう言って歩を進める]
[シャーロットの靴の痕、滴り落ちる血の筋が、玄関へと向かって続いていった]
[あたりをつけて、昨日、アーヴァインを弔った近くに運び、緋のそばに横たえる]
後は明るくなってからだな
先に風呂に入るか?
――ああ、お前が分かるというのは誰にも口にしないから、安心しろ
[どちらにせよ、夜明け前に自分も風呂に入るのは*変わらない*]
そろそろ、誰か死ぬ頃かしら。
[数式で埋もれた部屋。灯りもつけずに、ぼうっと座っている。]
ふう………。
[傍らには投げ捨てられた手帳。
左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼
左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼
左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼
左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼左眼
とびっしり埋め尽くされている。]
…………。
[すくりと立ち上がり、どこかへふらっと出るようだ。]
[「こんな顔だったんですね。」
あのとき鏡を見て、口にした言葉はそれだけだった。
努めて無感動を装おうとしたが、声は震えていたかもしれない。
右眼は、鏡にうつるその左眼をしっかり捉えていたかもしれない。
「こんな顔だったんですね。」
その言葉を絞り出すのが*やっとだった*。]
[昨晩のこと。
音楽室に食事を運んできた男が、或る問いを投げかけた。
『お前たちは、誰が終焉の使者――獣だと思っている?』
ギルバートは、静かに首を振る。]
……まだ、俺には分からない。
ここに居る人間と長く話しているわけではないから。
もし何か便利な道具があって、獣を探し出すことができたら素敵なのだろうね。もしそれを持っている人がいるのなら、是非名乗り出てきて欲しいところなのだけれど……難しいかな?
それより。
貴方は……何か、俺達の見立てでもしようとしたのかな?
いきなり単刀直入に聞いてくるなんて、奇妙な気がしたから。
[傷を帯びた隻眼の男の右目を、己の右目で覗き込む。]
「神の力」を借りることができない、醜い人間である俺にできることなんか……その人の目を見て、何を考えているのか、本当に信頼できる人かどうか、見極めることくらいしかない。
そして、極端な信頼や、渦巻くような疑念が沸くほど、貴方は俺に近くない――…だから、たとえ何かが分かったとしても、俺が貴方に話すには、あと場面が2つや3つ進まなければならないような気がするんだ。
[クインジーを見つめる琥珀色の瞳を細めて、笑った。]
――…ごめんね。
ああ、でも。
[トレイに盛られた食べ物を手にして、笑う。]
貰ったごはんを食べたくないというほど、貴方を信頼しているわけではないから。ありがたくいただくよ。
[そう言って、ギルバートは食事に手を付ける。
野菜とスープは積極的に摂るが、肉は慎重に手をつけるのみだった。]
……お嬢さん?具合悪いのかな。
[ぽつりと呟いた独り言は、音楽室の中で空を切る。
彼の視界の先には、静かに佇むニーナの姿があった。]
─回想・誰かの私室─
[イザベラが寝室へ入って行ってからは静かなものだった。騒ぎ立てる何かも無く、喚く言葉も聞こえず。ただ、何かぼそりと言ったことだけは耳に届いた。内容までは聞き取れなかったが]
先に戻るわ。
[告げたのはその一言。見取り図があるのだから一人で戻って来れるだろうと言う予測と、声をかけずに居た方が良いだろうと言う予測からの言葉。イザベラの静かな様子から、良い印象を得られなかったと言うのは何となく感じ取れた。それに対しかける言葉は持ち合わせては居ない。言えたとしても、それはきっと上辺だけのものになるだろうから、言うのは止めた]
[少女は一人廊下を出て城の中を彷徨う(>>8へ)]
─夜─
[ネリーを緋色の傍に横たえ、戻ってきたクインジーの言葉に]
…そうね。
お風呂、先に使わせてもらうわ。
……言っても構わないわよ。
そっちの方が、相手から姿を現してくれるかも知れないじゃない。
[クインジーへと向けた口調と瞳は、好戦的なものだった]
─夜の泉─
[緋色の花は、夢幻の闇の中でざわめいている。
湖面は、麗しき白鳥の姫君が現れて男を魅了しそうな色をたたえていたが、無限に咲く赤い花が、その到来を阻んでいるようにも見えた。]
乙女が摘む花は、このように哀しき色をしているのだろうか……いいや、違っていた。多分、違う。
[などと、舞踊劇の記憶が、彼の脳裏で微かに揺れる。先ほど聴いたピアノの音色のせいかもしれない。]
[男の脳裏を支配する奇妙な感慨は、生臭く重い臭いに遮られた。]
………何だ?これは。
[其れは昨日、城の入り口で察知したものと同じ――血の臭い。]
どこだ!どこだ……
獣か……?人間か……!?
[ギルバートは、ガサガサと激しい音を立てながら、血の臭いがする方へと走っていった。]
―夜―
言われたいのか?
[意外そうに男はシャーロットに聞いた]
確かにそうかもしれないが、お前死ぬぞ?
……死ぬとは限らないかもしれないが
少なくとも、己にはお前にもたらされる終焉を狩る事もできないぞ
お前が見分けられるのなら、そう簡単に死なせるわけにはいかないな
[泉の畔、緋い花――揺れる花々の群れの一角に、何も動かない、窪みのような場所があった。
嫌な胸騒ぎと共に、ギルバートはそうっとその場所へと近づく。]
………ああ……!
[彼は、息を飲んだ。
緋い花があかいのは、花弁だけの筈――である筈なのに、その場所に咲く花は茎まで赤と黒に染まっていた。
そして、その窪みの奥には……獣に身体を引き裂かれたピアノの弾き手たる男が、ものひとつ言わずに横たわっていた。]
─夜─
探せないなら誘き出す。
仮にやられるとしても、道連れくらいにはしてやるわ。
尤も、私だってそう簡単にやられる気は、無い。
貴方が言うべきでは無いと思うなら、言わなければ良い。
誰かが知ることとなり、それが終焉の使者だったならば──誘き出せるかもしれない。
それだけのことよ。
[意外そうな声に淡々と返す。それは覚悟の現れを示すものでもあった]
もし他に知られなかったとしても、襲われる時は襲われるのよ。
早いか遅いかの違いだと思うわ。
[ギルバートは、その場に佇み、胸の前で十字架を切った。
──何故そうしたのかは分からないまま、手が動いたのだ。]
嗚呼。この若者に、神のご加護があらんことを──…
[ひとつだけ祈りを捧げた後、庭師が使っていたらしき倉庫へと足を向けた。番人を土に返すために使ったシャベルを用いて、かの男を埋葬するために──…*]
―夜―
わかった
それなら……少し嘘でもつこう
己が話したせいで死んだと思われるのは嫌なもんだからな
――己がわかることにしておこう
お前よりは強い
[くつりと笑った]
―夜―
[キッチンでのナサニエルからの申し出を、他の二人と同じく受け取らず]
アルコールだけを口にするのは好みませんので。
[薪の代わりに一皿のポタージュを手に広間へと]
[薪を運び終えた少年へとそれを差し出した]
そうですわね。酷く、静かにございます。
番人殿が亡くなられた後ですので、正しい在り様なのかもしれませんが。
[警告を告げる言葉に、小さく頷いた]
私も、部屋にゆきます。
獣にも、人にも、出会わぬように。
[そうして女は広間を出て、上階の仮宿となった部屋へと入る]
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